MELニュース2022年 4月 第49号

4月3日(日)19時30分から放送されたNHKテレビ「ダーウィンが来た」で、北海道の「ホッケ柱」の復活が取り上げられました。ニシンの群来も然りですが、豊かな海の象徴が戻って来たことをとてもポジティブに描いていました。
漁業者と行政、研究機関が一体となった粘り強い自主管理が、成果として資源の回復につながり始めた手応えを感じるとともに、自然界が生み出す神秘とも言える現象に興味をそそられました。海の環境変化がとかくのネガティブに取り上げられることが多い中、この様な魚の生態を科学的に突き詰めた上の自主管理が資源回復に有効な手段であることは素晴しいことです。
全国でこの様な前向きな話がもっとメディアの話題になることを期待しています。

1.国際標準化関連

コロナ禍とウクライナ紛争の最中ではありますが、スペインのバルセロナで4月26-28日に開催されるSeafood EXPO Global 2022に参加し、GSSIおよび承認スキームオーナー9社との公式会議、現在CoCの相互承認を進めていますアメリカのアラスカRFMのスキームオーナーであるCSC(ゲストとしてCSCと相互認証を取り組んでいるアイスランドのRFMも参加)とのミーティング等々を予定しています。久し振りの対面の会議であり、MELの国際的存在感を高めるための意味のある議論を期待しております。
状況は来月号で報告させていただきます。

2.認証関連

今月は漁業3件、養殖1件、CoC1件、計5件でした。
今月の特記事項としては、気仙沼の臼福本店様の大西洋クロマグロ延縄漁業のMEL漁業認証が発効しました。既にMSC認証を取得しておられる漁業ですが、同社の臼井壯太朗社長のMSCおよびMEL双方の認証を取得するとの方針で実現した案件です。大西洋クロマグロの資源管理は日本もメンバーであるICCATにより行なわれていますが、日本のEEZ内の認証実績しかないMEL にとり、始めてのケースで時間は掛りましたが認証機関および審査員の努力と申請者のご協力により認証にこぎ着けました。我慢強く挑戦いただいた臼井壯太朗社長はじめ関係各位に敬意を表します。
これを機会に、日本を代表する漁港である気仙沼の皆様のMEL 認証取得に対する関心が高まることを願っております。
4 月13 日にシーフードショー大阪の会場でMEL 認証証書授与式を行ないました。認証証書授与式は認証機関である日水資の主催ですが、スキームオーナーのMEL として、認証発効のけじめと社会へのお披露目と位置づけ大切にしております。今回は8 社・団体の代表ご出席をいただき、皆様から前向きの決意表明とともにMEL 認証が輸出に役立ち始めているとの報告もあり意を強くしました。認証を取得された皆様に心からお祝を申し上げ、これからの事業に活かしていただくことを期待申し上げます。

3.理事会を開催しました

3月31 日に理事会を開催しました。このタイミングの理事会は過年度の事業報告および会計報告と新年度の事業計画、予算の説明が主議題で、順調に経過していることをご報告し、新年度もさらに意欲的に取り組むことを了承いただきました。
網野理事から豊洲市場にMEL ロゴつき商品をもっと並ぶようにして欲しいとの発言がありました。現状ではシーズンには北海道漁連様の秋サケ、養殖物では東町漁協様、ヨンキュウ様がブリの外箱にMEL のロゴを表示して出荷していただいております。豊洲に限らず全国の魚市場にMEL のロゴが賑々しく並ぶ日を待ちわびております。
双日様の山口 佳仁理事から辞任の申し出があり、了承されました。山口理事には、MEL のGSSI 承認取得の厳しい時期にご支援をいただき誠に有難うございました。今後のご活躍をお祈りします。

4.認証規格改正に伴うパブリックコメント募集を開始しました

GSSI のベンチマークツールの新基準(Ver.2.0)への申請に当り、必要と思われる規格改正のための規格委員会を先月15 日に開催、理事会の承認を得て、4 月8 日に認証取得者を含む関係者への説明会を実施しました。皆様からのご指摘にただいた点の修正を経て、4 月14 日よりパブリックコメント募集(60日間)に入りました。認証規格改正の内容はMEL ホームページに掲載しております。最も大きな改正点は、養殖認証においてGSSI の新基準が求めている「給餌する飼料に未加工の魚介類は使用不可」に対応するため、一定の条件以外では育成期に継続的なモイストペレットの使用を認めない点であります。
パブリックコメント締め切りの後、指摘いただいた点への対応および関係者に再度説明を行ない、承認、発効に向け所定の手続きを進めます。MEL 新養殖規格(Ver.2.0)の発効を7 月上旬とし、その後GSSI のベンチマークツールの新基準への申請に入ります。認証機関、審査員また事業者の皆様に種々影響があるかと思いますが、日本発の認証スキームとして世界で胸を張って行動できる様、皆様のご理解とご協力をお願いします。

5.認証取得者からのご報告

今月は青森県むつ湾帆立貝養殖において、MEL 認証取得の先陣を切られた(有)山神水産の神社長にむつ湾の帆立貝養殖事業についてお話しをいただきました。

「青森県むつ湾のほたて養殖者・加工者として」

株式会社山神
代表取締役社長 神 武徳

当社では加工部門である株式会社 山神が2020 年11 月19 日にCoC 認証を取得し、養殖部門である有限会社 山神水産が翌年2021 年4 月14 日にほたて養殖としては初となる養殖認証を取得いたしました。
青森県むつ湾のほたては半成貝を中心に養殖しています。その特徴は身は小ぶりですが、八甲田山から流れ込む上質な雪解け水によって、小さな体にたっぷりの栄養と美味しさを含んでいます。また、「新鮮なほたてを安心して食べていただきたい」という思いから当社ではすべての加工工程を一貫管理しています。
昨今、なにかとSDGs が話題となっています。当社でもほたて養殖はひとつの産業・青森の大事な文化として次世代に引き継いでいけるのだろうか?と考えていました。そのなかで自分たちにできることはないかと模索していたところにMEL 認証というものがあるということを知り、認証取得に向けて動くことになりました。もともと青森県漁業協同組合連合会が未来につなぐ資源管理として「複合的資源管理型漁業促進対策事業」を推進していたということもあり、養殖・加工部門共に無事認証を取得することが出来ました。現在は第一歩として自社で養殖したほたてのみを使用した当社の主力商品のひとつである「漁師のほたてフライ」にMEL ロゴマークを使用して国内販売しております。

ビジネス面では始めこそMEL が比較的新しいGSSI 認証ということもあり、当社から積極的にアピールしても企業になかなか伝わらず苦労したこともありました。しかしSDGs が世に浸透していくに伴い、少しずつですが企業の認識に変化を感じるようになり、ようやくスタートラインに立てたという思いです。
今後はMEL を販売ツールとして活用しながら、青森県のほたて産業だけではなくすべての水産業が発展していけるよう、引き続き持続可能な養殖業を目指して邁進してまいります。

神社長有難うございました。神社長のご指摘の通り水産エコラベルに対する社会の認識も急速に変化しております。ぜひMEL 認証をビジネスに積極的に使ってください。MEL も精一杯お手伝いをさせていただきます。

6.関係者のコラム

今回は、日本全国のスーパーマーケットで構成するコーポラティブチェーンCGC グループの総帥であるグループ代表堀内 淳弘様にお願いし、小売業経営の視点から水産エコラベルへの考え方をお話しいただきました。
堀内代表はMEL 協議会の創成期から会員としてご支援を賜っており、今月20-21 日に開催されたグループ合同商談会の会場でもMEL 認証への取り組みをメンバー社の皆様に発信いただいています。

「地球環境を守るため、個人も企業も行動を変える」

株式会社シジシージャパン
グループ代表 堀内 淳弘

私どもシジシージャパンは、北海道から沖縄まで全国の中堅・中小の食品スーパーマーケットで組織するCGCグループの全国・関東地区の本部です。現在、204社、4,213店が加盟し、総年商4兆9,481億円となっております。2023年には、グループ創立50周年を迎えます。
CGCグループに加盟するスーパーマーケットは、それぞれの地域で生まれ、地域の方々に育てられた企業ばかりです。そんな地域愛着スーパーマーケットの使命として、私たちは「お料理して、食べて、健康」を掲げています。
「食べる人のことを思い浮かべながら献立を考える」「お買物をする」「購入された食材をお料理する」「楽しく食事をする」「後片付けをする」「ゴミを出す」――この一連の行為が「食事」です。スーパーマーケットはこの毎日の食事を支える業態です。
CGCグループには毎日、約660万人のお客様にご来店いただいています。コロナ禍でご来店の回数が減り、週2回お買物に来てくださっているとしても、日本国民の約10人に1人がCGCグループのお店をご利用になられている計算になります。日本は2030年には総人口の3分の1が65歳以上となる超超高齢化社会に突入します。その中で、「お料理して、食べて、健康」の状態=未病の方々をいかに多くしていくかがスーパーマーケットの大きな課題となります。
それ以上にもっと大きな課題は、私たちが住む地球を次世代に良い状態で遺していくことです。
近年、世界中で増えている気候崩壊とも言える大規模な自然災害や、今般のパンデミックは元をたどれば、人類が自然への敬意を欠き、経済成長を推し進めてきたことに起因しています。
その中で、個人も企業も行動を変えていく必要があると考えてCGCグループは動き出しました。それが5年前から始めた「スカスカ撲滅運動」です。
「スカスカ商品」の撲滅は商品の空間率の改善や脱プラに、「スカスカ配送」の撲滅は積載効率の向上、納品頻度の削減、在庫スペースの改善、「スカスカ売場」の撲滅は売場や作業の効率アップに直結します。これらに製・配・販が三位一体で取り組むことで、米国の3分の1しかない卸・小売業の生産性の向上、ひいては環境改善にもつながるのです。
この「スカスカ撲滅運動」は私たちスーパーマーケットだけでは進められません。私は機会あるたびに、このことをお取り組み企業の皆さんにお話ししてきました。そして「思いは招く」の言葉通り、まずは米菓業界のナンバーワン企業の亀田製菓さんがこの運動の趣旨をご理解いただき、自社商品からプラトレーをはずし、空間率を改善した「ECO パッケージ化」に踏み切られました。さらには、スカスカ配送を撲滅しようと「パレット物流」の推進を同業メーカーにも呼び掛けてリードしてくださっています。続いて、今年2月には、食肉業界最大手の日本ハムさんが、最大の売れ筋商品「シャウエッセン」の包材削減に取り組まれました。その成果を受けて業界の方々に呼びかけ、SDGs推進委員会結成し業界全体で環境対応する旗振り役をしてくださっています。
両社とも個別最適ではなく、業界を変え全体最適に向かう動きにアクセルを踏み込んでくださいました。今後の拡がりに大いに期待しているところです。
私たちは四方を海に囲まれ、その恵みを食生活でも受けています。
しかしながら、地球温暖化や海洋汚染、乱獲などによって2050年には世界中のほぼすべての海域で漁獲量が減少すると言われています。私たちがスカスカ撲滅で排除しようとしているプラスチックは海や海洋生物、最終的には人間にも悪影響を及ぼします。
今回、CGCは長年お付き合いのある垣添会長様からご紹介いただき、その考え方に賛同しMELの認証を取得へ動きました。貴重な水産資源の価値と、その持続性の大切さを加盟スーパーマーケットやお客様にしっかり伝えてまいりますので、よろしくお願いいたします。

堀内代表ご多用の中有難うございました。21 日にグループ商談会を見せていただきましたが、グループの理念、思い、姿勢をしっかりと受け止めました。
MEL も皆様の意を体して頑張りますのでどうかよろしくお願い申し上げます。

7.イベント関連

今月は13-14 日に第19 回シーフードショー大阪に出展しました。昨年に比較し出展者数は減りましたが来場者数は増加しました。MEL 協議会はゆったりとしたスペースを確保し16 社・団体の認証取得者からの35 品の商品を来場者に紹介し大変好評でした。この種のイベントにおいて、MEL ブースに立ち寄り様々な相談をされる来場者の数が増えており、水産エコラベルが社会に浸透していることを感じております。

もうすっかり過去のことになってしまいましたが、あの1973 年の食糧危機の起点はウクライナとロシアの小麦の不作でした。「食」は安定した生活の基本ですから、穀物に限らず水産物の供給の任に当たる私たち責任の重さを改めて痛感しております。北洋漁業の先達である平塚常次郎様の言葉「食料生産事業は平和産業である」は時代を経ても正鵠を得ています。昭和のはじめ、カムチャッカ半島のサケマス漁で日露間の緊張が高まったことへの対応を大局から示唆された箴言と受け止めています。水産資源を持続可能に管理することは、単なる経済的な問題だけでなく有事において日本の弱点である食糧自給率の低さをカバーするための最優先の課題として現実味を帯びてきました。
皆さん、今年度も社会からの負託をしっかり受け止め、ご一緒に頑張りましょう。

以上