MELニュース2023年6月 第63号

2023年 6 月 第 63 号

一社 マリン・エコラベル・ジャパン協議会
事務局

農水省は 5 月 30 日に令和 4 年の漁業・養殖生産統計を公表しました。
ご高承の通り、生産量は386 万 t 前年比▲ 7 5 %で、 1956 年に 現在 の方式の統計が始まって以来初めて 400 万tを割り込みました。
海面漁業では北海道のサケ、ニシンの復活があったものの全体では▲ 9.4 %、海面養殖では銀サケ、ホタテ貝、カキ等の微増があり ましたが全体では▲ 1.7%と言う苦しい数字です。何と言っても多獲惣菜魚のサバ類▲ 12.5 万 t 、カツオ▲ 7 万 t が響いています。 サンマや スルメイカは既に激減しており、日本の魚食文化と地域の経済を支える水産加工の崩壊が心配されます。
令和 4 年度の 水産 白書では「わが国水産業における食料安全保障」が特集され、 ロシア・ウクライナ 戦争の 情勢下において 改めて食料としての水産物の抱える問題点 に 迫っていま す。

1. 国際標準化関連

GSSIベンチマークVer.2.0の審査は、ご報告の通り、事務局の大幅な人事の動きがあり遅れ気味ですが、ベンチマーク委員会のピアレビューが終わり、6月26日からパブリックコメント募集(30日間)に入る予定です。MEL協議会のホームページにも同様の告知を行う予定です。
先行のRFMは6月20日の理事会で承認されるとの情報です。また、ASCは6月19日からパブリックコメントが始まりましたので、続くMELは3番目として8月の承認を期待しています。

2. 認証発効関連

今月の認証発効は、養殖認証が2件、CoC認証が2件の4件でした。全体では、漁業認証22件、養殖認証63件、CoC認証140件となり、合計225件になりました。また、新たにニジマスが認証魚種に加わり、漁業では21魚種、養殖では14魚種で、MEL生産段階認証が取得されています。

3. MEL協議会の通常総会を開催しました

6月16日にMEL協議会第8回通常総会を開催しました。創立以来会場は大日本水産会の大会議室が定番でしたが、今回は近くのクロスコープ アーバネットの貸会議場を使い、4年振りのフルスペックでの総会となりました。水産庁からは四ヶ所 信之課長補佐に出席いただきました。
決議事項として令和4年度の活動報告および決算を承認いただきました。人事に関しましては、理事会社である三菱商事様の社内人事に伴い山﨑 裕史様が辞任、小田野 徹様が新理事に選任されました。前理事の山﨑様にはMEL協議会運営への貢献に深謝申し上げ、新任所でのご活躍をお祈りします。小田野様にはどうかよろしくお願い申し上げます。
報告事項として令和5年度の事業計画および予算が承認されました。定時総会終了後、第38回理事会を開催、決議事項としてロゴマーク使用管理規程の改訂、新規会員入会の承認、報告事項としてマネージメントレビュー(スキームの運営状況、認定・認証機関の活動状況)の報告、アドバイザリーボード設置要領の変更、海外活動に関する報告をしました。
MEL事務局一同「水産エコラベル新時代」に向け更なるお役立ちができる様努力しますので、皆様には変わらぬお力添えをお願い申し上げます。

4. 認証取得者からのご報告

今月は一般的には青ノリで知られる「ヒトエグサ」の養殖でMEL認証を取得しておられる福島県相馬双葉漁協の松川浦地区の責任者鈴木紀美代様にお話しをいただきました。

「松川浦での青ノリ養殖(ヒトエグサ)の取り組みについて」

相馬双葉漁業協同組合
松川浦地区責任者 鈴木紀美代

松川浦は福島県北部の相馬市にある潟湖で、景観の美しさから日本百景に選定されています。私ども相馬双葉漁業協同組合松川浦地区の漁業者は、この松川浦で青ノリを養殖しており年間1,000トン以上(生ノリ換算)を生産しておりましたが、2011年3月11日の地震により壊滅的な被害を受けました。
その後、養殖場の復旧を早急に進めましたが、放射性物質の影響もあり、出荷が再開されたのは震災から7年後の2018年と大幅に遅れました。また、出荷は再開されたものの、福島県の水産物には風評被害の懸念がありましたので、単純に震災前と同じように生産しても、売り先を本当に確保できるのか不透明な状況でした。

そこで、除塵機を導入し青ノリの品質を向上し競争力を強化したほか、養殖管理を厳密化することでMEL認証を取得いたしました。当初はMELの取り組みに懐疑的な意見も出ましたが、現在まで取り組みを続けることができ、仲買人の方々にも流通加工段階認証を取得していただくことができております。
その結果、MELマークが表示された製品が流通しておりますので、是非見かけた際にはお手にとってください。松川浦の青ノリの魅力はなんと言っても香りの良さです。味噌汁にひとつまみ入れることで、いつもの味噌汁が贅沢なものとなるほか、天ぷらや佃煮にしても美味しくいただくことができ、近年は女性部員によりトーストやピザに青ノリを活用した洋風レシピも開発しておりますので、若い方々にもオススメです。また、MEL取得に向けた取り組みが、みやぎ生協様に認められ独自ブランド「めぐみ野」のひとつとして取り扱っていただけるようになりました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。
今後とも、青ノリの品質向上及び生産拡大に向けて取り組んでまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。

鈴木様有り難うございました。処理水の海洋放出問題もあり悩ましいこと思いますが、みやぎ生協様とのつながり是非大事になさって下さい。CoC認証を取得された皆様がMELロゴ付包装で青ノリを販売していただいていることを嬉しく受け止めています。

5. 関係者のコラム

今月は編集子が様々ご縁をいただいております境港の水産振興協会専務理事江尻 敏美様に、かつて水揚げ日本一を誇った境港の近況をお話しいただきました。

「日本海に位置する境港漁港」

一般社団法人 境港水産振興協会
専務理事  江尻 敏美

 境港漁港の初夏の風物詩である本マグロは、令和5年5月25日に初水揚げがありました。昨年より5日早く、80キロから212キロまで総量60.9トン、平均単価もキロ2500円以上という幸先良い値がつきました。日本海の漁獲枠1800トンは間違いなくクリアー出来ると期待しております。現場の漁師さんに聞きますとウヨウヨ居るとの回答。日本各地でまぐろの豊漁が聞かれます、国際的な上限設定の見直しを早急にして頂きたいものです。
 日本海のマグロの歴史を振り返りますと、昭和57年(1982)にまき網漁船による初水揚げがありました。この年は平均119キロの本マグロが1400トン揚がりました。
前年にまぐろが日本海を回遊しているとの目撃情報があり、共和水産(株)がセスナ機をチャーターして捜索したところ、確かに居ることがわかりました。早速網の準備をして三陸地方より魚見のベテラン船員を雇用し船側の準備を整えるとともに、市場には元まぐろはえ縄漁船の経験がある割裁人等を配して構えました。その結果、何といつもなら夏枯れのこの時期に9億5000万円の水揚げが記録されました。
その後順調にまぐろの大漁が続きました、この天然の恵みである日本海の「本マグロ」を全国発信しようとの気概で、平成22年(2010)に官民挙げて「境港天然本マグロPR推進協議会」が立ち上がりました。私ども境港水産振興協会はその事務局として活動を開始しました。その事業内容は初セリの日に関西及び関東のスーパーにマグロを搬入しての即売会、地元の幼稚園・小学校そして総合技術高校でのまぐろの説明及び試食会。更にはPRグッズの販売、特にマグロポロシャツは大変好評で、廉価で且つ33色揃えており毎年2000枚前後売れる人気商品です。有難いことに市役所、銀行等では夏の制服代わりに着用して頂いております。一人で20枚以上の色違いを揃えておられる愛好者も居られます。
そしてその真骨頂は 「まぐろ感謝祭」の開催であります、県内外から5000名以上のお客様が来場されます。まぐろの解体ショーを皮切りに、多くの出店が軒を連ねまぐろの切り身、にぎり寿司、お頭をスライスした焼き物、もつ煮等正にまぐろ尽くしの品をリーズナブルな価格で販売しております。そして市議会議員を始め、県・市の職員、一般市民、地元の高校生等約100人近くの方がボランティアでご参加いただいており、漁港境港の力強い絆の団結力には感謝の言葉しかありません。

境港の軌跡を辿りますと幾多の紆余曲折がありました。平成4年から8年までイワシの豊漁で全国一の水揚げ港との称号を勝ち取りましたが、その後イワシの急減によりまき網漁船の減船、ミール工場の倒産等景気が急降下しました。盛漁期は高級料亭、高級クラブの看板が巷の歓楽街を明るく照らしておりましたが、今ではすっかりその様相が消え去りました。
その当時、酩酊をした船員同士のイザコザも影を潜め、頻繁に出動をしていたパトカーのサイレンも聞こえなくなりました。夜の繁華街では台湾・フィリピンの女性たちの嬌声がこだましておりましたが、時が移り今は漁船・水産加工場等で立ち働くベトナム・カンボジアそしてインドネシア等の技能実習生、特定技能労働者が増えました。少子高齢化の中で彼らは境港の水産業界の救世主と言っても過言ではありません。
暗い話ばかりではありません、最近は水揚げ量も10万5000トン(全国4位)、金額では216億円(全国5位)と復活の兆しが見えてきております。
そして特筆すべきは鳥取県営魚市場が新しくなり、近代的で安全かつ衛生的な日本でも稀有な建物となりました。市場見学も自由に出来るようになり、協会のホームページから申し込んで頂ければ、お魚ガイド付きでイワシ・サバ・アジ及び紅ズワイガニの水揚げ風景も堪能してもらえます。
そしてそのお魚ガイドには当協会のマドンナ達が従事しておりますので是非ともご利用ください。
山陰にお越しの節はどうかお立ち寄り頂き、新鮮で濃厚な味を醸し出す海の幸をお試しください。鬼太郎ロードには妖怪のオブジェが多く鎮座しておりますので、ご家族でお楽しみ頂けるものと確信しております。
謹んでご来境の程待ち申し上げております。

江尻専務有り難うございました。境港の本マグロは、とかく産卵群を捕獲するという辛口の批判があります。他県船の操業も多いと思いますが、皆様でルールに沿った正しい仕事を通してブランド価値を高めて下さい。
昨今では大型クルーズ船の入港もあり、またマイワシの漁獲が徐々に戻っているとのこと、境港が掲げられるFISH(FishのF、InternationalのI、ShipのS、Haunted:ゲゲゲの鬼太郎の水木しげるさんにあやかった妖怪の町のH。編集子はこのFISH大使を拝命しています)の明日を大いに期待しています。

6. 養魚飼料および魚粉・魚油に関するMEL認証規格開発について

6月2日に専門委員の福井県立大学の佐藤秀一先生に参加いただき日本養魚飼料協会選出の規格委員の輿石友彦様、鈴木秀和様、花岡豊様とMEL配合飼料認証規格および適合の判定基準(審査の手引き)の草案に関する意見交換会(作業部会:規格開発の前段階の専門家との議論)を開催しました。
更に6月20日に水産庁栽培養殖課に対し現状の報告とMELの今後の進め方について説明しました。次いで日本フィッシュ・ミール協会と意見交換ならびに打合せを予定しています。帆に健康観海で草案を完成させ、正式に規格委員会を立ち上げ、ホームページで規格開発の告知を行い、具体的な規格開発、審査制度の整備等に着手する予定です。

7. 販促情報-ちょっと良い話をひとつ

過日ある会で羽田市場の野本 良平社長とお話する機会がありました。
皆様ご承知の通り、野本様は水産物の先端的流通の旗手として様々な挑戦をしておられます。野本様が運営される外食店でMEL認証のロゴを表示した魚が人気を博していると言うお話がありました。MEL認証を取得しておられる千葉県船橋市の海光物産様のスズキを旬の限定メニューとして打ち出したところ、価格が高い(2巻700円)にもかかわらずお客様に受けて異例の注文数とのことでした。

早速お店(東京駅地下の「回転寿司 羽田市場 グランスタ東京駅」)に行って見ましたが、店頭イーゼルには海光物産の大野社長拘り瞬〆による前処理の解説とともに、嬉しいことにMEL認証のロゴが表示してありました。平日の昼の時間帯にもかかわらず盛況でした。
野本社長から、今は1品だけだが今後認証品の取り扱いを増やしてゆきたいとの方針をお聞きし、ようやくMELが外食事業者の皆様にお役に立てる手応を感じました。

MEL認証を大切にしていただいているサプライチェーンの関係者の皆様に頭が下がります。そして何より、エコラベル付の商品を選んで下さるお客様に深謝です。今後ともどうかよろしくお願いします。

8. 本年度のMELアンバサダーさんが決まりました

5月12日から31日まで公募しておりました本年度のアンバサダー7名およびモニター6名が決定しました。男女30-50代の年齢層で合計のフォロワー数は26万人です。皆様は、「魚が好き」、「社会貢献をしたい」が動機で応募いただいており、昨年からの継続が半数いらっしゃいます。
6月22日にキックオフミーティングを開催し、オンライン3名を含む7名の皆様にご出席いただきました。とても前向きで今年もインパクトのある良い発信が期待できそうです。13名の皆様どうかよろしくお願いします。

入梅イワシのシーズン、脂ののった大羽イワシが店頭に並んでいます。水産庁が6月7日の公表した「海洋環境の変化に対応した漁業のあり方に関する検討会」の提言では、獲れなくなった魚種の代わりに獲れる魚種を狙うための施策や養殖との兼業等に踏み込んでいます。どれをとっても容易ではありませんが、いずれにしても成長産業化には行動が欠かせません。
早い梅雨入り、次々と接近する台風に温暖化を実感する毎日です。
皆様のご健勝とご活躍をお祈りします。

以上