MELニュース2020年 4月 第25号

歯止めのかからないコロナウィルスの感染拡大とロックダウン、オーバーシュート、ソーシャルディスタンシング等々聞き慣れない言葉の氾濫を追いかけ、とうとう緊急事態宣言が全国に発令されました。
皆様にはつらい思いで厳しい事業環境に加え自粛と我慢の日々に耐えておられることと思いますが、その様な中でも国民への「食の安定供給」にしっかり貢献いただいていることに深謝申し上げます。
MEL協議会も多忙を極めた2月がまるでウソのように、殆ど全ての予定がキャンセルや延期となり、Web会議と在宅勤務を取り入れながら皆様との連絡を絶やさないことを心がけました。
定点観測をしていますスーパーの魚売場、街の魚屋、築地場外市場の状況は実にまだら模様です。普段なら業務用に行く筈の高級魚が街の魚屋に出回る等はかつて見られなかった光景です。また内食需要の拡大が数字に表れる中、確かに魚売場は活性化していますが、某紙が紹介した「お薦めテレワークメニュー」に魚がほんの一握りしかなかったことは、水産業界が抱える課題として考えさせられました。
コロナ禍を機に産業構造も、ライフスタイルも大きく変わる予感がします。
いつの時代も変化はチャンスでもあります。この変化を掴み損なわない様、皆様との交流をより密にしたいと願っています。

1.GSSI関連

今月はロゴマークに表示を求められているV-1、V-2への対応が主な業務となりました。ロゴマークの使用に関する報告を関係する全ての事業者・団体よりいただき、その結果をGSSI事務局へ報告いたしました。
先月号でご案内いたしました、V-1、V-2のシールは現在のところV-1について4名、V-2については7の事業者からのご要請がありそれぞれお届けし、使用を開始されたと報告を受けています。

3月11日にシーフードレガシーの呼びかけで、世界各地を結んで「企業のサステナブル調達とGSSIの進捗と今後について」をテーマに議論するWebinar(Webを使ったセミナー)が開催され、MELから長岡事務局長ならびに須藤、田村両部長が参加しました。当初はGSSIの事務局長Wisse氏が来日しワークショップ開催の予定でしたが、コロナウィルスの感染拡大によりWebinarに変更されました。GSSIから理事会メンバーおよび事務局がパネラーとして参加し充実した内容であったと報告されています(概要はシーフードレガシーのホームページに掲載されています)。
このWebinarの模様が某専門紙に、『GSSIが進めている「グローバルベンチマークツール」の改訂が行われると、現在承認されているスキームは新たな審査を求められる』と報道されたため、関係者から問い合わせをいただきました。正しくは、現在承認されているMELを含め9つのスキームは、年次審査(MOCA)によって承認の継続を担保されており(もちろん審査に合格すればですが)、MELの場合は、本年12月からGSSIのグローバルベンチマークツールの現バージョンによるMOCAが予定されています。一方、現在パブリックコンサルテーション中の新バージョンの導入は2021年後半からと思われ、加えて移行期間を考慮すると対応を要するのはかなり先の話となります。MELとしては、来年度からGSSIの新バージョンへの適合を意識した認証規格等の改定の準備に入ることを想定しています。

4月23日にGSSIがこの度新たに創設したSOAG(Scheme Owner Advisory Group=スキームオーナー諮問委員会)の初回会合がWeb会議で開催されました。承認されている9のスキームの代表とGSSIから理事会メンバーおよび事務局が参加し、GSSIの更なる進化に向け意見を交わしました。MEL協議会からは須藤管理部長が参加しましたが、有益な会議であったと報告を受けています。世界的混乱の中でもGSSIはポストコロナを見据えて動いています。

2. 認証について

今月の認証発効は漁業1件、養殖1件、流通加工1件の計3件でした。
沿岸漁業の認証がようやく1件発効しました。漁業については関係者で資源保護に厳格な自主規制が行われているにもかかわらず、様々な要因で資源の水準が十分でないケースにどの様に対応するかが難題でした。認証申請者、認証機関および審査員はじめ関っていただいた多くの皆様の我慢強い努力に敬意を表します。気候変動が人類への大きな脅威として続く中、ローカルな資源の変動をウオッチされる研究機関の皆様とも力を合わせ、MEL認証を役立てながら持続的利用を推進して行きたいと願っています。

MELの流通加工認証において、3月24日に日本の大手小売業として初めて認証されましたイトーヨーカ堂様のニュースリリースが4月10日にホームページに掲載されました。

4月13日から全国のイトーヨーカドーの店舗でMEL養殖認証を取得しておられる『顔が見えるお魚。』のパートナーである小豆屋水産様のブリ、鹿屋市漁協様のカンパチ、茂由水産様のマダイ、丸年水産様のヒラメの4魚種が「MELV-2のロゴを付けて販売が開始されました。本部とお店が一体となった活動に消費者を巻き込んでいただくことを期待します。
店頭における販促物の飾り付けとロゴの表示は写真の通りです。


イトーヨーカドー木場店の鮮魚売り場とMELV-2ロゴ付ブリの切身パック

3.認証取得者からのご報告

今月からこの欄を設けました。認証取得事業者の皆様と現場での苦楽をともに出来ればと思っています。トップバッターはMELニュースでも度々お伝えしております三重県の鳥羽磯部漁協和具浦支所様のワカメの取り組みについて、陰の軍師役を務めておられる組合監事の佐藤力生様に話題提供をお願いしました。

【MELの効果】 鳥羽磯部漁協 監事 佐藤 力生(答志島在住)

仮に免許証がなくてもだれでも車の運転ができる国があったとしましょう。それでもMEL自動車学校に入学し免許証を取得しようとする人がいたら、その動機は何だと思いますか。おそらくその卒業マークを例えばタクシーのボディーに貼ることで「そこの卒業生なら安心」とお客が増え、所得の増加につながると思うからでしょう。正直に言っていくらエコという立派な理念を唱えようが、国家検定資格でない現状では、漁業者にとってのMEL取得効果とは価格上昇に尽きるといってよいでしょう。
ということで、MEL塩蔵ワカメの初セリをびくびくしながら見守りましたが、ご祝儀相場のおかげでキロ当たり2300円と非エコ商品より1000円も高い価格となりました。その後のセリでもコロナの影響下にありながらも堅調に価格が維持され、まずは一安心。でもこれをMELの効果とは言い切れません。なぜならワカメのCoC認証を取得した加工会社は1社のみ。ロゴマークが貼られた小売商品は一部で販売され始めただけで、消費者の実需を反映した価格とはいえないからです。本当の勝負は加工会社が増えた2-3年後でしょう。
でもまずまずのスタートが切れて、ほっとしたMEL初年度でした。

佐藤様有難うございました。橋本計幸委員長はじめ組合員の皆様の益々のご発展をお祈りします。

4.関係者のコラム「明日への話題」

今月から関係者からのメッセージを共有するコラムを設けました。
様々な角度からMELおよび認証取得者の皆様へのご指摘がいただけることを期待しております。トップバッターには、日本の斯界のリーダーのお一人である横浜国立大学教授松田裕之先生にお願いしました。

『旧MELの成果、MEL V2への期待』 松田裕之(横浜国立大学教授、MELアドバイザリーボード座長)

 昨年12月にMEL V2はGSSIの承認を受けました。これはGSSIにとっても、世界の水産エコラベルの多様化を図るうえで大きな一歩だったと思います。
昨年12月13日のMELワークショップの意見交換会で日本海洋政策学会副会長の寺島紘士氏が、MELの取り組みは他の海洋政策の参考になると仰って頂き、私も身の引き締まる思いがしました。
2021年1月末をもって旧MELは廃止されます。延期が決まった東京五輪の頃にはMELのロゴは元に戻ります。
昨年2月6日のワークショップにおいてGSSIからの参加者が指摘されたように、エコラベルは常に改善し続けるものです。多くの事業者が旧MELに登録いただいたことで、日本発の国際認証の可能性が生まれ、今日に至りました。私は、MELは単なるエコラベルでなく、志ある水産関係者が学びあう場でもあると思っています。新MELに登録することだけがその道ではないでしょう。MELの活動が、GSSIを通じて、アジア地域にも通じる世界の持続可能な漁業の在り方を問いかけることになると期待しています。世界中がコロナ禍に苛まれ、皆さん大変ご苦労されていることと存じますが、必ず克服できるはずです。今後ともMELをよろしくお願いします。

松田先生有難うございました。今後ともどうかよろしくお願いします。

5.MEL協議会事務局の人事について

MEL協議会事務局の人事についてご報告します。5月末日を以てかねての予定通り、技術部長の田村 實が2年間の任期を終え国際協力機構(JICA)に復職することが決定しました。後任には冠野 尚教が5月1日から着任、引き継ぎを開始します。田村の勤務はGSSIへの承認申請から承認取得までのMELにとって厳しい時期でありましたが、皆様からいただきましたご支援に心からお礼申上げます。また新任の冠野はすぐにMOCA(承認の継続審査)に対応することになりますので、皆様の変わらぬご指導賜ります様お願い申上げます。

 

リスクマネージメントの要諦が「最悪事態を想定する」とするなら、日々深刻化するコロナウィルスへの対応のためのBCP(business Continuity Plan=事業継続プラン)に必死に取組んでおられる皆様にとって、水産エコラベルは必ずしも優先順位は高くないかも知れません。しかしこの様な時こそ、長期的な課題に対し地に足がついた地道な活動をする好機かと思います。皆様のご理解をお願いするとともに、MEL事務局も遅れております審査や認証発効について、審査員が地域に在住しておられるという日水資様の強みを活かしていただき、ポストコロナに備えたいと思っております。
気がつけば季節は清明から穀雨へ、相変わらず気候は落ち着きませんが、一日も早くコロナ禍が収束し皆様に平常の日々が戻る様、ご一緒に頑張りたいと思います。

以上