MELニュース2019年 8月 第17号

梅雨寒と日照不足に悩まされた7月がうその様に、梅雨明けとともに猛烈な暑さがやってきました。体にこたえる日々であったかとお見舞いを申し上げます。

8月は、メディアの戦前、戦中、終戦報道が生々しさを競う中、戦前生まれの世代にとっては、当時のことを思い出すとても重たい月です。戦争の悲惨さのほんの一部かもしれませんが、「飢餓」については、実体験であるだけに記憶から消えようもありません。それ故、水産資源の保護と持続的利用には特別な思いがあります。
一方、球児の夏はこの猛暑の中連日4万人を超える大観衆に「ならでは」の感動を与えています。更に、来月から始まるラグビーワールドカップ前のテストマッチ、そして2020夏のオリパラへの選考会と4年に一度、しかも日本がホスト国のスポーツの祭典への報道のボルテージが上がっています。
古来、民族が最も盛り上がるのは戦争とスポーツと言われますが、盛り上がりの足元には日本が対処しなければならない様々の課題が見え隠れしています。この様な状況の中で、MELにとって本当の意味で大切なこれからに向かうことになりますが、しっかり取り組むことを事務局一同心しています。

1.GSSIの承認関連

7月30日に締め切られたパブコメは、結局世界中7つの団体/個人から多数のコメントをいただきました。GSSIの事務局によると、この件数は今までの最高とのことであり、それだけアジア初の申請は関心を呼んだ様です。国別では日本が最も多く4団体/個人、次いでヨーロッパ2団体、北米1団体でした。
日頃からMELとの関わりのある方々だけでなく、環境NGOや他のスキームオーナーからのコメントもありました。
これ等のコメントはGSSIの事務局、審査員(MELの審査を担当した3人)およびMEL事務局と共有されました。先ずはGSSI事務局と審査員による分析が行なわれ、対応のためMELにも多くのエビデンスの追加が求められています。あいにく夏休みのシーズンと重なっており、関係者夫々事情を抱えながらの対応で中々意に沿いませんが、現在パブコメへの回答が整いつつありベンチマーク委員会による最終化のステップに何時入れるかの段階です。理事会の承認を得て一日も早く朗報がお届けで出来ることを願っております。

2.認証の審査に関して

新MELの認証は、7月26日に行われた第2回の認証証書授与式をもって、漁業2件、養殖8件、CoC 9件の19件になりました。今回、海藻類で三重県鳥羽磯部漁協和具浦支所様がワカメ養殖と加工で、また金子産業様がクロマグロ養殖(人工種苗、人工飼料)で、共に初めての認証を取得されました。ご努力と熱意に深甚なる敬意を表します。

7月26日に行われた第2回MEL認証証書授与式

また、全体では審査を終了し認証決定待ちが12件あり、認証申し込みのコンサル中、申し込み済審査待ち及び審査中が合せて60件ほどありますので、認証機関ならびに審査員の皆様には相当の負担をお掛けしています。
今月、小売業で初めてイトーヨーカ堂様がコンサルを終え、審査契約締結の準備中です。スキームオーナーとしてのMELにとって、また認証機関および審査員にとって初めてにケースであり戸惑うことが多くありましたが、関係の皆様の努力で前に進んでいます。MELとして、漸くここまで来れたことを進化の一つとしてご報告させていただきます。

3.海外への発信について

海外の展示会等への参加は先月号でご報告しましたが、それ以外に、飛び込みがありました。8月27日に横浜で開催されますTICAD (第7回アフリカ開発会議)のラウンドテーブル会議でMELのお話しさせていただく機会をいただきました。アフリカ諸国は、かつては西岸に進出した日本のトロール船隊が漁獲する青物の重要な輸出先でありましたが、近年では日本産のサバの市場として脚光を浴びているのはご承知の通りであります。
また、来月になりますが、JICA(国際協力機構)より海外からの研修生向け研修会でMELの活動に関する講演を求められています。
MELとして、日本発の水産エコラベルの国際的認知を高めるためにも、積極的に対応したいと考えております。

4.審査員研修について

MELの信頼性の充実と保持、認証の取得促進のためになくてはならない取り組みであり、審査員の養成と力量アップのための重要な事業として本年度も準備して参りましたが、この度具体的にその実施が決定しましたので、以下にお知らせいたします。

  1. 期日:令和元年9月25日(水)~27日(金)
  2. 会場:TKP築地新富町カンファレンスセンター
  3. 主催:(一社)大日本水産会
  4. 実施機関:(公社)日本水産資源保護協会

昨年は既存の審査員のためのレベルアップ研修(規格の改正)を2回、新規の審査員のための研修を2回(漁業とCoC、養殖とCoC各々1回)実施しましたが、今回は漁業、養殖、CoCを網羅し、講義と実習の選択により希望の規格の資格を得ることができ、更には既存審査員の「スキルアップ研修」として活用することも可能にしています。
募集要項はMEL協議会のHPでも掲示していますのでご参考下さい。

5.講習会

 先月号でご報告しました通り、東京豊洲市場の東京魚市場卸協同組合(「東卸」)様主催のセミナーが8月2日に開催されました。「東卸国際化プロジェクト」として3回目のセミナーでありましたが、早山 豊組合長はじめ組合幹部及び会員、大卸、行政、メディアと多彩な顔触れが参加される盛会となりました。

8月2日の東卸のセミナー

早山組合長は「この様な機会を通して世界の豊洲にふさわしい組合員の意識と行動の改革を推進したい」と関係者の前向きな考え方を表明されました。会員の皆様からのご質問も活発で熱意が伝わってきました。

第21回ジャパンインターナショナルシーフードショーは8月21~23日に開催されましたが、MELはブース出展とセミナー(8月21日)に参加しました。海外のスキームであるMSC、ASC、ASMIのRFMの出展もあり、同時開催のセミナーを含め、日本でも水産エコラベルの広がりを感じるショーでした。
今年のMELブースは活動の展示と認証取得者の皆様の商品紹介および海外から来場されたバイヤーとの商談会をセットした初めての試みで臨みました。会場がメインのスペースである1階に確保できなかったのは少々残念ですが、認証取得者に些かでもお役に立てなら誠に幸いです。
商談会には、東町漁協(ブリ)、愛南漁協(タイ)、黒瀬水産(ブリ)、高橋商店(カツオ)、福島県漁連(カツオ、サバ)計5社・団体が参加されました。

海外バイヤーとの商談会

海外からの参加はシンガポール1社およびタイ2社で、各社、団体ごとにプレゼンと商品の売り込みを行いました。既に、MSC、ASC等になじみのあるエリアですが、バイヤーのMEL認証付き商品に対するポジティブな反応と商談に一定の成果が得られたことに、事務局としてこの種の企画に手応えを感じました。次回以降、更に工夫を凝らし、一段と意味のある出展にしたいと考えています。認証取得者の皆様で興味のある方は事務局までご連絡ください。
シーフードショーでの講習会は今年で3回目となり「新た挑戦が始まる日本発の水産エコラベル」をタイトルに、認証取得の推進とともに、GSSIの承認が得られた後の取り組みにつき参加いただいた皆様と情報を共有させていただきました。
また、地域ぐるみでMEL認証を取得し地域の活性化に結び付けるプロジェクトとして、昨年12月に八戸で実施しました「東北復興水産品展示商談会のフォローアップセミナー」に続く第2弾「石巻の皆様と日本の水産業の明日を考える」を8月28日開催します。石巻商工会議所に推進をお願いし、石巻水産振興協議会、更に水産団体である北部太平洋まき網漁業協同組合連合会、全国底曳網漁業協同組合連合会、全国水産加工業協同組合連合会のご支援を得て石巻の漁業、加工、流通の皆様と前向きな意見交換が出来ることを期待しております。第3弾は、9月3日に釧路で開催の準備を進めています。

6.イベント関連

今月のイベントは、前記のインターナショナルシーフードショーの他、8月7-8日に開催されました「こども霞が関見学デー」にて水産エコラベルとMELの活動を説明する資料を配布しましたが、お陰様でとても好評でした。対象は小学生と親ですが、小学生の時から魚に興味を持ってもらうことは重要と受けとめています。
また、7月30日に神奈川県が主催する「第12回かながわ食育フェスタ」においても主婦連(消費者団体ブース)にご協力いただきましてMELを紹介し、水産エコラベルとMELの活動を説明する資料を配布いたしました。

7月30日の第12回かながわ食育フェスタ

場所はそごう横浜店9階 新都市ホールでしたが足を止めて聞いていただける企画となり好評を得た様です。

二十四節気でいう処暑になり残暑はまだまだ厳しいものの、秋の気配がそこここに感じられる様になりました。お盆の西日本を通過した台風10号は海面養殖の盛んな地域を直撃しましたが、幸い皆様に大きな被害がなかったとのことでほっとしております。
GSSI承認決定を鶴首する毎日ですが、そもそも水産エコラベルは、多くのステークホルダーの領域を越えた協働なしに社会に定着しないだけに、先ず認証を取得された皆様とご一緒に日々進化をするため努力を重ねたいと願っております。

相変わらず、海況も漁況も落ちつかずご心労の多いことと思いますが、皆様のご健勝、ご活躍をお祈りします。

以上