
地球規模の自然災害が続いています。中国とネパールの国境地帯で発生した土石流は規模に於いても、被害の大きさにおいても想像を絶します。ヒマラヤの氷河と岩盤の大規模崩落が引金と報道されていますが、深刻化する地球温暖化がここまで迫っていることの表れと受留めるべきでしょうか。
日本でも今年から導入された「避難情報に関するガイドライン(内閣府 防災担当)」を待ち構えていた様に、居座る秋雨前線や続発する台風による集中豪雨の被害が拡がっています。連日報道されるレベル4,5といった警報はもはや対岸の火事ではありません。それでいて、西日本では水不足は未だ解消せず四国の水瓶である早明浦ダムも、福岡市の水源の9つのダムの貯水率の低下に苦しんでいます。
自然の脅威が日常の生活に及んでいることを実感せざるを得ません。
1.国際標準化関連
GSSIのMOCA(承認継続審査)は、MELからの回答に対する審査員(Independent Expert)から追加コメントが届きました。MELの回答に納得した様で、全て軽微な確認事項でした。現在MOCAは、ベンチマーク委員会での審査に進んでいます。
GSA(Global Seafood Alliance)及びTCRS(The Center for Responsible Seafood)が共催する「Responsible Seafood Summit2026」が9月21-24日
タイのバンコックで開催されました。MELも招請を受け、加藤事務局長が、9月23日に「漁獲漁業の認証スキームの協力について」のセッションで、CSIのマイク・クラフト専務理事とCommunity Catchのリンダ・ウッド事務局長とGSSIのガート・レルー事務局長等と共に登壇しました。2時間のセッションでは、冒頭のMELの紹介部分で日本での水産エコラベル普及の鍵となった政治・行政の水産業へのこだわり、事業者の水産業への情熱と倫理観、認証制度の関係者の使命感、研究者・研究機関の真摯さと世界的存在感などを世界の水産リーダーに説明しました。一定の反応がありましたので、状況は写真を含め来月号でご報告します。
2.認証発効関連
8月31日にCoC認証3件が発効しましたが、今月の発効はありませんでした。
他方、青森県 十三漁業協同組合(ヤマトシジミ)から認証の一時休止の申し出を受けており、残念ではありますが粛々と事務手続きを進めることになります。また、岐阜県郡上漁業協同組合(アユ)からは認証を更新しないとの連絡をいただきました。MELにとり初の淡水漁業での認証が修了することになります。世界的な小規模漁業の認証取得推進が課題となる中、その模範と評価される日本の小規模事業者にとり、認証を維持する手間と費用は深刻な問題であることが改めて浮き彫りになりました。MEL協議会として、MEL認証を取得しておられる小規模事業者への訪問を行ない、認証の生かし方等のご相談の機会を持つことを企画しています。
3.MEL審査員からのご報告
審査員からのご報告第2弾は、広島を中心に養殖とCoCの審査で活躍しておられる崎長 威志様にお願いしました。
「MEL認証現地審査から一言」
MEL審査員 崎長 威志

私は、広島県で養殖、流通加工段階に係るMEL認証の審査に携わっています。MEL審査員には、2018年に任命されましたが、「水産エコラベル」の制度を最初に知ったのは、「AEL:養殖エコラベル」について、日本水産資源保護協会の会議で、当時の下村専務から研修を受けたのが最初です。
MELの審査については、2021年の広島市中央卸売市場の卸売会社が初の審査で、愛媛の阪本さんの応援を得ながら緊張して審査を行ったことを覚えています。養殖では、広島特産のかきの審査が主体で、全国の第1号の漁協の団体認証審査を行いました。加工もかき関係が多く、地元の大手加工メーカーは全て取得しました。かきのMELについては、広島県行政が取得を推奨していますが、現在、3事業者で県生産量の約6パーセントを生産している状況です。こうした中、昨年、大量へい死の問題が起きました。地域によっては9割の被害が出て、原因究明、対策の検討が「有識者会議」で進められています。高水温、高塩分、餌不足などの複合要因が指摘されています。今年も、これからの環境条件が心配ですが、漁場でのテレメーターによる海況観測、下水道施設から栄養塩促進事業(目詰まり解消プロジェクト)に携わりました。水産物流通の川上(産地)から川下(消費地)までの目詰まりを解消する支援事業でした。MELにおいても、事業者のお話を伺う中で、生産(川上)と加工・流通(川下)の間で様々な課題(目詰まり)が出てきていると感じています。課題の一つは、MEL生産物の種類・供給量が十分でないことです。事業者からは、「扱いたくても仕入れができない」、「加工したくても原料がない」という声を聞きます。現場では、MEL取得を断念したり、認証を休止したりする例も起きています。MELにとって基本的な問題と考えています。次によく耳にすることが、「MEL商品はよく売れているのか」という声です。MEL制度を維持するためには、MEL製品がしっかり消費されることと思っています。いくら高品質の生産物でも売れなくては経済が成り立ちません。MEL水産物の需要と供給のミスマッチが起きていると感じています。MEL全体として解決しなければならい大きな課題と考えています。MELがスタートして10年となり、将来に向け、MELを持続的に運営し、より発展するためには、まだまだ沢山の課題があると考えます。MEL協議会をはじめ関係機関が連携して現状の分析を行い、対策の検討が必要ではないでしょうか。また、MEL審査は、現場で直に事業者と接触し、生の声を聞くことができる唯一の立場にあります。審査員の立ち位置をしっかり守ったうえで、情報収集などの役割を担うこともできるのではと考えています。MELがスタートした当時は、早くMEL商品がスーパーマーケットなどの店頭に並ぶことを願っていましたが、ようやく近くの店でも買える状況になりました。審査員としては、事業者の声を聞くたびに、もどかしさも感じていますが、これからも微力ながら審査員としての役割を果たしていきたいと考えています。
崎長様有難うございました。ご指摘いただきました通り、課題は山積です。殊に認証取得事業者との接点を密にすることを意識して活動をしておりますが空回りしていること強く感じます。世界的には小規模漁業者の認証取得を支援する機運が盛り上がっている中、MEL事務局職員が事業者を訪問する活動を企画しているところです。今後とも、日本の水産エコラベルの地に足がついた発展にお力添え賜りますようお願い申し上げます。
4.関係者のコラム
今月は八戸市で八戸加工連始め多くの水産加工・流通の公職を担っておられる、八戸缶詰野田 一夫社長にお願いしました。水揚げ減少=加工原料減少に苦労しておられる地域の姿をご報告いただきました。
「八戸のヨクナイ魚や」
野田 一夫
八戸水産加工組合連合会 会長
八戸缶詰(株) 社長
青森県の八戸港は三陸の北にあり、全国に13港ある特定第三種漁港では、一番北になります。特定第三種漁港は漁港漁場整備法で水産業に特に重要と定められた港です。
そんな八戸の地方卸売市場である八戸魚市場で魚を買う、仲卸組合と水産加工連、両方の代表の私は、魚を買う立場として漁業者と話をする際、稀に言われるのは「あなたが代表になってから魚が獲れない!前任者の時、こんなことは起きなかった。」です。私が海を変えているに近い論法ですが、魚の種類と量が獲れない今は、漁業者が、そんな不満を言うくらい悩んでいます。
仲買と加工屋も欲しい魚が手に入らなくて困っています。都市へ売る鮮魚系の仲買も種類がない、加工屋に至っては、原料がない、サイズがない、エネルギーが高い、調味料が高い、包材が高い工場で作って遠くの都市まで運んで売ろうとしても上手くいきません。
今の八戸市長は水産業に明るく、早い時期から海の温暖化を気にして、漁業者、仲買、加工、運送、包材の各業者が困ったときの情報提供をしようと団体「八戸水産アカデミー」を作りました。市長が大切にしたのは、「困った人たちへ答えを出すではなく、困った人たちがより良い答えを見つけられるようにサポートをする」という市長なりの想いでした。そのために団体の上の立場には市職員ではなく業者の人達を置いて運営をさせています。それでも状況に困った人の中で、前向きに次の手を考える人は少なく、「あそこに行ったって、答えを教えてくれない」とか「あそこに行くと自分の会社が危ないと思われる」などいろんな噂が立ちました。
ここで思うのは、業界のために準備や用意をしても、それが対象の人に、どういうことなのか上手に解ってもらわないと、使おうとも思われないということです。一生懸命、準備したら、一生懸命、伝えないと上手く使ってもらえないことが多いですよね。
温暖化で魚が変わり、従来の漁獲方法が上手くいかなくて、たくさん獲れる魚が無いことは、漁労者も大変ですが、その魚を使う加工屋たちも大変です。加工に使う製造ラインは他の魚種に合う場合は少なく、合ってもサイズや価格が違って上手くいかない例をよく聞きます。
困っているのは八戸港だけでなく、三陸の特定第三種漁港では、気仙沼や石巻、塩釜も同じような話を聞きます。他の漁港でも、どうしているのかを聞いて気が付いたのは次の仕事で何をするのかに関して、色々な考えがあり、それぞれが違うので、新しい取り組みを否定する人が出てくることです。例えば、刺身用の魚を煮物、焼き物にするのでしたら特に言われませんが、豆腐や野菜中心の煮物に魚を足して旨味を加える品を提案すると「魚屋の仕事じゃない」と否定したり、イカの塩辛を作っていたのに原料が高くなり製品も高くて売れないから若手たちが、次の仕事として牡蠣の塩辛を作ろうとしたら、会社の幹部たちがイカ以外はやるなと否定したり、ケースごとですが、どうしていけば良いかの案は作りにくく、伝わりにくいと思います。克服するには、従来の商流を上流から下流で考えるではなく逆に、食べる人がどこでどんな場面で食べたいのか、それに対してどのようなものを提供すると良いのかから考えて、自分たちのどのような手間をかけた品が良いのかを考えていく方が、仲間へ伝わりやすいかもしれません。仕事が上手くいかないときは従来の欲をなくして取り組んでみるのも一つの方法ですよね。
海外へ向けて日本の魚を売るときに、MELを習得して売れるようにすることは大切ですが、魚をどのように食べるかわからない国のスーパー向けに出しても、その国の人が、すぐ買うとは思いません。日本だけでなく外国のスーパーも「これはこうやって食べるといいよ」は教えませんから。ヨクナイのは、魚だけではなく魚を扱っている人かもしれません。さぁ、海も魚も売り方も売り先も変化していく中で、皆さんは、どう対応していきたいですか?お仲間と。
野田社長有難うございました。サバとイカの大漁で沸いたお父上静夫様の時代から、数十年にわたり八戸を見てきた水産人の一人として、野田社長のお話しはとても共感出来ます。若手と言われた野田社長の世代も、既に世代交代の時期になっているかと思いますが、苦悩する八戸の水産界の「ヨクナイ」ではなく「ヨイ」リーダーとしてもう少し頑張って下さい。
5.CSIのMike Kraft専務理事との打ち合せを行います
国際標準化のところで触れました、バンコックで開催されたResponsible Seafood Summitに出席したCSI専務理事Mike Kraft氏に帰途日本に寄る様要請し、9月25日にMELとCSIのCoC認証の相互承認について、詰まっていない課題の打ち合せをします。内容については来月号で報告します。
6.しながわ水族館のイベントに出展します
しながわ水族館(東京都品川区)では、SDGs採択日の9月25日から、使用済み漁網をリサイクルして作られたユニフォームを全スタッフが着用します。これに合わせて9月25日-26日の両日、「使用済み漁網リサイクル」をテーマとした「SDGsパネル展」が開催され、漁網リサイクルに取り組む「水産系プラスチックリサイクル推進協議会」(Re:ism)とともに、MELも出展します。会場では、使用済み漁網がどのように回収・リサイクルされ、新たな製品へと生まれ変わるのかをパネル展示などを通じて紹介します。MELは、持続可能な水産業について知っていただくとともに、MEL認証の水産物やロゴマークの付いた商品について紹介します。

様々な皆様のイベントが、海を守る方向に活動の幅を拡げていただいていることを大変嬉しく思います。
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認証発効のところでご報告しましたとおり、十三漁業協同組合(しじみけた網漁業)の認証一時休止および郡上漁業協同組合(あゆ友釣漁業)の認証不更新決定が発生しました。十三漁協様は10年にわたり十三湖の資源を守る活動をMELの先進事例として発信いただき、郡上漁協様は友釣りという日本が世界に誇る漁業文化を5年間にわたり継続いただきましたことに敬意を表するとともに、衷心よりお礼申し上げます。
アメリカ海洋大気局(NOAA)の世界の海面水温データを基に分析した「クライメート・セントラル」によると、今年の世界の海面水温は6月2日以来9月10日まで100日間連続してその日の観測史上最高を更新しているとのこと。その後もエルニーニョ下で水温高止まりが続いていると思われますので、海に与える影響はいよいよ深刻です。そのせいにはしたくはありませんが、サンマも秋サケも予報通りの不漁に頭を抱えるばかりです。せめて戻りカツオに健闘を願いましょう。