MELニュース2020年 2月 第23号

人類を脅かすリスクが気候変動から、感染症へと大きく振れた月になりました。新型コロナウィルスのアウトブレークに実際に遭遇してみると、リスクに対し人類が如何に無力であるかを、これでもかと知らされています。
こんな中、2月はMELとして設立以来最も忙しい毎日との格闘でした。
一日も早く社会からの期待にお応えし、皆様にお役立ちが出来る様頑張っています。皆様からのご相談、ご指摘が様々ありますが、MELにとってはどれもが大切な機能を充実させるポイントと受け止め日々学んでいます。

1.GSSI関連

今月は、消費者の混同が起きない様、新旧の規格にV-1,V-2を表示することへの対応が課題でした。認証取得者にとって、現在手持ちしておられる製品および包材の在庫をどうするかは深刻な問題であるだけに、GSSI事務局と打ち合わせながら、齟齬がないよう取り進めています。
認証取得者の皆様には、新旧を区別するご連絡を行い一定の理解をいただいておりますが、認証取得者が手持ちしておられる製品および包材の在庫が想定していたよりも多く、27社で57種類の商品に対して、1商品あたり数百から百万単位の包材やラベルが用意されています(2020年2月末時点)。一方、MELからのお問い合わせにご回答いただいていない事業者様に関しましては、全容把握に向けて引き続きご協力頂けますと幸いです。
今後の対応については当然のこと、会社・団体毎に事情が異なりますので限りなく複雑ですが、適解を見つける様全力で取り組みます。

2.認証の発効

今月の認証発効は漁業0件、養殖4件、流通加工6件、計10件で、単月の認証としては過去最高でした。漸く審査員研修の成果が出はじめたと受け止めています。審査機関および審査員各位の努力にも敬意を表します。
審査機関による判定を受け、認証の発効に合わせてMEL協議会と「ロゴマーク使用・管理規程」に基づきロゴマーク使用契約を締結するため、MEL事務局は審査機関から連絡を受け次第、認証予定事業者にロゴ契約書案をご案内します。ロゴマーク使用を急がれる方は、事前に事務局にご連絡いただき、詳細を詰める等のロゴ契約締結の準備を進めることをお勧めします。MELと事業者様の間でロゴマーク使用契約が締結されますと、広報・製品等へのロゴマークの使用が可能になります。認証証書授与式も予定致します。

3.審査員研修について

審査員研修は先月号でご報告しました通り、1月27~29日に行ないました。研修内容の充実を図り、ISO研修の専門家である(株)テクノファの青木恒享社長により深く関わっていただいた結果、様々な課題が見えてきました。もちろん、回を重ねることで進化していることは間違いありませんが、世界が認めるMELとして

  1.  研修全体の統制の更なる改善(テキスト書式の統一。カリキュラム毎に内容を講師一任から統一へ等)
  2.  審査員に求める力量要件の関係者間の考え方の統一
  3.  講師に求めるMELの期待と講師としてのマインド、スタンスのあり方および主体性の発揮をどう整合させるか
  4.  MELの信頼性、堅牢性を高めることへの更なる打ち手
    時間をかけながら丁寧に関係者で議論すると同時に、足下3月に予定しているCPD研修に出来ることから取り入れます。

4.合同規格委員会開催について

2月3日に規格委員会を漁業、養殖、流通加工規格合同で開催しました。MELのGSSI承認後の初めての規格委員会であり、

  1. 現状のご報告とGSSI理事会からの要求である、承認から1年後の承認継続審査(Monitoring of Continued Alignment=MOCA)への対応
  2.  実態と乖離をしている規程類についてどのように修正するかおよび認証審査における工数決定にかかる指針
  3.  承認事項として、漁業、養殖認証における事故等による不適合発生時の対応ルール(内部文書)

について議論いただきました。その他、MEL認知度向上への取り組みについて報告をし、委員の皆様からご意見をいただきました。
特に実態と乖離した規程類については、技術部会または有識者での検討をいただいた上、出来るだけ早くそれぞれの規格委員会で議論いただき、理事会に諮れるよう調整をしています。

5.MEL協議会アドバイザリーボード開催について

2月6日にMEL協議会アドバイザリーボードの会議を開催し、全員ご出席の下GSSI承認に至る経過と条件および実態と乖離している規程類につきメンバーの皆様にご報告するとともにご意見をいただきました。
特に、GSSI理事会からの条件である、新旧規格が消費者にとって判別しやすいようV-1、V-2を表示することおよび1年後の承認継続審査(MOCA)について多くの指摘をいただきました。

  • 「認証審査の安かろう悪かろう」は絶対に避ける。厳しく審査することと費用がかかることとは別に考えなければならない。
  • 認証スキームは信頼性がすべて。内の論理ではなく、外からの目にどう映っているか、二重、三重の慎重さが求められる。
  • 審査機関の審査能力、審査員の資質についてもっと深く考えた方が良い。
  • 審査機関の審査結果の最終判定の前に専門家の「レビュー」を入れるべきではないか?

いただいたご意見は真摯に受け止め、MELの運営に反映させ進化につなげます。

6.認証取得のための講習会

毎年のことですが、講習会開催が期末に集中します。特に今年は、GSSIに承認されたことで関心が高まり、2月は6回の開催となりました。

  • 2月 4日:愛知県師崎商工会と共催でシラスの漁業および流通加工関係者
  • 2月 6日:横浜市(開設者)主催の横浜中央市場関係者
  • 2月 13日:長崎県庁共催の行政、漁業、養殖、流通加工関係者
  • 2月 18日:大阪中央市場卸売会社主催の近畿水産物市場(大阪本場、東部、北部、京都、神戸、姫路)の卸および仲卸関係者
  • 2月 19日:シーフードショー大阪のセミナーでの講習会
  • 2月 25日:宮崎県漁業協同組合連合会との共催で、宮崎県かつお・まぐろ漁業者協会の漁業者

先月号でご報告しました通り、各地のニーズと出席者の顔ぶれに合わせきめ細かいメニューを心がけています。
愛知県師崎商工会のケースは商工会のご尽力で、漁業者にも多く参加いただき、流通加工事業者と共に、新MELでのサプライチェーン確立に手応えを感じました。長崎は3年掛かって、行政にお骨折りいただき漸く実現しました。認証取得に向け前進することを期待します。有り難うございました。
大阪中央市場も2025年の万博開催を視野に入れた動きであります。他に和歌山県の加太漁協と地域の皆様で地元の資源を活かした地域おこしの一環として「加太まちづくり株式会社」が認証取得に取り組みたいと参加され、前向きさがとても印象的でした。これからご一緒に取り組んで参ります。
宮崎県南郷町で開催された近海かつお一本釣りの皆様との説明会は、MELとして大いに考えさせられました。この会は、昨年12月に行われた「全国近海かつお漁業問題検討会」において出席者から問題提起された「この10年間は一体何だった?」(全国かつお・まぐろ漁業者協会として2010年12月にMEL漁業認証を取得、2015年に更新)という漁業者の皆様の意識と、2020年12月に到来する更新期にどう対応するかを判断するためのMELの現状説明を聞くという位置づけでした。全国近海かつお・まぐろ漁業協会と宮崎かつお・まぐろ漁業者協会様のお骨折りで開催されましたが、日南市漁協、南郷漁協、外浦漁協の3漁協の幹部と所属漁船の船主等計25名が出席され関心の高さが伺われました。
質疑応答では、「認証取得以来審査費用を払うだけで、何もしてもらえなかった」と言う不満が強く表明されたことに対し、MELからはGSSIに承認され世界が認める新MELをテコに、漁業者から、産地市場仲買、消費地市場大卸・仲卸、小売・外食の皆様に認証を取得いただき「MEL認証付生鮮かつお」のサプライチェーン構築のための協働を提案しました。漁業者の皆様の受け止めは今までの無駄な10年が尾を引き実に厳しかった。更に東沖で操業する中型船と西沖で操業する小型船の水揚げ港が違う等の内部事情もあり、MELにとって難しい課題と思われますが、漁業はもちろん、流通を担われる皆様の力をお借りして江戸時代から日本の季節を彩って来たかつおの食文化の持続に貢献したいと願っています。

7.審査機関の複数化について

審査機関複数化については、海生研様の取り組みが順調に進んでいます。
審査員の養成は大日本水産会が開催する審査員研修に参加され、既に8名以上の審査員補有資格者がおり、日水資の現地審査に加わり必要な経験を積むことで審査員に昇格予定です。一方、JABの認定へは4月末から5月に申請予定で、現在、JAB審査の前に必要なマネジメントシステム確認のための実施に取り組んでおられます。
実際にMELの第2の審査機関として動き出せるまでには、多くのプロセスがありますが、一歩一歩着実に進めていただく様お願いをしております。

8.イベント

(1)小学校での出張授業

2月17に東京の台東区立蔵前小学校で5年生80人に「水産エコラベル」の授業をしました。この授業はMELのアドバイザリーボードメンバーで、「ウーマンズフォーラム魚」の代表白石ユリ子様が進めておられるプロジェクトである「われは海の子2019」の一環で、2月15~16日地域の小学校の代表グループが白石様らと八丈島訪問(旧MEL漁業認証取得済)、17日蔵前小学校で授業、22日複数の小学校から作文等で選ばれた約20人が豊洲市場見学、そして3月8日に発表会という流れになっている大がかりな企画です。
授業当日は、大変盛り上がった雰囲気で、1時間目と2時間目たっぷりと「持続可能な水産業と水産エコラベル」話に付き合っていただきました。MELマークをつけて流通しておられる東町漁協様のブリのフィーレを見本で届けていただき、皆でさわって大喜びでした。
因みに当日の給食は八丈島の「ナメモンガラ」が提供されたそうです。
ほんの小さな一歩ですが、日本で「水産エコラベル」を消費者の皆さんに身近に感じていただくため、機会があれば今後も続けたいと考えています。

(2)シーフードショー大阪
2月19日~20日にATCホールで開催されたシーフードショー大阪に出展すると共に同時開催セミナーで認証取得のための講習会を開催しました。
シーフードショーはMELの説明コーナーと認証取得事業者のプレゼンコーナーを設け、MELコーナーではGSSIの承認がインパクトとなり来訪者で賑わいました。特に「認証取得のためのガイド」を欲しいと希望される方が多かったことは、関西でもMEL認証取得の時代が一歩前に動いたことを感じました。
プレゼンコーナーでは、愛南漁協様、ヨンキュウ様、黒瀬水産様、金子産業様(当日になってコロナウィルス対応リスクマネジメントのため急遽入場を差し控え)に参加をいただきました。愛南漁協様、ヨンキュウ様、黒瀬水産様は大日本水産会がセットした海外バイヤーとのマッチング商談会にも参加され、まだまだこれからではありますが、今後に向け有意義な機会であったとの感想でした。


MELも先方からのお申し出により、アメリカのニューヨークにあるバイヤーCCL社の社長と面談をしました。現在CCL社の取り扱いではブリは第6位の商品であるが、エコラベル認証がつけば容易に2倍になるとの意見でした。

(3)在タイ国日本大使主催の天皇誕生日祝賀レセプション
昨年11月開催の「MEL Week in Bangkok」の流れで、2月20日に開催された天皇誕生日レセプションにMELブース出展を大使館から要請されました。
事務局の田村が現地に出張し対応しましたが、認証取得者は北海道漁連様(イクラ)、東町漁協様(ブリ)、ヨンキュウ様(マダイ)、金子産業様(クロマグロ)に商品提供をいただき、現地で寿司にして振る舞いました。タイの王室や政府関係者を始めとした1,500人超が招かれる大イベントで、MEL認証の商品は大いに注目を浴び、当初準備していた600食から急遽800食へと増やして参加者へMEL認証水産物の寿司を紹介しました。商品提供いただいた皆様には深謝申し上げるとともに、今後タイ向けの輸出へと繋がることが期待されます。

 

落ち着かない世相ですが、MELにとっては忙しかっただけ、より多くの皆様との接点があり、極めて充実した月でした。その分長いニュースレターになってしまいましたことお許しください。常勤スタッフたった3人の小さな組織ですが、今後とも、関係の皆様のご指導をいただきながら、現場目線で社会、消費者、事業者のお役に立てる活動を続けます。ご支援をよろしくお願いします。
新型コロナウィルスの広がりの深刻化と共に花粉が飛ぶ季節、皆様のご自愛をお祈り申し上げます。

以上