
暦の上ではとっくに春。各地で「春一番」が観測されるていますが世界の情勢は厳冬のままで、不確実な時代の混乱の渦中にある様に見えます。
2月3日に発表された2025年の日本の水産物の輸出は、4231億円で前年を17.2%上回り過去最高となりました。アメリカの関税問題、中国の台湾有事発言への反発等の逆風の中、世界の人々を魅了しているホタテ貝とブリの活躍が目立ちました。頑張れ!日本の水産と水産物。
1.国際標準化関連
当初の予定では、GSSIの第1四半期の理事会はは3月のボストン開催でセットされていましたが、4月のバルセロナで年次スキームオーナー会議と併せ行うことに変更されました。
MEL協議会からは加藤事務局長が参加する準備をしています。現状では、ボストンではCSIとの間でCSCと締結しているCoC認証の相互承認の継承の詰めを行うこと、およびバルセロナではスキームオーナー会議でMELが強く訴え続けているGSSIベンチマークツールにおける「養殖用の給餌に同種・同属の餌を禁止する」の改訂について、CSI等外国スキームの賛同を得て一層の働きかけに取組みます。
2.認証発効および終了関連
今月の認証発効はCoC 1件でした。
2月25-26日開催されますシーフードショー大阪の会場で実施予定の認証証書授与式は、出席希望者が少ないため中止することになりました。次回はジャパンインターナショナルシーフードショー(東京)に合わせ開催の予定です。認証件数について、認証発効と停止・休止の最新の状況をまとめました。


3.認証取得者からのご報告
MELニュース12月号でご報告しましたが、鹿屋市漁協様のMEL認証付きカンパチがオーストラリアに初輸出された機会に皆倉 貢組合長に状況のご報告をお願いしました。
「鹿屋市漁業協同組合MEL認証の取得、活用について」
鹿屋市漁業協同組合
代表理事 組合長 皆倉 貢

鹿屋市漁協においては、カンパチを中心にヒラマサ・ブリの養殖業を営んできた。年間の取扱は生産量3,000トン、額としては45億円となっている。カンパチについては、平成19年度の鹿児島県のブランド魚として認定を受けており、ヒラマサ・ブリについてもその後養殖に取り組んできた。
養殖にあたっては、従来から求められてきた安心・安全の取組はもちろんのこと、美味しさを追求しながら、給餌方法や餌の種類等についても工夫を継続して行ってきた。
MEL認証に取組むきっかけは、東京オリンピック・パラリンピックに食材として提供できないかということで始まった。また、養殖業は競争環境にあることから、「かのやカンパチ」を主体としてブリ・ヒラマサなど養殖魚の安心・安全、旨さをもっとアピールしていきたい、付加価値の向上と販売促進に繋げたい、という思いも背景にあった。
そのような中で、2020年2月にカンパチ・ブリ・ヒラマサの養殖MEL認証を取得することができ、認証取得により海外へのアピールが可能となった。加工場を整備し、ニーズに合った販売を行っていきたいということもあり、加工場を新設し、CoC認証も取得した。こうした輸出促進に繋げる環境を整えることで、今後も、特にカンパチの輸出に一層力を入れていきたい。

輸出事業については、本組合はカンパチを主力としているため、ブリ輸出が先行する中で苦戦を強いられている。鹿児島県及び鹿屋市の支援を頂き、台湾・タイなどへの輸出を単発ながら毎年実施しているものの、令和6年度の輸出額は100万円程度にとどまってきた。
こうした取り組みの中、オーストラリアにおいて強力な販体制を持つ非日系の商社から、「MEL認証」「冷凍製品」を条件としたオーダーがあり、商談を進める中「かのやカンパチ」の採用を決定していただいた。
オーストラリアは米国以外で購買力がある数少ない市場の1つであり、多文化国家であるためさまざまな食品が扱われている。これまでは豪州養殖業者がキングフィッシュ(ブリ類の総称、主にヒラマサ)を生産し、自国消費や他国輸出向けに販売していたため、日本のブリ類が参入するハードルが高かった。しかし、昨今の環境変化(高水温)により生産が不安定化しており、ブリ類の需要が高まっている。また、購買層における環境や持続可能性への意識が高く、MEL等の認証への関心が高いため、そのことが今回の商談成立につながっている。
令和7年度12月に約5トンの輸出が実現し、8年3月には現地にて、量販店・水産仲卸等への更なる商談も予定している。MEL認証魚「かのやカンパチ」の継続的な取引が見込まれる。今回のオーストラリア向け輸出は、MEL認証がなければ成立しえなかったと感じており、今後もMEL認証の継続と活用を図っていきたい。
皆倉組合長有難うございました。オーストラリアへの「かのやカンパチ」の初輸出お目出とうございます。MEL認証がお役に立てていることはスキームオーナーとして嬉しい限りです。これからもご一緒に輸出が更に拡大する様頑張りましょう。
4.関係者のコラム
今月は全漁連様の三浦 秀樹常務に寄稿を掲載させていただきました。編集の都合で、執筆(2025年8月)と掲載(2026年2月)が時期ずれして、数字等が最新ではないことをお詫びします。
「MEL認証を活用して世界一の魚を世界に届けていく」
全国漁業組合連合会
常務理事 三浦 秀樹
- 日本の漁業の持つポテンシャル
日本発のエコラベルであるMEL認証の普及を考えるにあたって、まず日本 の漁業がどんな特長を持っているのか確認しておきたい。
まず1つ目に、我が国は四方を海に囲まれ、その周辺海域は、世界の三大漁場にも数えられ、多種多様な水産物が様々な漁法で漁獲されている。そこで魚食を中心に発展してきた和食文化は、ユネスコ無形文化遺産に登録された世界に認められた日本の大きな財産であり、魅力となっている。
2つ目として、高度に発達した鮮魚流通システムが挙げられる。津々浦々の浜々で水揚げされた水産物が、翌日又は翌々日には全国各地に運ばれて、刺身・寿司などの生食で食べることができる。このような産地市場を中心とした鮮魚流通システムは、世界に類を見ない、また世界で真似をしようとし ても出来ない、日本の大きな宝であり、輸出やインバウンド需要においても大きな強みとなっている。
そして3つ目に、我が国の漁業の特徴が挙げられる。諸外国と違い日本では多種多様な水産物を釣り、定置、延縄、底曳網、まき網等といった様々な 漁法で漁獲しており、同じ魚でも漁法や鮮度、処理の仕方によって価値や価格が大きく異なるのである。
このように、日本の漁業・水産業は、世界で類を見ない大きなポテンシャルを秘めていて、今や世界各国から外国人観光客が日本の美味しい刺身・寿司などの水産物を食べに日本に集まってきていて、輸出やインバウンド需要も年々増加している。水産物輸出額は2023年には3901億円 となり、過去最高を記録し、インバウンド来訪客も同年には29百万人とコロナ禍前を超え、さらに2024年度には前年度を10百万人上回る39百万人となり過去最高となった。海外の日本食レストラン数は2023年に約19万店となり、この10年間で3.4倍に増加している。また、観光庁の調査によれば、外国人観光客の訪日目的の不動の1位は「日本食(≒魚食)を食べること」となっている。我々JFグループは、こうした日本の漁業が持つ特徴とポテンシャルを有効に活用し、日本国内はもとより、インバウンド需要も含めて、 世界一美味しい魚を全世界に届けていくこと、そして付加価値向上による販売力の強化によって漁業産出額を高め、漁業者の所得を向上させていくことが、日本の沿岸漁業の生きる道であると考えている。 - 漁業産出額向上の取組
ここでその漁業産出額の推移を確認したい。平成のはじめ、1990年ごろには2.7兆円あった日本の漁業産出額はその後減少を続け、2020年に1.3兆円まで減少していたが、2021年に上昇に転じ、2023年には1.7兆円と、20年前の2002年と同水準まで回復している。漁業就業者 1人あたりでは漁業産出額は2020年に約10百万円に落ち込んでいたものが2023年には約14百万円に、漁業所得では2020年に約4.7百万円となっていたものが2023年には約6.3百万円にそれぞれ増加している。
我々JFグループは、漁業者の所得向上を通じた漁村地域の活性化を目指し、漁業者が主体となって5年後に漁業者の所得を10%以上向上するための「浜の活力再生プラン」(略称「浜プラン」)の取組を進めているが、2021年以降、浜プランの所得向上目標達成地区数の割合も増加に転じており、全国600近くの浜で実践中の浜プランによる鮮度保持やブランド化等による付加価値向上に向けた取組も、この産出額の向上と回復の一因になったと 考えている。
付加価値向上策の一例を挙げると、例えば船上での活〆 ・ 血抜きといった 鮮度保持の取組は全国2 3 1の地区で行われている。鮮度保持に限らず、養殖魚であればエサの工夫、カキ養殖であればシングルシード方式の導入など様々な付加価値向上の取組があるが、そうした中で「MEL認証取得」という付加価値の付与は、持続可能な漁業や養殖業によって生産された水産物であることを明示する、 有効な取組だと考えている。特に世界各国では持続可能な漁業や養殖業への関心が高まっている中、海外バイヤーも認証の取得を求めており、先ほど述べた通り、世界一美味しい魚を全世界に届けていく中にあっては、水産エコラベルの表示は有効なツールとなる。そうした中でMELニュース5月号の東京大学・八木教授のコラムにある通り、「日本独自の漁業管理努力を正当に評価できる認証基準を設け、 これらについて国際的な機関であるGSSIと交渉してお墨付きをもらっている」MEL認証を取得していくこ とは、日本の漁業の持つポテンシャルを活かしていくことに繋がるものと考 えている。
三浦常務、ご多用の中有難うございました。全国の漁業を束ねておられる全漁連様の思いが、行間にあふれ胸に響きました。MEL協議会にとりましては、当初より全漁連様には理事団体として様々なご支援をいただいており衷心より感謝申し上げます。協議会として、活動を通し世界を視野に飛躍される全漁連様とJFグループの漁業者の皆様に一層お役に立ちたいと願っています。
今後ともどうかよろしくお願いします。
5.MEL魚粉・魚油認証規格および配合飼料認証規格について意見募集を開始しました
開発中でありました養魚用配合飼料関連のMEL認証規格原案がまとまりましたので、1月30日より60日間の意見募集を開始しました。原案はMELホームページに掲載しております。
平行して、認証機関の決定、認証機関への要求事項作成、審査員の養成等を進め、皆様からの意見を参考に規格委員会で最終案の作成、認定機関の決定を経て、6月に開催予定の理事会、通常総会に諮り認証規格発効という流れを想定しています。認証規格としての実働は認証機関の認定が得られてからになりますので、2027年以降となる見込みであり、この間事業者向け説明会等必要な準備を行います。
2020年9月に開発に着手し、2022年6月の通常総会で開発が承認された案件であり、皆様のご協力をいただきようやく意見募集までこぎつけました。
まだ、越えなければならない山があると思いますが、「養殖を成長産業にする」政策の実現に資するために関係の皆様とともに頑張ります。
6.MEL審査員研修を実施しました
2月12-13日審査員研修(CPD研修)を実施しました。今回もオンライン開催でしたが、8名の研修参加者とともに大きく動く世界の水産エコラベル制度の最新の情報を共有しました。今回の研修は、MEL認証において希薄であった部分およびグループワークに焦点を当てており、皆様の真剣な取り組みが強く感じられました。MELは世界の動きの中心にあるスキームの一つとして様々な新たな取り組みを進めており、審査員の皆様にとりCPD研修は最新の情報・スキルを保持するため重要な場です。
現在、MELの審査員は漁業8、養殖6、CoC17 、指定指導員は漁業7,養殖17、CoC27,審査員補は漁業33、養殖39、CoC26で人数としては75名 です。MELの国際的存在感が高まる中、質の高い審査に資する研修の内容を心がけています。
7.MELアドバイザリボードを開催しました
2月10日にアドバイザリーボードを開催しました。委員6名のうち座長の松田 裕之先生はじめ5名の参加をいただき、有意義な時間を共有出来ました。
アドバイザリーボードの開催は今回が10回目であり、斯界でご活躍の委員の皆様からの的確な示唆のもと、内容は年々充実しています。
今回は特に、
- 国際化推進および世界への影響力強化という視点でGSSI、CSIとどう付き合うべきか
- 「MELの信頼性に関わる重大なリスク」であると思われる不祥事への対応として、認証の一時停止・終了に関する認証機関への要求事項改訂を行った経緯と今後の進め方
等、重要な課題に対する議論が白熱しました。
賜りました示唆は今後のMELの運営に反映させてまいります。
8.規格委員会を開催しました
2月19日にMEL CoC認証規格改正に関し、GSSIの基準およびMEL管理運営規則に基づく認証レビューとCoC認証Ver.3.0を検討いただく規格委員会を開催しました。
活発な議論を経て専門部会およびMEL事務局の原案を修正し、今後修正した原案を承認いただき、3月よりパブリックコメント募集を開始することにしました。当初、現行の認証規格の使い勝手を改善するため、CoC認証規格を「卸売」、「加工」、「リテール」の3つに分けることを検討しましたが、新認証規格Ver.3.0の下に審査の手引きを3つの分野に分けることで日本の精緻な流通に対応出来かつ目的にかなうとの結論になりました。認証規格Ver.3.0としては、いただいた意見を反映させた上6月に開催予定の理事会、通常総会に諮り発効することを目指しますが、実働までには必要な手続きがあり時間がかかる見通しです。
9.MEL認証水産物モニターキャンペーンを実施しました
インスタグラムを活用したMELモニターキャンペーンを実施したとこと大人気でしたのでご報告します。

- キャンペーン期間
2026年1月14日(水)~1月28日(水)
- モニター品
サンライズファーム株式会社「朝〆ぶりシリーズ」
・朝〆ぶりの大根煮
・朝〆ぶりのごまだれ漬け丼用
・朝〆ぶりとアボカドのポキ
- 効果
MELフォロワー数 3,774名 → 4,184名 +410名
応募総数 478名(募集人数 15名)過去実施したモニターキャンペーンの中で最も応募者数が多く、好反応でした。応募者のコメントから「朝〆ぶり」という言葉に惹かれ「美味しそう」、「食べて見たい」が人気の元の様でした。
今年度の試食モニターキャンペーンでは、ネット等で購入可能な商品であること、またなるべく手軽に食べられることを一つの基準としてモニター品を選んでおり、「朝〆ぶりシリーズ」も解凍するだけで食べられることが有難いというコメントも多数寄せられました。
当選者の試食投稿を通じて、MEL認証の認知度向上を図るとともに「朝〆ぶりシリーズ」の魅力がより多くの方へ伝わることを期待しています。
サンライズファーム(株)様のご協力にお礼申し上げます。
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MEL協議会事務局は、今日・明日シーフードショー大阪の会場に詰めており、MELニュースの今月号はシーフードショー会場からの送信です。
出展されたMEL認証取得者や来場された多くの関係者との直接の会話は貴重な情報源として、生の声がいつもMELの活動に役立っています。
MEL協議会にとり、創立10周年の節目の年も既に2か月を経過ししております。MEL近況報告(2026年1月版)をシーフードショー大阪の会場で配布しておりますので、今回は参加出来ないけれどお目通しいただける方はMEL事務局までご連絡ください。お届けします。
盛り上がった冬季オリンピックは閉会しましたが、各地で感染症が猛威を振るっています。躍動するアスリート達のパフォーマンスや危険な感染症に負けない様、水産業の私たちも世界の期待に応えご一緒に頑張りましょう。
以上