MELニュース2021年 6月 第39号

梅雨が明けないまま二十四節気の夏至になりました。今月は入梅、半夏生と魚とかかわりのある雑節が続きますが、梅雨時の魚の代表である「入梅イワシ」、「梅雨イサキ」に加え盛漁期が遅れた「カツオ」の漁も順調と伺っており、店頭を賑わしております。半夏生のタコは輸入が滞っている様です。
話題のワクチン接種は、筆者はようやく2回目を終えたところですが皆様如何でしょうか。変異ウィルスはマスクをしていても感染するとのこと、中々安心の日は見えませんが細心の注意を払い難しい時期を乗り切りましょう。

先月からの流れを引き継ぎ、GSSIの審査員とのWeb会議を漁業、養殖につき実施しました。この間日本のMELチームも対策会議を開催、特に資源管理についてGSSIがGlobal Benchmark Toolで求めていること、また新漁業法の下で日本の行政が目指す資源管理と第三者認証であるMELの立ち位置の確認を行ないました。MEL協議会はそもそも国際標準化実現を使命として発足しており、「日本発の世界が認める水産エコラベル」の実現が期待されているだけにおろそかに出来ない課題です。6月2日に開催した対策会議での議論を今後のMOCAの審査に反映させて行きます。皆様からもご意見をいただきたくポイントを整理すると

  • 苦情処理において内外のステークホルダーが納得出来る対応が必要。
  • 資源状態が乱獲状態にある漁業を認証しているのは認められない。
  • MELの審査報告書における判定の根拠と証拠の提示に改善が必要。また、ピアレビュー制度の定着および明確な導入効果を示す。
  • 審査報告書は英語版の公開。

の通りです。MELが国際承認されたスキームとしての信頼性が揺らがないこと、漁業認証の基本となる資源の状況に関し審査員の判定が疑義を挟まれることなく出来ることを意識してスキーム文書を見直しています。また事業者、殊に漁業者の資源を守るというインセンティブが失われない様、漁業者の皆様とのコミューニケーションを一層強化したいと考えています。
皆様のご意見はメールアドレス<info@melj.jp>にいただければ幸です。

今月は、漁業1件、養殖3件、CoC7件と活発な認証になりました。
特記は、遠洋カツオ一本釣り漁業の(一社)日本カツオマグロ協同組合連合会所属船22隻が一括認証されました。加工事業者は既にCoC認証を取得済で漁船側の認証を待っておられましたので、今回の漁業の認証により漁場か
ら食卓までがMEL認証でつながることになります。加工包装されたカツオのたたき、刺身が全国の店頭に並ぶことになります。CoC認証取得の事業者により加工・包装された商品は販売に当たって小売業の認証取得は求められ
ませんので、配荷が拡がり消費者の皆様にとりMEL認証商品がぐっと身近になることを期待しております。
また小売業で2件目として(株)ヨーク様が認証されました。7&iグループとして2例目であり、更にヨークベニマル様が審査中です。全国の小売業からのお問い合わせ、ご相談が多くなっており、認証取得が加速することを予感しております。

6月22日に第6回通常総会を開催しました。コロナ下ではありますが、
会場は三会堂ビル石垣記念ホールをお借りすることが出来ましたので、ソーシャルディスタンスが取れる環境を確保し、役員、会員、アドバイザリーボードの皆様に加え日頃からご指導、ご支援いただいております水産庁からも出席いただきました。
議案であります、令和2年度の事業報告と収支決算および空席になっておりました理事1名の選任を承認いただきました。なお、新理事には(一社)日本かつお・まぐろ漁業協同組合会長の香川 謙二様が選任されました。
総会終了後第24回理事会を開催、苦情処理規程を国際標準に適合するように修正する件および会員の入会の承認をいただきました。
承認いただきました苦情処理規程はホームページに掲載しております。また新たに入会が承認されましたのは(一社)日本養魚飼料協会様で、現在MELが取組んでおります養魚用配合飼料認証規格開発のパートナーです。

今月は東卸組合(東京魚市場卸協同組合)国際化プロジェクトのワークショップと水産食品衛生協議会(水衛協)の定例研修会にお招きをいただきました。東卸組合のイベントは、既に認証取得のための講習会からシンポジウムまで4回お招きいただいており、今回のワークショップは更に「新しい時代」に豊洲市場としてどう取り組むかサステナブルな水産流通から環境問題への対応まで4回シーズの1回目でした。仲卸発、市場全体更に外部の人々をも巻き込んだ皆様の意識の高さと懐の深さに敬意を表します。

水産食品衛生協議会は大手食品メーカーの品質保証部門の皆様の集りでありますが、今回初めて水産エコラベルについて勉強をするという企画でした。水産エコラベルが水産の枠を越え、食品まで拡がって来つつあることを感じました。因みに東卸ワークショップは対面で出席者70名、水衛協の定例研修会はオンライン開催で参加者100名を超えました。

今月はカンパチ、ブリ、ヒラマサでMEL養殖認証を取得しておられる鹿児島県鹿屋漁業協同組合の皆倉 貢組合長にお願いをしました。皆倉組合長はじめ皆様の真面目な取り組みが伝わってきます。

「MELの取組について」

鹿屋市漁業協同組合
代表理事組合長 皆倉 貢

鹿屋市漁業協組合は鹿児島湾(錦江湾)の東部に位置し、温暖な気候、平均水温15℃以上であり、魚類養殖漁業を中心に、小型底曳き網、一本釣り漁業を営んでおります。
魚類養殖漁業においては、現在9事業者にてカンパチを主体にブリ、ヒラマサの養殖を行っており、年間の生産量は3魚種併せて約3,800tです。
MEL認証は、令和2年2月「カンパチ」「ブリ」「ヒラマサ」で養殖認証、加工場で流通加工段階(CoC認証)認証をほぼ同時に取得いたしました。
当該漁協の養殖魚への取組としましては、まず、一番目に養殖漁場環境の特性を生かし、水深40mから90mで漁場の潮通しもよく、赤潮・魚病等の発生を抑制でき良好な漁場で生育している。二番目には鹿屋市の市花でもあるバラを生かし、餌にバラの材料を取り込み美味しさを追求している。三番目に自前加工場において、ISO 22000の取得も行いフィレー・ロイン等加工での出荷販売体制も確立してきましたが、これまでの取組に満足はしておらず、今後も養殖への工夫と努力は重ねていきたいと考えております。
そこで、これまでの取組を生かし「MEL認証」を取得し、更なるバージョンアップを図ることといたしまた。それにより、①かのや「カンパチ」「ブリ」「ヒラマサ」の安心・安全、旨さを周知し、付加価値の向上と販売促進に繋げる。②海外へのアピールが可能となり、カンパチを中心に輸出促進を図っていく。③消費者からのニーズ、加工品への需要高まりに対応するために、加工場の整備を図っていきたい。持続可能な養殖を継続していくためにも、MELの取組にあるように、環境に配慮した養殖を行なっていくことが必要であるとの認識を新たにしております。
現在、カンパチフィレー等にエコラベルを掲示した資材を用い、認証水産物であることの周知を図っているところであり、今後、更なる取組を強化していきたいと思います。

皆倉組合長有り難うございました。コロナに負けず、「かのや」ブランドをご一緒に国内外に広めて行ければと願っております。

今月は、東京大学教授 牧野 光琢先生に、学術の立場からMELへの期待をお話しいただきました。牧野先生は海洋、水産をフィールドとして国際的に活躍しておられ、MELのアドバイザリーボードのメンバーもお願いしております。

「アジアの水産認証としてのMEL」

東京大学大気海洋研究所 教授
牧野 光琢

MEL協議会が2016年12月に発足して早4年半がすぎた。この間、国内では漁業法の大改正をはじめ、水産流通適正化法や第4期水産基本計画、第3期海洋基本計画策定など、水産資源管理の強化が進められてきた。国際的には、大阪ブルーオーシャン・ビジョンの発表や、主要国首脳による持続可能な海洋経済の構築にむけたハイレベル・パネル、国連海洋科学の10年(UNDOS)など、SDG14をはじめとする海の持続可能性確保にむけた国際連携が本格化している。

古くからの魚食国であり、また、世界の水産業の中心であるアジアの一員として、日本の水産認証が国際的に果たすべき役割は大きい。対象魚種が多様で、関係漁民数・漁船数・漁具の種類も多く、また零細漁業が多いアジアの水産資源管理においては、政府による公的管理と、現場の資源利用者による自主的管理を組み合わせた「共同管理(Co-management)」のアプローチが重要である。そこに適した水産認証の方向性については、日本が世界に先駆けて知見を蓄積し、かつ、モデルを
作っていくべきだろう。自主管理だからこそ効果的・効率的に実施できる、きめ細かい資源管理施策はたくさんある。政府の管理だけではカバーできないところを強化するMELであってほしい。
一方、水産認証は科学性、客観性、国際性が命であり、存在意義である。よって、自主管理=非科学的という社会一般の感覚に、科学的・客観的・国際的に対処していかなければならない。さらに、資源管理に有用な知は科学的知識だけではない。地域に蓄積された伝統知や地域知は、科学知ではカバーできない価値をもっている。社会が有する、ありとあらゆる知を総動員して、持続可能な水産業を実現するという姿勢が必要ではないだろうか。その意味で
MELには、海とともに生きる人々の知恵・工夫・努力を後押しする水産認証に育ってほしい。

 

牧野先生有難うございました。先生ご指摘の行政による公的管理と資源利用者による自主的管理の組み合わせは日本の資源と漁業管理の特徴であり、世界にも認められていると認識しております。この仕組みを生かすことはMELの心すべきこととして肝に銘じます。

新型コロナの影響で販売が滞り苦戦中の宇和島のマダイの養殖事業者である愛南漁協様とハンバーガーチェーンのモスバーガー様がタイアップにより「真鯛カツバーガー」が期間と数量限定で販売されました。この企画を推進された愛南漁協岡田 孝洋様にレポートいただきました。

「愛南の真鯛」が拓く新たな可能性~真鯛カツ<愛媛県愛南町>

愛南漁業協同組合 販売促進部長
岡田 孝洋

愛南漁業協同組合(愛媛県愛南町)は、養殖生産額日本トップクラスの一大養殖産地で、マダイでMEL養殖認証を取得しています。
2020年4月、「桜鯛」として需要のピークの一つを迎えるはずだった真鯛は、緊急事態宣言発出により、特に大サイズ(2㎏UP)の出荷が鈍化しました。このピンチに当漁協では、真鯛を市場(既存のマーケット)に投げ売るのではなく、コロナ禍で新しい日常を求められていた時だからこそ、「新しい価値訴求や食べ方提案」ができないか?と生産者と議論し、ありそうで無かった「真鯛をバーガーに!」というアイディアを取引先の日本水産㈱様へ打診、日本水産様と連携して、モスバーガー様への提案(モスバーガーしかない!と祈る思いでした)を進めて参りました。
この取組みには、愛南町の支援や当漁協が取り組んでいた安心・安全、品質へのこだわりに加え、持続可能な養殖業への取組み(=MEL認証)も評価されたものと考えております。また、当漁協のような小さな組織が日本水産様やモスバーガー様といった大企業と取組みをするにあたり、MEL認証が信頼を得る一つの要因であったとも考えております。
今回、モスバーガー様には地域団体商標取得を目指している「愛南の真鯛」を

全面的に使っていただき、全国でPRすることができました。
企業側は産地応援、産地側は全国に名前を広められ、消費者の方には美味しい国産原料のバーガーを提供できた「三方よし」の取組だったと思っています。
産地応援の意味もあり全国的にも大きな反響となった今回の「真鯛カツバーガー」ですが、真鯛の新しい可能性、価値を創造できたと感じています。その価値の土台に
はMEL認証の一助があると思っています
し、今後もMEL認証を土台とした取り組み
ができるよう頑張っていきたいと思います。

 

岡田様有り難うございました。岡田様の熱意に応えていただいたモスバーガー様、また関わられた皆様の協働に深く敬意を表します。
MEL認証商品が広く外食業の皆様に使っていただくキッカケとなればこれに勝る喜びはありません。

 

様々な意見が交錯する中、2020東京オリンピックの開会まで1ヶ月を切り
ました。折角のホーム開催、日本選手の活躍への盛り上がりは大いに期待するところでありますが、インド型変異ウィルスによるパンデミックが起きないことを祈るばかりです。
気候変動に再び焦点が当たっていますが、今年はモジャコが大不漁と報ぜられています。MEL養殖認証の主力魚だけに皆様にとり頭の痛いことと思います。養殖業のスマート化の一環として、飼料と種苗の進化に期待がかかります。今月、ご一緒に養魚用配合飼料認証規格開発への取り組みを進めております日本養魚飼料協会様がMELの会員に加入いただきました。日本の養殖業の成長産業化に貢献できることを願っています。
落ち着かない日々が続くことと思いますが、皆様のご健勝をお祈りします。

以上