MELニュース2019年 9月 第18号

自然災害に振り回されながら秋本番を迎えました。

集中豪雨や台風の被害は全国の多方面に及んでおりますが、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げ、一日も早い復旧をお祈りします。更に、季節が重要な水産において秋の代表魚サンマが記録的な不漁であり、この心配の種は絶えない状況を何とか乗りきっていただきたいと願っております。

世界3大スポーツイベントのラグビ-ワールドカップが9月20日に開会、主催国日本はオープニングゲームで相手のロシアに苦しみながらも勝利し幸先の良いスタートを切りました。北海道から九州まで全国12か所で予選が行われますので、各地の盛り上がりがモヤモヤを吹き飛ばしてくれることを期待しております。

 

1GSSI関連

今月中には、GSSIの事務局および審査員によるパブリックコメントへの対応が終り、書類がベンチマーク委員会から承認の最終決定を行う理事会に送られるものと思われます。これから理事会によるベンチマーク報告書のチェックが始まります。既に、昨年9月にGSSIの承認申請をしてから1年を経過しており、結局夏休みの遅れが取り戻せず、進捗は現時点で期待より3週間ほど後ろにずれてしまいしまいました。
日本サイドは、MEL事務局は当然のこと相当の負荷でありましたが、日水資様、JAB様のご協力を得て粛々と対応しました。
事務局としては次のステップ、即ちGSSIの理事会の承認決定後にMELとして取り組むべき課題の整理を進めております。

 

2.認証審査に関して

認証に関しては、業務が遅れ気味でご関係の皆様にご迷惑をおかけしており、お詫び申し上げます。現在、事前相談中、コンサル中、審査待ち、審査中、認証証書発行待ちを含め計63件あります。業務はMELの審査機関への要求事項および日水資のMEL認証業務規程に沿って行われており、定められたルールと齟齬を来たさない様細心の注意を払いながら取り進めております。いつ認証されるのかとお待ちいただいている皆様には、今しばらく時間を頂戴したくお願い申し上げます。
MELにとって、小売業からの初めての認証申請であるイトーヨーカ堂様のCoC認証取得に向けて申請が受け付けられました。本部から各店舗までの申請であり、スキームオーナー、審査機関、申請者とも初めてのケースで、今後のモデルとなる様しっかり検証しながら審査を進めることを関係者で共有しています。
また、珍味メーカー(株)なとり様、業務用卸売業の(株)久世様のご担当部門の方が来会され、MELのCoC認証取得について種々情報交換をしました。両社とも所属される業界として初めてであり、認証への関心が一段と広がりつつあることを感じます。

3.イベントへの参加および内外への発信

今月は、海外の催しは、9月11-13日にローマで開催されたICFA(国際水産団体連合)の総会に須藤管理部長が事務局員として参加、水産エコラベルに関するセッションでMELの進捗状況の発表を行いました。発表は好評で、GSSI承認取得に向けたMELの活動が評価されたと報告されています。

ICFAの会議

ビジネス関連のイベントでは、9月8日にアメリカのニューヨーク市でTrue World Foods社が開催したユーザー向け商品展示会に招かれ、MELとしてブースを出展するともに、MEL認証を取得しておられる東町漁協様とご一緒にブリ(「鰤王」)のプロモーションを行いました。出張した田村技術部長から、アメリカで水産物を販売している来場者から「今まで日本産の認証付き水産物はごく限られたものしかなかったが、ようやく国際標準の日本発の水産エコラベルが出来たことによって、アメリカの高級水産物市場の期待にも応えられる。今後に期待する。」とのコメントを多数いただいたとも報告がありました。なお、東町漁協様は、MELのロゴを付けた「鰤王」の対米輸出を強化される方針を発表されました。

日本パビリオンには10社が参加。一番奥がMELと東町漁協のブース。右の写真は「鰤王」の試食

4、審査員研修について

本年度のMEL審査員研修は、9月25-27日の日程で開催中です。
今回も募集枠30名に対し満枠となり関心の高さを感じています。
研修への参加は、個人ではなく組織からの受講が多く、企業、団体の他地方行政から、また認証機関を目指しておられる組織から等多彩となっており、日本の水産エコラベルの審査体制の層が一段と厚くなることが期待されます。    カリキュラムでは、(株)テクノファの青木 恒享社長にお願いしISOに沿った適合・不適合判定と是正についての講義と日水資の遠藤 進専務による認証審査のプロセスと報告書作成に関する講義を強化すべき分野として特に意識しています。当然のことながら、GSSIの承認が得られた後のMELが取り組むべき行動についても、充分な時間を取っていただき考え方の共有に努めています。

5.講習会、意見交換会に関して

漁業認証において、新MELの取得は未だ2件であり、日本の漁業の中核であるまき網、底曳の皆様の認証取得に関する積極性が薄い現状にあります。
必ずしも水産エコラベルに対し否定的ということではありませんが、とにかく実績が少ない。そこで、既にMELニュースでもご報告してります通り、昨年から認証取得に進む前の段階として、ご関係の皆様と水産エコラベルについての理解を深めるための意見交換を始めております。
一つは、地域ぐるみ(漁業、養殖から加工、流通まで)の取組へのご提案、もう一つは業種別の集まりにおけるご説明です。
上部団体も、6月全まき、北まき 成子会長、7月海まき 中前会長、遠まき 加藤組合長、8月全底 富岡会長、9月日かつ 山下組合長にご相談をし、皆様から様々な有益なご示唆をいただきました。

地域に関しては、2018年5月気仙沼、9月境港、12月八戸、2019年8月石巻、9月釧路で意見交換会を開催しました。既に動き始めておられるところがありますが、失礼な表現をお許しいただくなら、なかなか「一歩が踏み出せない」というのが実態です。

業種別では9月に焼津で遠洋カツオ一本釣りおよび加工事業者、同じく9月に福岡で東海・黄海海区大中まき網漁業者協議会の皆様とお話をさせていただきました。遠洋カツオ一本釣りの皆様は既にMEL旧認証を取得しておられ、今回新認証への移行には前向きでした。福岡でのまき網の皆様との意見交換会は、事業者協議会の総会(活動報告や決算報告の他、操業の自主ルール等踏み込んだ提案と議論が行われた)とそれに続く水産庁からの資源管理に関する説明が行われました。更に水産エコラベルがどの様の漁業の持続性につながり、漁業者に関係するのか?資源管理と漁業の在り方を考える格好の場をとなりました。3時間以上の長丁場でありましたが、出席された各社トップの皆様の積極的参画もあって充実した会になったと受け止めました。
今後も、この様な地道な努力を続けたいと思っております。と申しますのは、漁業者にとってエコラベルが役に立っている実感がないとのご指摘ある一方、小売業、外食産業の皆様にとって、もっと認証された魚種やロゴマーク付きの商品が多くないと認証の魅力が物足りないと受け止められているからであります。根気の要ることですが、引き続き他の地域や業種にも仕掛けて行きますのでどうかよろしくご支援をお願いします。

6.その他

MELの仕組みの海外導出について、北海道漁連様と打ち合わせをしています。北海道漁連様はMEL認証の秋サケを中国に原料輸出して委託加工し、MEL認証水産物として国内外に販売することを企画しておられます。このためには、中国の加工工場がどうしてもMELのCoC認証を取得しなければならないので、具体的に審査等どう対応するかが喫緊の課題となっています。取り敢えず、①MELのロゴマークの国際登録を急ぐこと、②海外での委託加工等に対応出来るよう様MELの認証規格や規程類の検証を行うとともに、の委託加工工場の審査体制を構築する、③並行して、MELとしてスキームの海外導出の基本方針を策定する(当然、理事会、総会にお諮りする)、を認証取得者の皆様にできる限り早くお役に立てる様長岡専務をリーダーとして取り組みます。MEL会員への入会が2件ありました。1件目は極洋様グループの極洋水産(株)様であり、2件目は(株)ヨンキュウ様です。これで正会員は39企業・団体になりました。ご一緒に、「日本発の世界が認めるMEL」確立を進めて参りたいと願っておりますので、どうかよろしくお願いします。

 

 

秋分が過ぎ、日の短さを感じるようになりました。皆様にとって上期の決算、10月からの消費税増税、また大切な暮れに向かって何かとご多忙のことと思います。
かねてより異常気象の常態化の指摘をしてまいりましたが、イギリスの日刊紙ザ・ガーディアンはとうとう「気候変動」ではなく「気候危機」という表現を使い始めました。日本周辺の海水温は100年前に比べ1~1.5℃上昇しており、気候や海洋生態系に様々な影響が出ています。海を仕事の場とする水産業にとって、「自然に勝る強者はいない」現実にどの様に対応するか、産業の知恵と行動が問われています。
皆様と力を合わせ難しい課題を克服して参りたいと思います。どうかよろしくお願いします。

以上