MELニュース2026年1月 第94号

遅くなりましたが、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様には夫々の計画の中で新しい年「丙午」をお迎えのこととお慶び申し上げます。
大手メディアが「海図なき時代」と表現する不確実性に満ちた年が始まりました。半世紀余り前の第1次石油危機を起点とする世界の協調体制は、今や全く崩れようとしています。大国の自国第一主義への傾注に歯止めのない時代、年の初めに当り、地球環境、海洋や資源を守る持続可能な社会を維持するために、皆様とご一緒に地道な努力を続けたいと願っています。

1.国際標準化関連

昨年11月末のMEL認証のGSSI承認継続審査(MOCA)の完了に続き、GSSIが2024年12月から行っていたASC認証とMSC認証の承認継続審査(MOCA)が、2025年12月10日と12月16日に完了したことが発表されました。2025年12月末のMOCA完了は4スキーム(CSI 、MEL、ASC、MSC)となりました。

2.認証発効関連

今月の認証発効はCoC1件でした。MELニュース11月号でご報告しました漁業認証とCoC認証における不祥事発生に対する措置は、残念ながら認証終了ということになりました。
漁業認証に関しては、紀伊水道中央機船船曳組合の箕島シラス船曳き網漁業において、一部の事業者が許可区域外での操業を行ない海上保安庁に逮捕起訴された件につき、2025年12月から認証一時停止措置を行ってきましたが、審査機関による臨時審査の結果を踏まえ組合として認証を終了したいとの申請があり、審査機関により認められ2025年12月26日付で認証が終了しました。
CoC認証に関しましては、ハッピーフーズ(株)が秋鮭フレークの表示違反(原料にカラフトマスを混ぜた)により、農水省の是正指導および再発防止対策の実施を指示されたことを受け、認証機関による臨時審査が行われ不適合が指摘されました。2025年12月から認証一時停止措置を行ってきましたが、認証機関による臨時審査により指摘された不適合が解消されませんでしたので、現在、認証機関による認証終了に向けた手続き中です。

MEL協議会としては、両件とも、11月の理事会で承認いただいた認証機関への要求事項改訂における「スキームの信頼性に関わる重大なリスクがある」と判断し、2025年12月に認証の一時停止に続く次の処置において、今回の審査機関の決定を是としています。

3.認証取得者からのご報告

今月は、ヘッダーおよび本文記事で紹介させていただきましたコープサステナブル「味付もずく」の生産者である 伊平屋村漁協様の販売課長兼加工場長の齊藤 伸哉様に寄稿をお願いしました。

「島の美しい海とともに」

伊平屋村漁業協同組合 販売課長兼加工場長 齊藤 伸哉

沖縄本島から北に40kmほど離れた沖縄県最北に位置する有人離島・伊平屋島に、伊平屋村漁業協同組合はあります。周囲を美しいサンゴ礁に囲まれた人口約1,000名ほどの島で、約30名の生産者がモズクの養殖に携わっており、年間約800tのモズクの水揚げを行っております。
水揚げされたモズクの7~8割は鳥取県にある株式会社海産物のきむらや様で加工され、コープデリ連合会様にお取り扱いいただいております。
今回のMEL認証取得にあたっても日本生活協同組合連合会様よりご提案をいただき、当組合のモズク部会での協議の末、(株)海産物のきむらや様とともにMEL認証取得に向け取り組むことにいたしました。

コープデリ連合会様とのお付き合いは長いのですが、特に2010年からは伊平屋島の環境保護や産地との交流を目的とした’美ら島応援プロジェクト’という取り組みをしていただいております。

この取り組みは伊平屋産モズクを使用した商品のご購入1点につき1円が“美ら島応援基金”に寄付されるもので、その寄付金はモズクの養殖に欠かすことのできない伊平屋島の美しい海や砂浜を守る為の活動等に使わせていただいております。
これまで延べ2,000万円を超える寄付金が寄せられ、300名を超える組合員をはじめとする方々が島を訪れ、生産者との交流や海岸の漂着ゴミの清掃活動にご協力いただきました。
この度のMEL認証の取得によって、私たちのモズクが環境に配慮し生産されていることの裏付けをいただけたことは、こういったモズクの購入を通じて伊平屋島の環境維持にご協力して下さっている消費者の皆様にも、より安心していただけるものになったのではないかと大変嬉しく思っております。
MEL認証の取得を機に、環境負荷の少ないモズク養殖の在り方やモズクの生産を通じた環境保護への取り組みについて更に検証・改善しながら、いつまでもモズクの生産を続けることができる環境を守って参りたいと思います。また、せっかくの認証ですので、今後は海外へのモズクの販売も検討していきたいと思っております。そして、新たな販路を拡大し、モズク生産者の持続的な所得の向上を実現させ、モズク養殖が今後も後継者に困ることのない魅力ある産業でありつづけることを目指し、生産者とともに取り組んで参りたいと思っております。

齊藤様有難うございました。昨年8月に境港で開催しましたMELの講演会で海産物のきむらや様の木村 美樹雄社長にお目にかかり、オキナワモズクの話で大いに盛り上がりました。今年は、伊平屋村と境港市が交流を始めてから30年になること、また23日には相互交流の一環として伊平屋小学校の5年生12名が境港を訪問し、モズクの加工を木村社長の案内で見学したことが山陰中央新報で報道されました。編集子は境港のFISH大使を務めていますので、二重に嬉しく受け止めました。内輪のことになりますが、MEL協議会の加藤事務局長(多摩地域在住)の奥様が早速コープデリで購入されたと報告いただきました。
これを機に、伊平屋村漁協様の益々の発展をお祈りします。

4.関係者のコラム

今月は、東京海洋大学副学長 舞田 正志先生に執筆をお願いしております養殖版の第3稿を掲載します。今稿でシリーズは完結です。

養殖生産とエコラベル認証」

東京海洋大学 教授 舞田 正志

   餌のことについて続けます。MEL養殖規格Ver2.0でモイストペレットの使用が制限されたことは前回も述べましたが、例外的にモイストペレットの使用を認める基準を定めています。その中で生産物の品質調整・品質向上を目的とした使用があります。現在の養殖生産物の流通の中で評価される品質が前提になっていると思いますが、固形配合飼料だけで生産された養殖魚の品質は本当に消費者の口に合わないものなのでしょうか? 固形配合飼料の成分を調整することで養殖魚の品質は様々にコントロールできると思います。消費者が望む品質とは何かを改めて問いなおせば、従来とは異なる生産方法、流通形態も生まれてくるのではないかと思います。その結果としてモイストペレットを使わなければならない必然性を考え直すことにつながるかもしれません。
持続的な養殖生産の実現には、生産の場である海面、養殖生産の重要な要素である水環境への負荷を減らし、良好な状態を維持することが必要です。広く水圏(海洋だけではなく、河川・湖沼など淡水域も含む)の環境を守ることは、そこで養殖される対象種の健全性、生産力を維持することの他に、国民全体の共有物である水圏環境への負荷を伴う養殖生産者の社会的責任であると考えます。経済的な目的を優先することにとらわれず、社会的責任を果たしてこそ、国民(消費者)に受け入れられる養殖生産物ということになり、持続的に養殖生産を続ける意義が広がるのではないでしょうか。その意味では、MEL養殖規格の4原則に共通する基本原則といってよいのかもしれません。
海洋環境への負荷を減らし、養殖生産を持続的に行う手法として陸上閉鎖循環式養殖への転換が期待されています。陸上閉鎖循環式養殖には、海洋環境への負荷低減のほか、食品としての安全性の確保や安定的な環境調整による生産性の向上、アクアポニックスなど複合養殖などのメリットもあります。
電気代や施設など大きなコストの問題は残されており、生産物の販売価格によりコストを吸収できる養殖対象種に限られるように思います。養殖対象種のすべてのライフサイクルを陸上の閉鎖循環式に委ねるという考え方もありますが、生産コストに見合う養殖対象種のライフサイクルの一部を陸上閉鎖循環式養殖で行うだけでも、従来の生産方式よりも海洋環境への負荷を低減することになるのではないかと思います。MEL養殖規格はこのような陸上養殖への適用も可能な規格として設計されています。
私たちの前に少子化が現実のものとして突きつけられています。就業者人口も減少していく社会の中で、動物たんぱくを供給する水産物への需要を安定的に賄うための養殖生産の意義はこれまで以上に高まっていくものと考えます。そうすると求められるのは養殖生産の省力化や先人の経験値(データ)を基に付加価値を生み出すことになるのではないでしょうか。作業の省力化や効率化にはIoT技術、ロボット技術など工学的手法の導入が不可欠になるでしょう。また、経験値(データ)を基に付加価値を生み出すことにはAIが大きな力を発揮することでしょう。作業の一部を機器類の導入によって省力化、効率化するときには、それらが正常に作動し、所定の性能を発揮することが必要です。そのため、例えば、IoT機器と連動して水質のモニタリング結果を生産者に通知するシステムを導入している生産者も増えてきていますが、生産管理の観点からは、機器類が正常に機能していることの点検やメンテナンスが重要になります。したがって、機器類の日常点検、メンテナスの手順、記録はMEL養殖認証においても重要な評価視点となります。
養殖産業は工学的な技術を取り入れ、一次産業の枠を超えていく必要があるのではないかと思います。このようなイノベーションは従来の生産方式を前提とした改善からは生まれません。従来の方法が最善かということへの問いかけと従来の方法にとらわれない新たな価値の創造が養殖産業の未来を決めるという気がする今日この頃です。

舞田先生有難うございました。スキームオーナーであるMEL協議会および認証機関と養殖事業者の意識改革への示唆と受け止めました。養殖産業が既に一次産業の枠を越えつつある現状、また社会的責任を求める動きに対応できる様、課題を関係者で共有します。今後ともご指導をよろしくお願いします。

5.沖縄もずくがコープサステナブル シリーズで発売されました

沖縄伊平屋村漁協が生産するモズク(2025年5月20日MEL養殖認証発効)を起点とし、鳥取県境港市の(株)海産物のきむらやが加工(2025年5月8日CoC認証発効)、日本生協連とコープデリ連合会がコープサステナブル シリーズで販売する一連のサプライチェーンが完成しました。
水産エコラベルの社会への実装が、一歩一歩進んでいることを嬉しく受け止めています。また、沖縄県のMEL認証商品復活でもあります。関係の皆様の連携に敬意を表します。


CO・OPプレスリリースより2026年1月7日)

日本生協連とコープデリ連合会、沖縄県産もずくで初のMELロゴマーク付き商品を発売~沖縄県伊平屋島産もずくのMEL認証取得を受け、商品のパッケージを切り替え~

日本生協連、コープデリ連合会は、伊平屋村漁業協同組合の「オキナワモズク海面養殖」がMEL養殖認証※を取得したことを受けて、発売中のCO・OP 沖縄県伊平屋島産味付もずく米黒酢入り」をはじめとするもずく商品を、順次MELロゴマーク付きパッケージに切り替え、コープサステナブル“海の資源を守る”の商品として販売します。

MEL認証:国際的に認められている日本発の水産エコラベル認証制度。水産資源や生態系などの環境にやさしい方法で行われている漁業や養殖業を認証する仕組みのこと。

6.愛南漁協のMEL認証マダイが出前授業で活躍しています

(一社)大日本水産会の魚食普及センターが、1月15日、都内中学校で「鯛の塩釜焼料理教室」を早武忠利課長を講師として開催しました。愛南漁協様のMEL認証マダイを使用するということでMELの秋本佳佑課長も参加しました。この事業は、魚食普及センターが2017年度から行っており、今年度で累計1000人を超える生徒が鯛の塩釜焼の調理体験と試食をした実績があります。
当日は中学一年生を対象に、午前と午後の2クラスで行いました。調理説明の後、生徒は6班に分かれ、班ごとに一匹丸々のマダイを実際に触り、スプーンを使ってウロコを取り、ハサミでエラと内臓を取り、水洗いしたマダイを塩で包み、オーブンに投入(作り方はこちらhttps://osakana.suisankai.or.jp/shokuiku/7906)。焼いている間に、座学として魚を無駄にしない食べ方、魚の栄養、飼料の話、漁業者の資源管理、IUU漁業の撲滅、水産エコラベルなどの講義が行われました。
焼きあがった鯛の塩釜を木槌で割り、班ごとに試食。各テーブルから、「めっちゃ美味しい!」、「柔らかい!」、「フワフワであったかくて美味しい!」、などの声が溢れました。普段食べてる魚と全然違う、小学校の頃に給食で食べた魚とは全然違う、普段は魚は苦手だけどこの魚はすごく美味しい、との声が多く聞かれ、美味しい魚を食べれば子ども達ももっと魚好きになると実感しました。最後にはどの班も完食でした。
ご協力いただきました愛南漁協様にお礼申し上げます。

世界の激動に振り回されているうちにあっという間に1月も末となりました。受験のシーズンです。次の時代の主役となる緊張した面持ちの受験生に、思わず「頑張れ!」と声をかけたくなります。
水産業界の新年は、6日の大日本水産会賀詞交歓会で始まりましたが、過去最高額の水産予算や黒潮大蛇行解消等の自然も味方にして皆様とご一緒に手応えのある年にしたいと願っています。本年もどうぞよろしくお願いします。

以上