MELニュース2022年 10月 第55号

「かつてない変化」に世界中が振り回されながら、日一日と秋が深まっています。 気候変動、武力紛争に加え円安のトリプルパンチで、「食糧安保」が買い負けというレベルから数段深刻な課題として浮かび上がっています。 日本の水産物の輸出は、1976 年に輸入が輸出を数量で逆転して以来半世紀が経とうとしていますが、地方創生の一つの切り札として水産物の輸出拡大は必然と言う時代になりつつあります。生産数量が縮む中輸出拡大は悩ましいところですが、マーケティング的に考えるなら、日本ならではのきめ細かな拘りこそ世界の誰にも真似が出来ない日本の地域の底力と思います。 持続可能で、拘りという付加価値のついた日本の魚を皆様と一緒に輝かせたいと念じています。

1.国際標準化関連

GSSIの新規準(Ver.2.0)への申請の審査は、IE(GSSIの審査員)に齟齬が発生し(3名のうち2名が健康等の理由で交代)少なくとも2~3週間程度遅延する見込みとなっています。IEの後任についてはすでに決定しておりMEL事務局との連絡も始まっていますので、決定的なダメージになることはないと考えております。

2. 認証関連

今月の認証件数は、CoC3件の予定です。特記事項はありません。

3. イベントへの参加

各種イベントが続いています。

①ICFA(国際水産団体連合)

9月26日にはローマで開催されましたICFA(国際水産団体連合)の年次総会に大日本水産会白須会長はじめメンバーの皆様と共に冠野事務局長が参加し、翌27日にはFAOとICFAの意見交換会に出席しました。今回のICFA総会では、底引き漁業が不当に制限されないようにする問題(日本の提案)、サメ漁獲の問題(パナマが提案)が取り上げられ、日本にとって重要な会議と位置づけられ、議論にも熱が入ったと報告を受けています。また、大日本水産会の白須会長がICFAの副議長に選任されました。ICFAにおけるMELの存在感に繋がることを期待します。FAO-ICFAの会議ではFAOより方針として①持続可能な養殖の強化と拡大、②漁業管理の改善、③バリューチェーンの革新の説明を受けました。
MELより、養殖における「同種同属」の飼料給餌の禁止について見直しを問題提起し、一定の反応がありましたので今後も粘り強く続けます。

②東京湾大感謝祭

10月15-16日に横浜港で開催されました東京湾大感謝祭2022に水産庁のブース内にMELとして出展しました。東京湾大感謝祭はオンライン開催を含め10回目となりますが、MELは今回で3回目の出展です。10万人と言われる大イベントの多様な来場者の皆様(家族連れが多い)に水産エコラベルをどの様に訴えるか、回を重ねながら工夫をしています。

③TSSS2022

10月19-21日にはシーフードレガシーと日経BP主催のTSSS2022が『水産「ブルーオーシャン」戦略を描く』をテーマに開催されました。MELは19日に活動状況を報告するブースの出展を行うとともに、20日には垣添がMSC石井様、ASC山本様、GSA芝井様、Global GAPのレムコ・オースターフェルド様とともに登壇、「認証スキームオーナーによる新たな課題解決に向けた取組み」をタイトルとしたパネルディスカッション(ファシリテーターはシーフードレガシーの花岡社長)に参加しました。MELとしてのTSSSへの登壇は今回で4回目となりますが、年々充実するプログラムと内容、参加者に潮流の確かさを感じます。

4. 認証取得者からのご報告

今月は北海道漁連の販売第二部竹内勝哉様に今年の秋サケの模様をレポートいただきました。MEL漁業認証の先駆けである北海道秋サケのロゴ付商品の販売の拡がりに手応えを感じ嬉しく受け止めています。

「秋鮭を取り巻く環境とMEL認証の活用について」

北海道漁連 販売第二部 主事 竹内 勝哉

今シーズンの秋鮭の水揚げについて、漁期前半は昨年を下回る低水準な水揚げで推移しておりましたが、9月22日以降、連日全道で2,000tを超える水揚げが続き、10月10日時点で58,137t(昨年対比152%)と近年低調に推移していた水揚げが回復傾向にあります。

一方、生産面においては、人手不足による道内加工業者の加工能力低下や運送便の減少等、背面処理能力の低下が顕著となっております。地区によっては突発的な水揚増加の対応に苦慮する場面があり、流通の安定に向けた対策が必要不可欠な状況となっております。
このような環境下、本会では今シーズンより、生鮮秋鮭フィレの発泡外箱のデザインを改変し、MELマークを記載し、国内流通しております。
国内の小売業者においても、年々エコラベルに関する意識が高まっており、生産地から末端まで繋がる取組が少しずつ実現しております。引き続き、末端事業者様のCoC認証取得に向けた取組を推進して頂ければ幸いです。
また、秋鮭の水揚が回復した際には、安定した流通に向け、国内での消費のみならず、海外での消費が重要になります。欧米の大手小売業者(ウォルマート(米)、メトロ(独)等)においては、GSSIに承認された水産エコラベル認証品が取引条件となっております。弊会の既存搬出先の海外企業についても、以前よりエコラベル認証製品の取扱いに意欲を示しており、新型コロナによる海外の規制等、審査に時間を要することも想定されますが、海外企業のMELCoC認証取得に向け、取組を推進して頂ければと思います。
GSSIに承認された日本発の水産エコラベル認証として、MELの世界的な認知が向上し、MEL認証製品の販路拡大に繋がることを期待しております。

竹内様有難うございました。竹内様には北海道漁連様のMEL関連の業務を担当いただいておりますことにもお礼申上げます。先ずは4年振りの水揚げ 2000万尾超えお目出とうございます。消費地にも大量に出回っており小売店頭を活気づけています。
秋サケは長い歴史の中、様々な関係者の努力で今日に繋がっている日本を代表する漁業です。とかく衰退と言われる日本の水産業の意地としてしっかり守っていただくことを願っています。

5. 関係者のコラム

今月は海外の方の目にMELの活動がどう映っているかの第2弾(第1弾は2022年1月号に掲載しましたフィジーの南太平洋大学で教鞭を執っておられるJICAの専門家で元MEL技術部長の田村 實様)として、MELアドバイザリーボードのメンバーであります東京大学の牧野光琢先生にご相談し、牧野先生の恩師のカナダのセントメリー大学のAnthony Charles先生にお願いしました。Charles先生は資源管理の世界的権威であり、知日派かつ沿岸小規模漁業と地域社会の経済を深く研究しておられます。

「日本の皆様へ」

カナダ ハリファックス セントメリー大学
環境学部長 Anthony Charles

 MELニュースへの寄稿要請を嬉しく承りました。
1990年代初めまで遡るところから始めたいと思います。それは、私が住んでいるカナダの大西洋岸の沖で起きた世界で最大の漁業の一つの崩壊から始りました。かつて世界最大の漁業を支えていたタラの資源が劇的かつ悲惨な減少を起こしました。乱獲の結果であり、個人的には持続可能な行動をしなかった時何が起こるかの良い教訓であると思っています。私は政府からこの悲劇を分析し将来への対処法を考える専門家チームのメンバーに任命されました。我々専門家が手品みたいにタラ資源を回復させることが出来る訳ではありませんが、状況を更に悪くすることを避けるための管理法の開発に役立てる筈です。専門家チームからの提案は、生態系の保全と漁業管理における予防的措置の採用、漁業管理への漁業者参加でした。同時に、消費者にフォーカスした補完的なアプローチとして漁業の持続可能性を審査し、合格したらエコラベルを表示する認証制度=エコラベル制度が世界に広がることになりました。
日本の漁業と養殖業を持続可能にするための認証制度としてMELが設立されたことは喜ばしい限りです。私は永年にわたり日本の漁業現場を訪れ漁業や漁村文化にも触れており、また素晴らしいシーフードに出会っております。日本の魚食文化の強みは、MELの役割としての持続可能性を推進する上でとても重要です。
今や、SDGsの目標実現において持続可能性追求は避けて通れません。SDGsの目標の幅は経済、環境、社会の持続性という「三つの要点」を含んでいます。
一つ目は単純に利益が上がるかであり、二つ目は環境と資源管理の問題です。三つ目の社会の持続性は、社会の構造の持続性の問題即ち漁業におけるキチンとした運営の推進、漁業への参入の公正さ、漁村の福祉の問題であります。
エコラベルは環境問題により力を入れると共に、社会の持続性への配慮が欠かせません。MELが社会的責任を養殖業だけでなく漁業においても適用しているのは良いこと受け止めています。
世界において沿岸の小規模漁業が全ての議論の中心とならなければなりません。全漁業の90%は沿岸漁業であり、地域の経済と漁村の社会構造を支えています。特に日本においては沿岸漁業が漁村文化の大切な部分でありますが、世界でも然りです。更に、沿岸漁業は環境保護、生態系保全や漁業資源の保護に中心的役割を担っており、FAOにおいてもその重要性が認識されています。あらゆる意味において、沿岸漁業が健全であることは必須です。このことを実現するためには、沿岸漁業はエコラベル認証において重要な役割を果さなければなりなりませんし、そのことが彼らの社会、経済、市場における存在感を高めます。私は日本の個々のケースについてお話は出来ませんが、世界の多くの場所で沿岸漁業がエコラベル認証され、低コストで正しい運営を実現していす。
私はMELが日本の素晴しい沿岸漁業を支えるあらゆる努力を提供することを確信します。

Anthony Charles先生略歴

カナダ ハリファックス セントメリー大学の環境学部長。環境システム、水産資源管理の専門家であり、殊に漁村や小規模漁業者による資源管理による持続可能な漁業システムに関する世界的権威。
<公職>
IIFET(国際漁業経済・貿易学会)の元会長
CCRN(地域社会保全ネットワーク)を主宰
IUCNの漁業専門家
Pew財団海洋保全フェロー

牧野先生、Charles先生有難うございました。国際NGO等による日本の水産界の評価に接するにつけ、日本の取組みの発信不足に忸怩たる思いをしている中、とてもフェアに日本をご覧いただいていることに感激です。
今後ともどうかよろしくお願いします。

6. MEL審査員研修

10月24-26日MELの新規審査員養成プログラムを実施しました。社会全
体のコロナ禍への慣れもあり、参加者は22名と久し振りの勢いを感じました。
特に16名の皆様が漁業、養殖、CoC全てを受講されるというこれまでにない研修会となりました。現時点で、MEL審査員資格をお持ちの方は112名おられますが、うち審査員として活動されているのは40名強であり、今後の認証数増加を考えると審査員数は十分ではありません。また、事業会社に所属しておられる方々の受講が増えていることも新しい傾向です。

7. 販促関連

季節とともにロゴの使用の連絡が増えています。広島の地御前漁協様のカキを山下水産様が包装した生カキがスーパー店頭に並びます。
また、橫濱屋本舗の年末特別企画に「MEL詰め合わせ」が決定しました。
成功をお祈りします。

10月4日に東京魚市場卸協同組合(東卸)様の創立70周年の記念式典と祝賀会が開催されました。日本橋以来の皆様の水産物流通へのご貢献に敬意を表しますと共に、70周年に心からお祝を申し上げます。野村農水大臣、小池都知事をはじめ国会議員、都会議員、市場行政、事業者が多数来賓として出席される盛会でした。MELも豊洲市場の皆様の水産エコラベル認証取得推進のご縁でお招きをいただきました。
主力の魚の漁獲が振るわない中ではありますが、政治、行政からの市場への期待と事業者の皆様の前向きな姿勢が印象的でした。冒頭で触れましたとおり漁獲量が少ない中輸出拡大は悩ましいところですが、日本ならでは「細かい拘り」、築地から引き継ぐ「目利きの技」を豊洲から世界に発信して頂くことを願っています。MEL認証が東卸の皆様のお仕事の役に立てるよう頑張ります。

以上