MELニュース2020年 6月 第27号

科学的には生物の定義には当てはまらないウィルスに散々振り回されたあげく、ようやく経済活動を再開して
1ヶ月経ちますが、これから先の目処は全く見えていません。
コロナ禍が水産物のサプライチェーンに与えた衝撃は想定を遙かに超えたものでした。先月号で豊洲の報告を
いただきましたが、このところ日を追って養殖事業者の皆様から魚が大きくなるのに安くしても売れないと
言う悲鳴が大きくなっています。この中で、SNS(交流サイト)と宅配便を使った生産者と消費者の結びつきが
拡がりを見せ、今まで先進的な一部の事業者の手で行なわれていた商流がもはや特別なことではなくなりつつ
あります。でも水産物はサプライチェーンの全ての段階で、しっかりと一手間をかけないと、良いとは言って
いただけません。では、この一手間は一体誰がどう手当てするのか、一手間の質がビジネスの成否を決める
だけに悩ましい問題です。
ここは我慢比べ、如何に日々の業務を工夫するかしかないと愚考します。

1.GSSI 関連

GSSI は、自らの機能をより強化し、世界への影響力を高めるための様々な提案を関係者に投げかけています。
特に、承認済みのMEL を含む9 のスキームオーナーとともにSOAG(Scheme Owner Advisory Group=スキームオーナーにより構成されるGSSI の運営全般にわたる協働機関)を組織し、GSSI承認の「意義」と「価値」を
最大に高め、活かすため、世界の消費者や各国政府への働きかけを強めています。GSSI 支援企業の調達基準に「GSSI 承認スキーム」を明記する様にと理事会が要請しており、MEL 協議会の会員の中にGSSI のファンディングパートナーがおられますので、今後接触があると思います。
MEL としては、世界の情報のネットワークに適時適切に関われることになりますので、積極的に関与する所存です。目下の所、GSSI のグローバルベンチマークツールの改定(バージョンアップ)に日本の多様性の特徴を反映させる様提案しています。
また、GSSI がIDH (the Sustainable Trade Initiative) と共同開発中のSeafood MAP(Measuring and Accelerating Performance=認証促進と認証取得者をつなぐプラットフォーム)にも参加することで、MEL とMEL 認証取得者の国際的存在感を高めたいと考えています。ただ、GSSI の組織がどんどん肥大化、複雑化する
ことには、正直疑問を感じています。日本としてGSSI の政策にどう影響力を持つべきか(現在はシーフードレガシーの花岡和佳男氏がステアリングボードメンバーに就任している)を模索しています。

2.認証関連

今月の認証発効は漁業1件、養殖2件、流通加工2件の計5件でした。結果累計認証件数は漁業4件、養殖25 件、
流通加工25 件の計54件になりました。新型コロナの影響で活動に種々制約がある中ではありますが、着実に認証が進んでおり、関係される皆様のご盡力に深謝申し上げます。
漁業において、船びき網によるシラス漁業が大阪(大阪府資源管理船びき委員会, 瀬戸内海汽船船びき網漁業)で認証され、和歌山(紀伊水道中央機船船びき網組合, 簑島シラス船びき網漁業)も審査中であります。流通加工の認証申請が日本生協連様から出され、こちらも審査中であり、MEL 認証付のシラスが流通することを期待しております。日本の沿岸漁業を代表する漁法であり、多様に加工されて広く日本の日常の食卓を飾る魚だけに、関係の皆様の努力で伝統的漁業と食文化が守られることは素晴らしいことと思います。
また、現地審査の際、昨年の新規審査員養成講習で審査員補となられた方々が審査チームに加わり着実に審査員への道を歩んでおられることを報告させていただきます。(新規審査員養成研修を通し審査員補となられた67 名のうち13 名の方が審査員に昇格しておられます。)

3.総会関連

MEL 協議会第5 回通常総会を6月15 日に開催しました。オンライン総会も考えましたが、MEL にとってGSSI 承認後の初めての総会であり、役員の改選期にも当りましたので、規模を縮小し会場開催といたしました。様々な情報交換も行なわれ、リアルの意味を改めて感じました。
出席者は役員、会員、アドバイザリーボードにご来賓、メディアの皆様を含め30 名でした。ご来賓として、
水産庁次長神谷崇様はじめ漁政部企画課の皆様に出席いただき、神谷次長からは「MEL 協議会は漁業者はもちろん、卸・小売関係の皆様とWin-Win となる取り組み進めて欲しい。水産庁も改正漁業法施行を機に資源管理対象の魚種を200 種に増やすことを考えており、水産物の持続的利用等社会の関心を高める施策を推進する」との
お話しをいただきました。日本の水産エコラベルが官民の力を統合し前に進んでいることを感じました。
新年度は、GSSI の承認維持審査(MOCA)への対応を優先しながら、認証取得者の裾野を広げることと、国内での認証付商品の配荷促進および海外におけるMEL 認証の認知度向上に注力する計画が承認されました。
新役員は、理事13 名の内組織内の人事により全漁連の大森敏弘様が三浦秀樹様に交代された以外の12 名が留任、監事は2 名とも留任いただくことになりました。皆様ご多忙の方ばかりではありますが、水産エコラベルがコロナ後の社会にお役立ち出来ます様、またMEL の内外における存在感が高まります様格段のご指導、ご支援をお願いします。
理事を退任された大森様にはMEL 協議会発足以来様々なご盡力をいただきましたことに心からお礼申し上げます。
総会に続いて開催されました理事会において、会長には垣添、専務理事には長岡が選定されました。また、長岡が兼務しておりました事務局長は冠野尚教が就任しました。長岡は引き続き業務執行役員として事務局を統括します。
事務局一同、新体制の下頑張りますのでよろしくお願いします。

(総会における神谷次長のご挨拶。会場はソーシャルディスタンスを考えた配置としている)

4.認証取得者からの報告

今月は、ニュースの冒頭で触れました養殖事業者の声を(株)ヨンキュウ様の笠岡恒三社長に代表してご報告いただきました。笠岡社長は、2019 年3 月6日に行なわれた新MEL の初めての認証証書授与式において、日本の水産物の持続的利用のフロントランナーとなることを宣言した「3.6 宣言」の主人公である5 団体・企業のリーダーとして積極的に活動いただいています。

「生産者を応援してください」 (株)ヨンキュウ 社長 笠岡恒三

当社を取り巻く水産業界においても、コロナ禍により、外食産業を中心に鮮魚の販売数量が激減、また、需要の低下に伴い価格も下落するなど、大きな影響が出ております。
特に、養殖魚の生産者への影響は極めて甚大であり、出荷の停滞により収入が著しく減少し、餌代などの経費支払いに支障がでるなど、急激に資金繰りが悪化しています。
また、出荷の停滞により養殖イケスが空かない為、来年以降に向けた稚魚の池入れも出来ない状態となっており、生産者の方々は、先行きが見通せない不安な状況に置かれております。
当社は、生産者の経営安定化に貢献する為、中食の増加により比較的堅調に推移している量販店への鮮魚販売を中心に強化・拡大に努め、様々な面で支援してまいります。
また、愛媛県宇和島市による産地応援企画「#鯛たべよう」等とも密な連携を行い、自治体や生産者と一丸となり、この危機的状況を乗り越えていきたいと思います。
最後に、新型コロナウイルス感染の一日も早い終息を願い、引き続き最善の努力をしてまいります。皆様におかれましても、日本の歴史ある魚食文化を絶やさぬよう、生産者の応援をよろしくお願い申し上げます。

笠岡社長有難うございました。この声が多方面に届くことを願うと共に、MEL協議会も少しでも皆様のお役に立てる様頑張ります。

5.関係者のコラム

今月の関係者のコラムは、MEL 協議会の養殖認証規格の開発を担当いただいております専門部会委員の東京海洋大学舞田正志教授にお願いしました。
舞田先生は日本の多様な漁業、養殖の存在価値に対し一家言を持って居られ、その重要性を積極的に内外に発信しておられます。

「何のためのエコラベル? 誰のためのエコラベル?」 舞田正志(東京海洋大学教授)

多くの漁業者、養殖業者の皆さんがエコラベル認証の取得を目指し始めたきっかけは、東京オリンピックの選手村への食材供給に関連した要請からではないかと思います。エコラベル認証は、「我が国の水産業が将来にわたって持続的に継続できるように資源と生態系の保全に積極的に取り組むこと」を目的とすべきものであり、東京オリンピックはきっかけに過ぎません。
これまでの漁業・養殖生産を見直し、資源と生態系の保全への積極的な取組みを行うことは、将来にわたって食糧産業としての水産業を維持することで生産者自身のためであることに他なりません。と同時に、様々な水産物を持続的に供給し続けることは消費者のためでもあると思います。
我が国の小規模、多品種の生産を行う漁業・養殖業は世界的にも類を見ない特徴であり、この特徴を生かしつつ持続可能な水産業の取組みを進めることも必要です。エコラベル認証は、このことを考慮しつつ、全ての生産者が取り組むべきことではないでしょうか。
ポストコロナの世界では、これまでにない大きな変革が起こるかもしれません。しかし、「持続可能な水産業の達成」という意義と社会的な責任は揺るがないものと確信します。

舞田先生有難うございました。先生ご指摘の様に、ポストコロナの時代にMEL がどの様に、事業者、消費者、社会にお役立ち出来るか知恵を絞っているところでありますので、今後ともご指導をお願い申し上げます。

6.会員募集関係

三重県漁連様からMEL 協議会への入会の申し込みがあり、理事会で承認されました。三重県は現在6 件の認証取得者がおられ、行政を含め熱意を持って水産エコラベルを推進していただいています。MEL ニュースで何回かご報告しました鳥羽磯部漁協和具浦支所様のワカメから始った挑戦が拡がろうとしています。
古来、神々儀式と朝廷の食を支えた「御食国」の歴史が今に脈々と続いていることに感銘を受けています。

今月も長くなってしまったことをお許し下さい。
MEL 事務局も、新メンバーで事務所勤務とテレワークを組み合わせながら徐々に活動を元に戻しております。一日も早く皆様とのコミュニケーションが「密」になることを願っています。
季節は例年より若干早く動いている様です。また、気温、海水温も高めに推移しており、毎年繰り返される梅雨の末期の集中豪雨には十分な対応を準備をして下さい。皆様のご健勝をお祈りします。

以上

『水産エコラベルガイドブック』が成山堂書店より刊行されます。

本書は日本発のMELをはじめ国内外で活動している水産エコラベルを紹介し、その取組みをさらに推進していく主旨で編纂されました。
序章には「水産エコラベルに関するQ&A」が設けられており、大事なポイントや誤認されやすい項目などが分かりやすく解説されています。
第一章では、水産エコラベル登場の背景を様々な角度から紹介し、また、これからの水産業を取り巻くトレンドや水産エコラベルが直面する課題などにも
言及されています。
続く第二章では、MELをはじめ国内外で活動している10種類の認証スキームを紹介しており、それぞれの背景や特徴、認証の流れや費用を比較することができます。
最終章では、国際承認を受けるスキームに求められる認証機関や認定機関の仕組みが解説されています。

GSSIに承認されたことで、MELについても非常に高い関心が寄せられておりますが、本書中にも「水産エコラベルは正に社会にとってなくてはならないインフラである」とある通り、水産エコラベルの全体像や水産業がこれから向かうべき姿の考察を深めていただく一助にしていただければ幸いです。当協議会としても、一括購入して、会員様や認証事業者様の求めに応じられるように準備する予定ですので、ぜひご講読下さい。