
7年以上にわたり続いた黒潮大蛇行が消えてから1年余が経過しました。多様な日本の海に起きる変化に期待を込め、時サケやカツオ、シラスの漁模様を気にかけながら「春は行く」という心境です。一方、世界的にはエルニーニョの発生が報じられており、これまた気候変動への影響が心配されるところです。
ホルムズ海峡閉鎖によるサプライチェーンの変調があり、事業者の皆様にとり燃料、漁具、包材等に関し難しい環境が続いていますが頑張って下さい。戦争が戦争を引き起こす世界の現実が経済に及ぼす更なる変調に備えるためにも。
1.国際標準化
4月22日にバルセロナでのSeafood EXPO GlobalにあわせGSSIスキームオーナー会議が開催されました。MEL協議会からは加藤事務局長が出席しました。GSSIからは6月1日に正式に就任と発表されている新事務局長のガート・レ・ルー氏が出席し全体を仕切りました。内容については、加藤事務局長の出張報告を別途掲載してありますが、レ・ルー氏はGSSI理事としての経験を活かして積極的に会議をリードされたとのことです。
併せてCSIとのCoC認証相互承認の打ち合せを行いましたが、こちらは残念ながら期待した前進はありませんでしたが引き続き交渉を続けます。
2.認証発効関連
今月の認証発効は残念ながら0件でした。
3.認証取得者からの報告
銀サケの水揚げが最盛期を迎えています。4月に社名を弓ヶ浜水産(株)から(株)ニッスイサーモン変更され、事業所も境港から佐渡、大槌、陸前高田、大船渡へと拡げておられるニッスイサーモン様の鶴岡 比呂志社長に近況の報告をお願いしました。
「三陸の豊かな海とみらいをまもる」
株式会社ニッスイサーモン
代表取締役社長 鶴岡比呂志
2026年4月1日、私たちは社名を「弓ヶ浜水産」から「ニッスイサーモン」へ変更しました。ニッスイグループの国内サーモン養殖事業は、2011年東日本大震災で大きな被害を受け、慣れ親しんだ三陸(宮城県)の海を離れ、境港(鳥取県)で再スタート、その後、私たちは佐渡(新潟県)に続き、2020年には大槌(岩手県)に進出、以降、陸前高田(岩手県)、大船渡(岩手)にも拠点を拡大、再び三陸にも戻ることができました。
このたびの社名変更は、ニッスイブランドを冠した会社名として、グループとしての私たちの役割をより明確にし、国内における持続可能なサーモン供給体制の構築を一層進めていく決意を表したものになります。ニッスイグループは、養殖事業を重要な成長領域の一つとしていますが、その中でも世界的に需要が拡大しているサーモンは、養殖事業の中核を担う分野として位置づけ、事業基盤の強化に取り組んでいる所です。ニッスイグループの長期ビジョン「GOOD FOODS 2030」では、サステナビリティを主要施策に位置付けており、持続可能な養殖事業の推進に力を入れている所です。

私たちの国内サーモン養殖事業は、ニッスイグループにおける代表的な取り組みの一つであり、この事業拡大を更に加速させ、持続可能な水産業の発展と食の安定供給に貢献していきたいと考えております。
その様な中で、私たちは境港に続いて、2026年4月20日大槌の吉里吉里(きりきり)漁場においてギンザケの養殖MEL認証を取得することができました。
MEL認証は国際的に認められている日本発の水産エコラベル認証制度であり、その認証取得は、私たちが水産資源の持続性や環境に配慮して養殖をしていることを広く社会にご理解を頂くことに大きく貢献してくれるものと捉えています。
私たちが操業する大槌の吉里吉里漁場は、三陸沿岸のワカメ養殖に広く種苗を供給するワカメの種付け拠点でもあり、ウニやアワビ採捕などの採介藻漁業も盛んに行われています。私たちは、将来に渡って豊かな海を守りながら、地域の未来を担っていく責務があると考えております。その取り組みの一つとして、2024年に海業振興モデル地区に指定をされた吉里吉里漁港の「海業」の取り組みにも参加しています。その中の一つの「大槌町藻場再生活動」においては、地元の漁業者やボランティアダイバーなどと共に当社の潜水士や職員がコンブの種苗を海中に設置し、新たな藻場の造成を目指しています。藻場造成の活動は、海洋環境の保全や漁業資源の健全性にくわえて、「地域社会のみらい」にもつながっていくものになるのではないかと考えております。
大槌町では、この度の林野火災にて1,633haが焼失する大きな被害が発生をしました。当社の現地事務所は避難対象地区となり事務所への出勤は停止せざるを得ない状況になりましたが、地域の方々のご協力もあり操業には支障をきたすことなく、飼育管理を継続することができました。全国から集まった多くの消防隊や自衛隊の方々の献身的な働きにより、5月2日には無事に鎮圧宣言が発出され、日常を取り戻すことができました。
来る6月14日には「第6回岩手大槌サーモン祭り」が無事に開催をされる予定です。私たちも「境港、佐渡、岩手のサーモン食べ比べ」のブースも出展をさせて頂く予定です。お近くにお越しの方がいらっしゃいましたら、是非お立ち寄りを頂ければと思っております。

志をともにするMEL会員の皆様と共に、わが国水産業の「みらい」を一緒につくっていきたいと思っております。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
鶴岡社長、水揚げ最盛期のお忙しい中誠に有難うございました。水産業を含め、日本の産業の外に向いていた流れが変る予感がします。
過日、境港の皆様にMEL認証を活かした町起こしの提案をさせていただきました。三陸でも、認証取得者、地域の皆様と力を合わせ日本の水産業の元気を取り戻すモデルをつくれることを願っています。
4.関係者のコラム
東京海洋大学の中原 尚知教授にお願いしておりますCoC認証シリーズは、リテール部門に関して小谷フードビジネス代表(元イトーヨーカ堂)の小谷一彦様に担当いただきました。
「魚食視点からのMEL認証」
小谷フードビジネス 代表 小谷 一彦

消費者が生鮮魚や製品化された魚を購入できる小売店、魚を食べることができる飲食店は多岐にわたります。総合スーパー、食品スーパー、鮮魚専門店チェーン、街の鮮魚商、道の駅、ECモール、ネット通販、移動販売、コンビニ、ドラックストア、ディスカウントストアなど。消費者は、様々な店舗で、品揃えは異なりますが、生鮮魚、加工された魚介、完調品の製品を目にすることができます。飲食業においても、回転寿司チェーンなど、身近に魚を食べられる店舗が多く存在しています。
<リテールがおかれている環境>
生鮮魚の取り扱いが多い、食品スーパーを例にすると、食品スーパーとは消費者がいつでも生鮮・惣菜・日配・グロッサリーの商品を購入できる場であり、店舗はこの期待に応えられるように、品揃え、利便性、サービスに磨きをかけています。
業態を超えての競合は増え続け、経営的には、近年の物価上昇から、多くが原材料費とともに、労務費・光熱費・物流費の上昇によりコストが増加しており、価格転嫁の難しさが続いています。消費者の節約志向を受け、買い上げ点数の減少、メリハリ消費、価格の二極化が顕著となっています。消費者は、スーパーへ魚だけを買いに来ているわけではありません。
魚食文化の持続性を考えるには、マーケットの変化に応じるとともに、魚だけでなく、肉や野菜、総菜を含めた食品全体からの視野が必要であり、消費者に継続して『さかなを選んでもらう』ための魅力づくりと発信が必要です。
<消費者心理からのMEL>
マリン・エコラベル・ジャパン協議会(MEL協議会)、2016年12月の設立から、今年で10年目。MEL関係者の皆様のご尽力により、水産業や水産物を扱う小売業の方々への認知度は高いといえます。
一方、消費者への浸透度となると、MELを知っている消費者は限られています。この10年目を節目にして、次なるステージは、MELの消費者への認知度促進ではないでしょうか。
2021年、国内で初めて、飲食店としてCoC認証を取得した横浜市南部市場内にある『横濱屋本舗食堂』。同店舗では、認証された魚介類を使用しての、海鮮丼や刺身定食を提供しています。

また、お客さんがメニューをみて、MELという文字を目にした際、MELとは?との質問に答えられるよう従業員に周知がされています。
MELの海鮮丼は同店舗の一番の売れ筋となっています。もっとも、お客さんが認証された素材を使っている海鮮丼だから選択しているとは限りません。但し後々、持続可能な漁業・養殖業者の魚を使っての海鮮丼であることを知ったとき、多くの喫食者に共感して貰えるはずです。その前提は、やはり美味しいこと。美味しいことへの価値訴求が必要です。魚食文化を持つ、日本の消費者には美味しさを、想像できる価値訴求があっても良いのではないでしょうか。さらに、鮮度管理という指標も日本発らしいエコラベル認証として魅力に繋がります。活〆、一本釣りなど、消費者に鮮度感を感じさせます。
<水産物の価値訴求とは>
認証されていない水産物と混合させないために、CoC認証された水産売場を持つスーパーでは、店内の作業場で加工した認証魚種に、MELのロゴマーク入りシールを貼り販売しています。
食品スーパーの水産売場に陳列されている、裸売りされている丸魚以外、ほぼ全ての商品に何らかのシールが貼られているといっても過言ではありません。シールを貼るという行為は、人の手がかかります。売場では毎日、数十種のシールを間違わないよう個々の商品へ貼り付けが行われています。他のシールも、商品の差別化やアピールをするために貼られています。
このような中、MELのロゴシールだけで、認証された魚であることを、消費者に気づいて貰うのは、なかなか難しいことです。店頭での媒体物での取り付けもひとつですが、明らかに目に付く媒体のサイズでないと、消費者の目にとまらないでしょう。CoC認証がされているスーパーでは、チラシへMEL認証商品であることを掲載しているところもあります。さらに対象魚種に向けては、機能性表示食品であることや漁法を謳い、消費者の目にとまるよう差別化をはかっています。また、情報発信に向けて情報が多く格納できる二次元コードの活用もみられます。
<MELを知ってもらう>
消費者に共感をもってMELロゴマークのついた商品を選んで貰うには、小売・飲食の店頭だけでの発信では限界があります。SNSからの発信を始め、学校での学び、そして水産以外の企業に向けても、MELに関心をもって貰うことも必要ではないでしょうか。
例えば、水産庁の魚食普及推進に向けて制定した、さかなの日賛同メンバーへの周知。このさかなの日賛同企業は1100を超えていると聞いています。賛同企業は、水産業界の企業、団体だけでなく、魚食普及・食育・水産物の消費拡大に関心を持たれています。異業界企業と連携し、MELの周知拡大をはかるのもひとつではないでしょうか。周知されることにより、店頭におかれている媒体、商品へ目がいくことでしょう。
水産物に向けての価値とは、美味しい、鮮度・品質が良い、そして価格・経済性です。これらは、消費者が魚を手にとる前提となります。水産売場を強化する食品スーパーはここ数年増えています。理由は精肉と比べて、産地・漁法は多岐にわたり、調達の仕方、こだわりなどから、品揃えも価格も組み立て方によって差別化がはかれます。認証された魚の周知に向けて、この切り口があっても良いのではと考えます。
魚は良質なタンパク質源であり、子供から高齢者まで幅広い世代に適した食品として知られています。コロナ禍以降、健康志向はさらに高まっています。少子高齢化、共働きは時代の趨勢であり、総菜売場では、時短・簡便・個食に向けた品揃えの充実をはかっています。多くの水産売場では、保存性が効く商品に向けて冷凍ケースの設置が増えています。現状、CoC認証を取得している小売では、刺身・切身を中心とした品揃えとなっています。
認証されていない小売でもMELの認証商品が品揃えできるよう、認証事業者による、MELの製品化が促進されても良いのではないでしょうか。消費者目線での魅力的な商品設計をはかる。認証素材を使っての、時短・簡便・保存性のある認証された冷凍製品等の充実により、食品スーパーだけでなく、ホームセンター・ドラックストア等、食品スーパー以外のリテールへの提案も可能になるのではないでしょうか。またスーパーの総菜売場でのCoC認証が進むことにより、認証魚種による寿司・調理品へ広げられます。
漁業・養殖・流通加工の各認証事業者との連携をはかり、認証事業者の強みを共有し、取組み・商品の発信。価値創出のコーディネーターという役割があることにより、産地と製販が一体になり、MELの付加価値を磨き続けることができるのではと考えます。
小谷様様々なご示唆をいただき有難うございました。日本の小売業様にはMEL CoC認証取得をお願いしています。認証取得の効果を実現するために、引続き小谷様の現場Watchからのご指導をお願い申上げます。
5.加藤事務局長のバルセロナ出張報告
バルセロナのシーフードEXPOグローバルと同時開催されたGSSIのスキームオーナー会議に加藤事務局長が出席しました。会議では6月に就任が決まっている南アフリカ出身のガート・レ・ルーGSSI事務局長が今後5年間の運営方針やベンチマークツールの見直し等に関する説明を行いました。ベンチマーキングの信頼性の向上、複数参加による会員体制の強化、世界的な影響力の拡大を3つの重点項目とする方針を示しました。GSSIは3つの重点項目の強化を通じて、水産物の持続可能性の強化を目指す。また、今年中にベンチマークツールの見直しを行う予定なので、MEL協議会からは同種同属タンパク源の配合飼料への使用許可や加工残渣の利用推進などの要望を伝えました。
また、バルセロナでサーティファイド・シーフード・インターナショナル(CSI)とのCoC相互承認に関する話し合いも行いました。MEL協議会からは、CoCに関しては森林認証のPEFCのような国際相互承認制度を目指したいことを伝え、CSIからは、まずはMELとCSIのCoC相互承認を実現させ、その後国際相互承認に発展させたいとの要望が表明されました。
6.秋本技術課長がICFAの総会ならびにICFA-FAOの情報交換会に出席しました
4月27日にローマで開催されたICFAの年次総会に大日本水産会 枝元会長の随員としてMEL秋本課長が参加し、翌28日のICFA-FAOの情報交換会においてMELの意見を発信しました。
認証制度の普及促進が議論された際に、水産エコラベルの課題の一つとして、サプライチェーンを通じてCoC認証が繋がらなければならず、輸出の際にCoCが途切れたり、複数の認証を取得する重複コストが負担となっている現状について説明しました。この課題に対して、CoCの相互承認や共通化を進めることで事業者のコストを削減するのが望ましいと考え方を提案し、スペインなどから、「GSSIとFAOで連携を深めて欲しい」と賛同する意見がありました。
また、FAOから水産系副産物の有効活用の重要性について議論があった際には、日本では都市残渣を回収し魚粉を生産する循環的な利用が広く行われている点を紹介しました。一方で、水産エコラベル認証の観点からすると、残渣原料のトレーサビリティや、同魚種由来の原料を飼料として使用することを禁止するFAOテクニカルガイドラインの規定がネックとなり、サステナブルな認証の枠組に取り込むことができないとする問題点を指摘しました。適切な資源の有効活用が世界のマーケットで受け入れられるよう、科学的な根拠に基づいたFAOの積極的な関与を希望することを伝えました。
7.FAO主催の「エコラベルと小規模漁業」のワークショップに加藤事局長がパネリストとして登壇しました
5月6, 7, 13日にWeb開催されましたFAOのワークショップの初日、「エコラベルと小規模漁業」のセッションのパネリストとして加藤事務局長がMSCのMs. Laura Rodriguez、GSSIのMr. Gert Le Rouxとともに招かれました。加藤事務局長からはMELの現状と、日本の多様な魚種への対応のため産業と地方行政ならびに研究機関・大学の協働の重要性、また小規模漁業を束ねている漁組、漁連の存在を説明しました。
MSCからはFIPやSSFへの取り組みを、GSSIからはSSFに対するGSSIの立ち位置の説明が行われました。他のセッションの登壇者やWeb参加者からも質問や意見が多数あり、世界の眼は、社会的責任(人権問題等)とともに世界の漁獲量の4割強を占める小規模漁業に向いていることを強く印象づけました。
最終日の意見交換では水産庁加工流通課の吉川課長補佐も登壇され、日本の沿岸資源について、サイズ規制や漁場規制等、関係漁業者間の話し合いによる自主的な管理も組み合わせて実施していることを説明しました。日本を含む小規模漁業国の漁業者が認証を十分に取得できないため、西欧諸国へ水産物を輸出できず、これらの認証制度が事実上の貿易障壁となっており、小規模漁業の実態に適合した制度運用が必要であることを訴えました。
8.MEL CoC認証規格(Ver.3.0)に対する意見公募が終了しました
CoC認証規格改訂に対するパブリックコメント募集が5月15日で終了しました。いただきましたご意見は2団体から計14件でした。5月18日開催の規格委員会で検討いただき、理事会の承認を得て、6月17日開催予定の通常総会に諮る準備をしています。
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某全国紙にイカナゴに関する記事がありました。
「地元の魚の漁の解禁に季節の訪れを感じる。食卓がいつもより少し賑やかになる。地域だけで親しまれている「小魚」には暮らしに密着した味がある。一方で水産資源の減少に直面し、影響も受けている。海に囲まれた列島ならではの楽しみを手放したくない」。関西生まれの編集子にとり、今年はイカナゴのくぎ煮は残念ながらパスでした。
5月にもかかわらず、全国で真夏日の観測が報じられていますが、MEL事務局は通常総会開催の準備に追われています。今年は認証規格承認、理事改選等の議題があり、何かとお手数をお掛けしますが皆様のご協力の程よろしくお願いします。
以上