MELニュース2022年 6月 第51号

総会シーズンも終盤、企業、団体にとり多忙な月だったかと思います。
MEL協議会の総会は6月16日に開催し、役員、会員、アドバイザリーボードメンバーに出席いただきました。水産庁からは新しい水産エコラベル担当部署になられた漁政部加工流通課の四ヶ所課長補佐及び酒井専門官にご出席を賜わる中、社会のエコラベル認証に関する関心の高まりを強く感じる総会となりました。
ご高承の通り、今年大日本水産会が設立140年を迎えられました。心からお祝申し上げますとともに、オール水産のリーダーとして今後の益々の発展を祈念します。6月8日に開催された通常総会は対面で行なわれ、漁業経営の悪化への対応が真剣に取り上げられました。主要魚種の不漁の中、各種資材価格の高騰、ロシア関係の不透明感等頭の痛い課題があり、水産エコラベルどころではないといった声が聞こえて来ます。でも今が正念場、ご一緒に頑張りましょう。

1.国際標準化関連

度々ご報告しておりますが、GSSIの新基準(Global Benchmark Tool Ver.2.0)は2021年11月に発効し、現在9つのスキームオーナーが3つのグループに分かれて承認審査に入っております。MELは第3グループで、8月末より審査が開始されます。既に審査を担当する審査員(Independent Expert)は決定しており、MELとしては認証規格を変更する養殖認証についてGSSI事務局の求めに応じ6事業者の新認証規格での審査報告書(更新審査)を提出できる様認証機関および事業者の皆様と打ち合せを進めております。
MEL新養殖認証規格(Ver.2.0)案に対するパブリックコメント募集は6月12日をもって終了し、事業者への説明、規格委員会の決定を経て総会(書面での臨時総会)の承認を7月中に終了すべく取組んでいます。

2.認証関連

今月の認証は養殖 2 件、CoC 7 件の計 9 件が発効し、認証総件数は 189 件となり 200 件が視野に入って来ました。 特記事項としては、漁業認証において先月末に和歌山市加太漁協の「マダイ一本釣り漁業」が認証されました。紀淡海峡、友ヶ島水道を漁場として営まれる伝統的沿岸漁業で、行政、研究機関、事業者が協働して資源とブランド「加太の真鯛」を守っておられます。2020 年 2 月に開催された大阪インターナシ ョナル・シーフードショウ会場における MEL 説明会で加太の皆様が「漁業を柱に据えた街づくり」が出来ないだろうか?そのためにMEL漁業認証を取得したいというところから始まったことを思い返しております。今回の認証が「加太の真鯛」と地域の更なる発展のお役にたてば誠に嬉しい限りです。

3.通常総会開催関連

MEL協議会第7回通常総会は6月16日に開催し

①令和3年度の事業報告ならびに収支決算
②理事任期満了に伴う選任において11名の重任と2名の新任
③三会堂ビル建て替えに伴う事務所移転
の3議案を承認いただきました。

報告事項として
①令和4年の事業計画ならびに収支予算
②養殖認証規格改正
についてご説明いたしました。
なお、新任理事に(株)シジシージャパンの野崎 博延様及び三菱商事(株)の山﨑 裕史様が選任されました。野崎様、山崎様どうかよろしくお願いします。
通常総会終了後第28回理事会を開催し
①会長、専務理事の選任
②認証の一時的休止に関する規程の制定
③新会員の入会
④養殖認証規格改正に関する書面臨時総会開催
を承認いただきました。
報告事項としてマネージメントレビュー、アラスカRFMとの提携につき説明を致しました。なお、会長には垣添直也、専務理事には長岡英典が選任されました。引き続きご指導とご支援をお願い申上げます。
新会員として三菱食品(株)様の入会が承認されました。食品卸業界からの初めての入会であり、水産エコラベルの拡がりにご尽力賜わります様お願い申上げます。

4.養魚用飼料およびフィッシュミールと魚油のMEL認証開発関連

認証規格の開発は福井県立大学教授佐藤秀一先生にお願いしておりますが、打ち合せのため冠野事務局長が6月23日小浜に出張し詳細を詰めました。次のステップとして、規格委員会を早期に立ち上げ、関係者と日本の養殖業と関連産業のお役に立てる制度とする様議論を始める準備をしております。
なお、6月20日に水産庁増殖推進部栽培養殖課櫻井政和課長他に進捗状況を報告しました。水産庁への報告は今回で3回目となりますが、櫻井課長からは「養殖業成長産業化総合戦略」、「緑の食料システム戦略」とも連動する課題であり早期に実現を期待するとのコメントがありました。
また、6月28日にはフィッシュミール協会稲井理事長、山岡副理事長、相部専務と今後の進め方につき打ち合せを行なう予定をしております。
まだこの様な状況ですが、一歩一歩積み上げて参ります。

5.認証取得者からのご報告

今月は、生活協同組合の単協として初めての MELCoC 認証取得を推進いただきましたみやぎ生協の土井 建志様にお話をお願いしました。

「MELの取り組みを組合員にお知らせしたい」

みやぎ生活協同組合
店舗商品本部水産統括
土井 健志

弊組合は1982年に設立し、2019年からはコープふくしま、福島県南生協と組織合同を行い、宮城県全域、福島県(中通、浜通)を事業エリアに、主に店舗事業、宅配事業を行っている生活協同組合です。
環境へ配慮した持続可能な水産物の供給を行うことで、環境配慮への取り組みを組合員へお知らせしたいとの思いから、店舗事業として2021年9月14日、カツオ、ビンナガの最終加工、小売りのCoC認証を取得いたしました。
MEL商品はこれまで多くの商品が作られ、これからも拡大していくことと思いますが、まだまだ、消費者の認知度は低いと考えています。これから認知度を上げ、その素晴らしい取り組みを理解していただくには、消費者に一番近い小売り店、量販店がどれだけ普及する手立てを講じるかがポイントと考えています。

弊組合では、店舗事業の中でMEL水産物を組合員に供給することはもちろんですが、MELの取り組みを環境配慮事業の一つとして直接組合員にお知らせしたいと考えています。
みやぎ生協ではこーぷ委員会という組織を持っています。これは組合員さんが商品のことだけでなく、くらし全般に関わること、環境に関わることなどを話し合い、店舗など各事業所と連携しながら、より良いくらしのためのおすすめ活動、教育活動を行う組合員の組織です。この中でくらしや環境にかかわる学習も行う場合がございます。今後、この委員会活動の中で、商品を実際に見ながら、この商品はどこでどのように漁獲、生産され、加工、流通工程ではどのようなメーカーがどのような加工を行い、最終的に店舗でどのように販売しているかをお知らせすることで、MELの理念、活動、他のMEL商品について組合員の理解を深めて行きたいと考えています。

土井様有り難うございました。2019年12月に事務所にお伺いしMEL認証のご説明をさせていただいたき、前向きな反応をいただいたことを覚えています。最新の日本生協連様のアンケート調査結果では、生協組合員の水産エコラベルの認知は42%となっており(2021年秋調査)、積極的な商品つくりと組合員の皆様とのコミュニケーションの取組みの反映と承っております。
益々のご発展をお祈り申上げ、MEL普及への手立てをご一緒に取り組めることを願っています。

6.関係者のコラム

MELは二人の親に恵まれて今日です。そのお一人が今月号に寄稿をお願いしました大日本水産会の白須 敏朗会長であり、もうお一人は先月号に登場いただきました山口 英彰前水産庁長官です。お二人は産みの親であり、育ての親としてしっかりとMELの育ち振りを見守っていただいており、感謝に堪えません。

「日本発の世界が認める水産エコラベル」を育てる

(一社)大日本水産会
会長 白須敏朗

MEL協議会が大日本水産会から独立して早5年が過ぎ、6年目の活動に入っています。この間、垣添会長には種々困難は多かったものの当初想定以上のご活躍をいただき、着実に所期の目標を達せられていることに対し、改めて敬意を表し、感謝を申上げる次第です。
我が大日本水産会もこの度創立140周年を迎え、その記念誌を作成し、120周年からのこの20年の足跡を、それぞれのテーマごとの対談と寄稿を中心にまとめさせて頂きました。
この間の事業やイベントも記録されており、読み応えのあるものになったと自負しています。
もちろん、MELの意義と活動については、垣添会長との対談でご紹介するとともに、大日本水産会内に設立されたときの経緯から、新しいMELの活動の現状まで記載しています。
さて、6年目に入り、認証数はすでに180件を超え、目前は500件を目指していると聞いています。その中で、イトーヨーカドーや生協連などの大型小売チェーンが認証を取得したことで、幅広い地域で認証商品が店頭に並ぶことになりました。
このことは、SDGsに対する社会の関心の高まりから、消費者の意識が変化し、水産エコラベルに対するニーズが高まった証左であり、MELとしての新しい段階に入って来たものと考えられます。現に、私自身は日頃はスーパーに買い物に行くことはあまりありませんが、ときどき西荻窪の実家に94歳の母を訪ね、家事を手伝い買い物もします。その際に立ち寄ったコープで何とMELマークの付いたシラスのパックを見ることができました。嬉しい限りです。
垣添会長がMEL協議会を引き受けて頂いて直ちに養殖の認証に取組まれたとお伺いし、その先見の明にも驚き、流石と思いましたが、今度はまた、飼料あるいはその原料である魚粉や魚油の認証に取組まれているとのこと。MELの絶えざる進化への取り組みに再度の敬意を表し、期待申し上げる共に、垣添会長の益々のご健勝を祈念し、5周年の寄稿とさせて頂きます。

白須会長有り難うございました。過分なお言葉をいただき恐縮の限りです。
実は、会長が西荻窪のコープで見つけられたシラスのパックですが、シラスはMEL漁業認証の約10%を占めており、ご縁の深さを感じております。

7.MEL アドバイザリーボードを開催しました

5月31日に1年ぶりに開催することが出来ました。今回はあいにく座長の松田先生がベトナム出張のため欠席となりましたが、牧野先生に臨時の座長をお願いし充実した会となりました。

  1. 日本の水産業を取り巻く諸課題について広く意見交換を行ないました。会議に先立ち、ベトナム出張中の松田先生から、IUU指数の信憑性につき問題提起があり、視点を国内だけでなく世界に向けてMELとして積極的に発言し、日本の評価を高めることが必要と方向づけました。
  2. メンバーの皆様からのご意見の大きな流れとして、「水産エコラベルは事業者の信用の証であり、消費者にとって関わることは誇りである」という土壌を作ることが求められました。海洋生物資源の重要性を日本人がより深く認識するためには、小学校をはじめとした学校を舞台とした教育が、子ども―母親―家庭―社会のつながりを生む。コロナで中断しているMELと魚に関するする出前授業は学校から大いに期待されている。
  3. 社会とのコミューニケーションツールとしてSNSが役立つ手応えを感じている。またメディアを活用した教育的要素としての「美味しくて食べる体験」を拡げることは大いに意味がある。時代背景から見て、MELは今追い風、この機会に様々な仕掛けをすることが、MELの認知向上と、会員、事業者消費者に喜ばれることにつながる。

原則1年2回の開催ですが、MEL協議会にとって大きな意味のある会であり、メンバーの先生方のそれぞれのご専門を背景にしたの貴重なご意見に深謝申し上げます。

8.MEL 審査員研修会を開催します

本年度の第1回審査員研修は、審査員資格をお持ちの審査員を対象にしたスキルアップ研修(CPD研修)を、7月19日(火)~20日(水)の日程で、オンラインで開催します。既に対象者の皆様へのご案内は日水資からお手元に届いているかと思いますが、研修の主催者としてMEL事務局から改めてお知らせする次第です。
GSSIの承認継続審査(MOCA、2021年11月に合格)において指摘された項目やGSSIの新規準(Benchmark Tool Ver.2.0、2021年11月に発効)に関連して、国際標準のスキームとしてMELの認証規格および諸規程の対応が求められています。今回のスキルアップ研修は、最新の情報を共有する場でもあり、カリキュラムもその様に組んであります。時間的には短縮し皆様の負担の軽減を目指していますが、中身は濃くなっています。
ご質問がありましたらMEL事務局か日水資にお問い合わせください。

関東甲信が九州南部より早く梅雨入りしたのは17年ぶりのこととか。ラニーニャの影響が気にかかるところです。
カツオの豊漁が新聞紙上で好意的に取り上げられており、幸い今年はアニサキスの問題もなく消費が順調に伸びている実感があります。季節の美味しい魚がリーズナブルな価格で途切れることなく店頭に並び私たちの生活を豊かにして欲しいという発言が、上記のアドバイザリーボードの会議でも多く出されました。皆さん、「旬の美味しい魚が食べたい」が本音と感じています。そのことの実現にMELが些かでも貢献出来る様頑張ります。
暑い夏が予報されています。皆様のご自愛と充分な備えをお祈り申し上げます。

以上