MELニュース2020年 1月 第22号

皆様、明けましておめでとうございます。
日本人にとって、年が改まるということは特別な節目であります。大きなうねりが迫る2020年の幕が開きました。皆様にとってチャンスとリスクが共存する年が予感されます。MELもまだまだ生みの苦しみが続きますが、皆様とご一緒に一歩一歩努力が結果に結びつく様行動したいと願っています。
本年もどうかよろしくお願い申し上げます。

1.GSSI承認関連

GSSIの承認は日本の社会から概ね好意的に受け止めていただけました。
多くの皆様の年頭の言葉にも取り上げられ、2020年は正に水産エコラベルが日本で市民権を得る時代への力強い流れが出来上る年となることを願っております。
MEL協議会としては、GSSI承認後の体制固めに軸足を移しました。
GSSIの理事会からの承認に当たって求められた条件は2つあります。
 ① ロゴマーク貼付における旧認証と新認証の明確な区分
 ② 12ケ月後にGSSIによるMOCA(Monitoring of Continued Alignment=承認の維持審査)を行う
① については、認証取得者の負担を極力少なくする様GSSI事務局と協議
を進めており、課題は製品在庫、包材の在庫にどう対応するかであります。
認証取得者の皆様にはご説明の文書を既にお届けし、併せてロゴつきの製商
品、包材の在庫の報告をお願いしている(2020年1月31日までに)ところで
ありますが、途中経過として断片的に伺っている情報ではかなりのボリュー
ムになりそうです。GSSIの条件を満たし、なおかつ認証取得者の負担を極力
小さくする方法に合意することを最優先で取組みます。
② については、MOCAにおけるGSSIの審査員の審査結果はパブコメを求
めることが規定されており、承認申請時のプロセスと同じことが繰り返され、事務局および認証機関はじめ多くの関係者の業務が益々増えることが危惧されます。これから1年の活動の精度を更に高め、認証取得者の皆様とともに、しっかりとMOCAに備える準備をいたします。

2.認証審査の状況

今月の認証件数は5件(漁業3、CoC 2)になる予定です。累計で、漁業5、養殖12、CoC 13の計30件になります。時間が掛かっておりました由比港漁協様のさくらえび2艘船引き網漁業がようやく認証される段階にあると聞いております。長期間にわたり対応いただいた関係者の皆様に敬意を表します。
なかなか認証が取れないことにいらだちを憶えておられる申請者が多くいらっしゃると思います。先月末の時点で、審査が終了し認証決定待ちが21件(養殖8、CoC 13)あります。1月の審査実施は6件(養殖1、CoC 5)ですから、MELニュースでも繰り返しご報告しております審査の遅れは、種々対策が打たれているにもかかわらず、改善のスピードは未だ遅いと言わざるを得ません。これから、審査員研修、講習会等のスケジュールが詰まっていますが、何とかスピードアップ出来る様頑張ります。
MELにとっても、日水資にとっても初めてとなる小売業の審査が始まりました。先月申請が受理されたイトーヨーカ堂様の審査は、本部および店舗にて実施されています。スキームオーナーとして、審査機関および申請者と連携を図りながら、MELとして、今後の小売業のCoC審査の進め方につき、実態に即した認証規格の運用とするための生きた情報を収集しております。
日本生協連様のCoC認証審査(本部および流通センター)が実施されました。日本生協連様のPBの主力商品の一つである、しらす(カタクチイワシ)の個包装品をMEL認証商品とするため、加工事業者および日本生協連がCoC認証の取得を進めておられ、その第一歩が今回の審査です。また、漁業者のうち大阪府資源管理船引き委員会様と紀伊水道中央機船船引き組合様の認証プロセスが進んでいます。
MEL認証はサプライチェーン全体で取得いただくことで、社会のお役に立てる仕組みですから、消費者接点を担っておられる小売業の認証取得が進むことは大きな意味を持ちます。今後の審査のプロセスが順調に進むことを願っています。

3.審査員研修関係

MELにとって課題であります新規審査員養成のための研修は、第3回をホームページ等でご案内しております通り1月27~29日に開催します。
前回および前々回の実績を踏まえ、一段と質の高いカリキュラムを組ませていただきました。今回の参加者は、24名となり、引き続き関心の高い状態です。応募いただいている皆様の属性は、個人でのお申込みが約半数、その他、調査研究関係の民間企業、新規審査機関を目指しておられる機関等からとなっております。審査員研修を終了し審査員補の資格をお持ちの方が48名、その中で審査員資格を得られた方が8名出ております。出来るだけ早期に審査員への昇格を実現し、審査体制が一段と充実する様、引き続き関係者のご支援、ご協力を得て取り進めます。

4.認証取得のための講習会

今月後半から2月向けて講習会が各地で設定されております。是非多くの皆様に参加いただく様お願いします。
 ① 1月28日 豊洲仲卸組合主催、CoC認証取得準備中の仲卸事業者
 ② 2月  4日 愛知県師崎商工会主催、愛知県船引き網漁業者と加工事業者
 ③ 2月  6日 横浜市主催、横浜市場関係者
 ④ 2月13日 長崎県主催、長崎県の漁業、養殖、流通加工関係者
 ⑤ 2月19日 大阪、大日本水産会主催のシーフードショーのサイドイベントとして開催
認証取得のための講習会も回を重ねるごとに成熟しており、内容も主催される皆様のご要望に合わせる形式が増えています。即ち従来の講習会スタイル(大日本水産会主催、MELおよび日水資が講演)の一般論を講義するパターンから、
 ・認証取得のための具体的準備
 ・旧認証から新認証への移行準備
 ・認証をどのように活用するか?成功事例の共有
等、具体論を議論する場に変わって行こうとしています。しかも、行政が主催していただくケースが出ていることは、事業者にとって、取得の意味が大きくなると思われます。
今後、主催者団体+団体所属メンバー+行政+研究機関+MEL+必用に応じ審査機関あるいはコンサルティング機関の組み合わせで実施出来ると、より深みのある講習会になると感じています。
昨年の福岡での大中巻網事業者協議会、東京での近海かつお漁業問題研究会はこの形式で行われ、より広い視野で資源、漁業、認証を考えることが出来ました。
今後とも皆様にお役立ちできる様企画しますのでよろしくお願い申し上げます。また皆様からご希望があればMEL事務局にご一報下さい。

5.トピックス

昨年12月に開催しました第2回MELワークショップでもご紹介させていただきました三重県の鳥羽磯部漁協の和具浦支所によるワカメの養殖認証取得は、その後実務が前向きに動き出したとの漁協監事をお務めの佐藤力生様からのご連絡をうれしく受け取りました。即ち
 ・MELのロゴが表示できることになり、和具浦ワカメの評価が高まると同時に、
  長年の課題であった共販への一本化が実現することになった。
 ・共販の入札には大手の企業が参加することになった。
 ・ボランティアで和具浦ワカメの作業を手伝う会「結の会」の知名度が
  高まり希望者増加と共に、会の求心力が強くなった。
等々であります。
認証の発効は昨年の7月26日付けでしたから、関係者の行動の速さに刮目しています。三重県鳥羽市のすぐ沖にある人口2600人の答志島は、きれいな海と豊かな恵みを古来「腹八分目」の精神で守り、利用して来られた。その皆さんが、たまたま島を訪れた観光客から示唆された「水産エコラベル」の時代が来ると言う話が発端となって、自慢のワカメでMEL認証を取得する取り組みが生まれた。認証証書授与式には漁業関係者だけでなく、ワカメ生産の手伝いしておられるボランティア団体「結の会」のメンバーも参加され、かつてない盛り上がりとなりました。日本には、行政からの特別な援助があるわけでもなく、全く自分達の力だけでこんなことをごく自然体で実践されている地域と人々が居られることに感動を覚えました。正にMELが理想とする姿です。
認証取得から半年で様変わりとなりましたという佐藤様のご連絡に事務局一同大いに勇気づけられています。日本に次々と和具浦モデルが生まれることを心から願っています。

「結の会」のホームページはhttp://www.yuitobaisobe.com/ からご覧になれます。

もう一つ、MELニュース11月号でご報告しましたタイ国バンコックで開催された「MEL Week in Bangkok」の流れで、在タイ日本大使が主催される天皇誕生日祝賀レセプション(2020年2月20日開催)にMELの出展のご要請があり対応を準備しています。
3000名以上の来賓が出席される大行事と承っており、認証取得事業者の皆様と共に日本発のエコラベルMELと認証水産物のご紹介をします。
技術部長の田村が担当しますので、情報あるいは参加を希望される方は田村にコンタクトして下さい。

20191127日、日本大使公邸で開催された現地の小売り外食事業者とメディアを対象にしたMEL認証品の試食会。北海道漁連様の秋サケ、金子産業様の本マグロ、東町漁協様のブリ、ヨンキュウ様のマダイが試食に供され大好評であった。

気象庁の長期予報の通り、各地とも暖冬気味に推移しており、雪不足がスキー場や各地の冬イベントに厳しい対応を強いています。また、寒気の流れ込みがないため天然氷が生産出来ない等の報道がされています。
経験則では、積雪不足は春以降に水不足となり農業から水産まで広く影響を与えますし、また、オホーツク海の流氷の多寡も漁を左右します。
この様な中で、ステークホルダーに気候変動を加えるべきという声が高まっています。そもそも、ステークホルダーとはご承知の通り経済用語で、社会、株主、経営者、従業員、顧客、取引先、競合、金融、行政、NGO等の幅広い関係者を指しますが、これに気候変動を加えようと言う話です。水産業の様に自然を相手にしている産業にとっては当然と言えるかもしれません。
今年こそは災害の少ない、事業に集中出来る年となることを皆様と共に祈りたいと思います。

以上