MELニュース2020年 5月 第26号

非常事態宣言が解除されても依然として残る様々な制約の中、非日常の常態化とも言うべき環境に適応する人が出る反面、国民の多くは厳しい生活はもはや限界、これ以上続くのは勘弁してよ…が正直な気持ちの様に思えます。
生活面だけでなく、コロナ禍が産業界に残した爪痕もはかり知れません。
水産業界では頼みの輸出がストップした上業務用需要が消滅、天然魚の価格は値崩れするは、養殖魚では生簀の魚がどんどん大きくなるのに注文がなく安値でも出荷出来ない、更に来年以降のための稚魚の池入れの決断もしなければならない等々悲鳴が聞こえてきます。ただ良いこととして、家庭内での魚の消費が久々に堅調であること。これをポストコロナにどう活かすか。日経新聞の5月14日のコラムに「コロナ自粛おかげで身近になった魚屋さんたちとの仲はこのままにしたい。疎遠になるのはちょっと寂しい」とありました。
希望的にV字回復を願うのではなく、出来ることから地道にやって行く勇気と行動力を持つことがこれからの要諦かと愚考しています。自然災害等に備えて既にお持ちのBCP(事業継続計画)の見直しを通し、事業のあり方を再検討する機会として前向きに考えましょう。

1.GSSI関連

GSSIから承認の条件として求められているMELロゴにV-1,V-2を表示する件は、認証取得者のご協力の下着実に実施されています。聞き取り調査による現時点の実施状況はV-1が4件、V-2が7件です。この数字は、今日実際に市場へ出回っているロゴ付き水産物を概ねカバーしており、今後その件数は着実に増えていくことが推測されます。現状は逐一GSSI事務局に報告し共有しておりますが、MELに対する国際的な信用につながりますので、皆様とご一緒にしっかりと現状を守って行きたいと願っています。
今月14日にMOCA(承認継続審査)に関するGSSI事務局との定例会議を開催しました。MEL事務局としては粛々と準備を進めており、今回の会議を通して新たな課題の指摘はありませんでした。
GSSI事務局から提示されているMOCA流れは

2020年 5月 GSSI-MEL事務局間のMOCAへの定期打ち合せ
7月      同上
9月      同上
10月 MELによる現状報告書類作成開始(準備の出来た書類から共有ホルダーに保管する)
12月 GSSIの審査員によるMELの報告チェック開始
2021年 1月 ベンチマーク委員会による審査員報告のチェック
1月 パブコメ開始(30日間)
2月 パブコメ結果と対応に対するベンチマーク委員会のチェック
3月  GSSI理事会によるMELの承認継続の可否決定

昨年の承認の過程で厳しく追及されたのは、漁業、養殖、流通加工とも各1件の認証実績しかなかったため、GSSIが求めるエビデンス(実績証拠)不足でありました。この1年間で認証実績も51件となり、審査報告書の専門家による精査(Peer Review)実施等の認証に当たっての様々な制度も整えることが出来ましたので、GSSIの要求に粛々と対応します。

2.認証について

今月の認証は漁業1件、養殖1件、流通加工2件の計4件でした。
緊急事態の要請に添って、認証のための現地審査等は自主的に中断しておりましたが、新たな認証取得のための希望も寄せられており、15日以降日水資および審査員の活動が出来るところから再開されました。
このところ、MELV-2ロゴ付の商品が店頭やチラシで目につく様になりました。先月号でご報告しましたイトーヨーカドー様のMELV-2ロゴ付商品は、今月は三重県産マダイがチラシ特売に入り、肉や卵、野菜に負けないで頑張っています。
また近々に加工品にもMELV-2ロゴ付商品が登場するとの嬉しい連絡をいただいており期待しています。

3.総会開催について

総会開催のための理事会は書面で実施し、承認いただきました内容で第5回通常総会を6月15日(月)14時より大日本水産会大会議室において開催することにいたしました。
まだまだ厳しい状況が続いていると予想されますが、MELにとってGSSI承認後初めての総会であり、理事および監事の任期満了による選任、またコロナ禍への対応やMOCAを控え今後に向けて正念場でもありますので、会員の皆様と心を合わせた意思決定を行なう場とさせていただきたいと考えています。実施可能なコロナ対策は準備しますので、諸事情ご賢察の上どうかご出席を賜ります様よろしくお願いします。

4.認証取得者からのご報告

今月は豊洲市場協会会長、中央魚類(株)会長をお勤めで、MEL協議会の元理事としてご尽力いただきました伊藤 裕康様にお願いし、厳しい試練を受けておられる水産物流通の最前線から生々しい現状をご報告いただきました。

「豊洲市場の状況」 伊藤 裕康(豊洲市場協会会長、中央魚類会長)

コロナウイルスが卸売市場にも猛威を振るっています。豊洲市場水産本業の取扱高の状況は下記の通りです。

数量(前年比) 金額(前年比)
2月 26,883トン(+2.65%) 26,756百万円(-1.37%)
3月 28,906トン(-4.31%) 26,182百万円(-16.15%)
4月  26,530トン(-14.10%) 20,989百万円(-33.83%)

3月になり、在宅勤務や外出自粛の動きが盛んとなってきたため、荷動きが急に悪くなり、殆どの業者は3月決算を抱え、それまでの11ヵ月とまるで違ったトーンの売り上げに一気に落ち込んだのは世間一般と一緒です。それが4月になるともっとひどくなり、まさに危機的状況となってきました。
取引先では、中食、内食の伸長に合わせて量販店が盛況となる一方で、外食関係、特に市場の得意とする高級業務筋が壊滅状態となりました。冷凍品、塩干品、量販店向けの大衆鮮魚などはまずまずでしたが、活魚、ウニなどは前年比2割台と寿司ダネの特種物を筆頭にひどい落ち込みで、仲卸業者も業種によって違いはあるものの、売り上げ6割減、7割減という、まさに開店休業状態の店が続出し、経営危機のど真ん中にあります。
5月に入ってからは、航空便の中国輸出の復活や冷凍サケの消費増、豊洲直送をうたうネット販売の驚異的な伸長に加え、緊急事態宣言解除が伝えられての緊縮の緩みもあり、多少ムードの変化を感じております。現在、5月末の数字を注目している毎日です。

伊藤会長有難うございました。難産でありました築地からの移転が漸く落ち着き始めた矢先のことだけに卸、仲卸、関連店舗の皆様の苦境は筆舌に尽くし難いと受け止めております。皆様の挑戦と奮闘をお祈りします。

5.関係者のコラム

2回目の今回は、MEL協議会監事をお務めいただいております日本トロール底魚協会会長の吉田 光徳様にお願いをし、コロナ禍の中遠洋漁場で操業する日本の漁船が直面しておられる課題をまとめていただきました。

「コロナ禍と日本の遠洋漁業」 吉田 光徳(日本トロール底魚協会会長)

現在、日本にはトロール船、マグロ延縄船、海外巻網船等の遠洋漁船が219隻ありますが、新型コロナウイルスのパンデミックで、操業は影響をもろに受けています。
今、世界各国が事実上鎖国状態にあることから、アフリカ諸国や太平洋諸国など日本以外の国の港を基地として漁業を営んでいる遠洋漁業は、各国のロックダウン(都市封鎖)や入出港制限、乗組員の乗下船の禁止、入国禁止等の措置が導入されており、一度入港すれば、操業再開の目途が立たず港に係船している状態となっています。
そのために、操業中断の各漁船は収入がなく、非常に厳しい経営状況にあります。乗組員の安全を確保しつつ、操業再開させるため、各社の遠洋漁業担当者はそれぞれの国の新型コロナウイルス対応の情報収集や各方面への対応・対策に明け暮れています。公海域を主体とした遠洋漁船の漁獲物は、海外の港に陸揚げし、そこから日本や諸外国へ輸出されますが、現在は、各国の制限で漁獲物の陸揚げが出来なかったり、漁獲物の搬送方法が確定しなかったりしています。
遠洋漁業界としては、今回の危機が収束し操業が再開した暁には、安全安心な天然の漁獲物が世界各国の国民へ供給されることを期待するところです。

吉田会長有難うございました。経済的持続可能性を求めて世界に展開されるトロール漁業、マグロ延縄漁業、海外巻網漁業等の遠洋漁業の皆様からMELの認証取得が話題になっており、是非難局を乗り切っていただきたいと願っております。

豊洲市場の大卸7社の4月の売上金額は前年比66%とかつてない厳しい数字が公表されました。一方で家計需要の増加を支えたスーパー、小売店は久し振りの活況を享受し、業態の違いで明暗を分けました。
緊急事態宣言が解除され緩みが心配されながらも徐々に経済活動も戻って、人々の顔にも明るさが見える様になったとメディアは報道しています。しかし肝心の大消費地はまだまだ予断を許せないところですから、本当のコロナ克服はWHOが言う様に長い旅となることを覚悟しなければならないと受け止めています。
MELは行動が制約される中、専ら認証者の皆様への支援業務の充実に心がけました。皆様には認証どころではない環境下でも、ご相談が多かったのは新MELへの移行の準備とロゴの使用の問題です。旧MELが失効する2021年1月31日に向けて、業務上のミスを起こさない様丁寧に対応いたしますので何なりとご相談下さい。
皆様のご健勝を心からお祈りします。

以上