MELニュース2021年 5月 第38号

新型コロナウィルスが人類への脅威として認識されてから1年半が経ちました。ワクチン接種と変異型ウィルスへの対応がキーワード的に語られますが、WHOは依然「戦争中」として最大級の警戒を呼び掛けています。
ワクチン接種が先行している国々は感染拡大が落ち着きつつあるとの報道はあるものの、パンデミックの渦中にあるインドやブラジルはさておき、日本でも身近に感染者や亡くなられる方が出る等、不安を感じる人が8割を超える調査結果です。市中には不満が溜まり我慢の限界の日々が続いています。
皆様には自分のこととして細心の注意を払われ、コロナ後の活躍に向け備えをしていただく様願っています。コロナ禍で暗い気分の毎日ですが、今月はちょっぴり良いことも報告出来そうです。

 

国際標準化関連

今月は2つの点で進捗がありました。1点目は膠着しておりましたGSSIの承認継続審査(MOCA)につき、5月10日にGSSI事務局との間でWeb会議を開催、GSSIの審査員が問題視している点につき議論をし、7月下旬までに理事会による最終結論を出せる方向でMELからの提出文書につき一定の修正をすることで合意しました。今回の一連のMOCAの審査を通し国際標準の基準が時とともに厳しくなっていることを痛感しております。GSSIの審査員と考え方の共有が出来れば、次の山はベンチマーク委員会の承認とパブコメおよびその対応に移りますが、まだまだ我慢が要りそうです。。
2点目は、5月13日にアラスカのRFMのスキームオーナであるCSC(Certificated Seafood Collaborative)とのWeb会議を開催しました。
日本発、アラスカ発夫々のスキームが認証した水産物をCoCの分野で相互に承認し、認証水産物が国境を越えてスムーズに流通することを実現しようという考えです。お互いに機関決定の前ではありますが、CoCの「相互承認」に向け実務的な課題を詰めることで合意しました。先ずは、「相互承認」について同床異夢とならない様、お互いの義務と責任をスキーム文書化し、実務化のプロセスを開発・共有することです。機が熟しつつあると感じておりますので精力的に進め、出来る限り早期に形にし、理事会と関係の皆様にお示ししたいと考えております。

認証関連
今月の承認は、漁業0件、養殖0件、CoC4件計4件でした。
特記事項としては、小売業の皆様のMELCoC認証取得への動きが漸く顕在化し始めたことです。現在、審査機関の日水資様のHPによりますとヨーク様、ヨークベニマル様、宮城生協様の認証申請が受付られており、それ以外にも数社が準備中です。小売業がCoC認証を取得されると、取引のあるベンダーやメーカーが認証を取得されますので、認証のチェーンが生産者から食卓まで途切れないことになり、サステナビリティを担保することが出来るトレーサビリティが確立します。
新企画「認証商品販促事例」のところでご報告をお願いしていますが、イトーヨーカ堂様の店舗を舞台に認証を取得された事業者の商品が存在感を増しています。


今月の話題も、先月に引き続き銀ザケになります。日本における銀ザケ養殖の先駆者の一社でありますニチモウ(株)様のグループ企業として日本の養殖事業を広くサポートしておられる(株)ニチモウマリカルチャー様の戸川 富喜様にご報告をお願いしました。

「MELでの取り組みをもっと消費者様にお伝えしたい。」

(株)ニチモウマリカルチャー
取締役 冷水域事業部長 戸川 富喜

当社は、福岡県に本社を置き暖水域は九州、四国を中心に、冷水域は東北、北海道を中心に水産養殖事業のトータルサポートを事業にしているニチモウ株式会社の100%子会社であります。MELに就きましては、我々が「生産~加工~販売」までをニチモウグループにて一貫管理している宮城ニチモウ養殖ギンザケの生産者7名のグループにて2020年に認証取得させて頂きました。
我々の宮城ニチモウ養殖ギンザケグループ(生産者7名)は、約20年前に設立したグループであり、これまでより良い養殖ギンザケを生産する為に2ヶ月に1回は会議を開催して情報交換等を実施して来た歴史あるグループです。

10年前の東日本大震災にてグループ全員のイケス、船が流された時も震災1ケ月後に何も無い瓦礫だらけの浜に集合し、ギンザケ事業を復活するかやめるかの会合をした時に全員一致にて復活することを決定、その時に「復活するからには消費者から一番求められる養殖ギンザケを作ろう」と誓い養殖再開の一歩を踏み始めました。それから、様々な方々より多大なるご協力を得て現在に至っているところです。大変喜ばしいことに、震災後10年を経過してグループ内の世代交代も徐々に進んでおり、若い世代も増えております。
MELの取組みに就きしては、これらの若い世代がMEL認証を理解し認証についてグループをまとめてくれました。「認証取得を通じて消費者様に我々が持続可能な養殖事業とするためにまじめに取組んでいることを伝えることができる。」と自分達の父親世代を様々な場面で説得してくれました。頼もしい限りです。
我々ニチモウグループとしては、MELの取組みをもっと消費者様に伝えたいと考えており養殖ギンザケの加工、販売を担う親会社であるニチモウ株式会社も2021年5月にMELの加工流通段階(CoC)認証を取得致しました。このことにより、消費者様に近い場面にてMELの取組みを伝えられるとグループ全員にて喜んでいるところです。
MELについては日本国内だけでは無く海外での認められる認証に発展すると信じており使命感を持って取り組んでまいりますので今後ともご指導、ご鞭撻の程お願い致します。

戸川様有り難うございました。ご報告の中に出てきました東日本大震災で全壊した宮城県志津川事業所のお話はぐっと胸に響きました。
折からニチモウ(株)様のCoC認証が発効し、サプライチェーンが完結したタイミングでの掲載となりました。戸川様はじめ「宮城ニチモウ養殖ギンザケグループ」の皆様の思いがサプライチェーンを通して日本中に届くことを願っております。

MELの認証制度は、スキームーナーであるMELと認証機関である日本水産資源保護協会(日水資)および認定機関である日本適合性認定協会(JAB)がお互いに独立してそれぞれの機能を果たすことにより、認証取得を希望される事業者を国際標準の基準に沿って認証する仕組です。同時に、市場を通して消費者がエシカル消費を実践することで存在意義が生まれます。
今月は認証制度の信頼性を担保する中枢機能を担っていただいている認定機関JABの事業企画部次長であり認定について国際的に活躍しておられる牧野 睦子様に、世界の認証の最先端の動きを解説いただきました。

UN SDGsと製品認定認証制度へのインパクト
~グリーンファイナンス、サステナブルファイナンスでの価値~

公益財団法人 日本適合性認定協会
牧野 睦子

ポイント

適合性評価制度のなかで、UN SDGsの広がりととともに、早期に影響を受けたのは製品認証制度である。サステナブルファイナンスでの重要な要素も、環境、そして社会側面である。認定付き製品認証を取得したことの情報を開示することは有益である。

新型コロナウィルスの感染拡大防止、GFSI、GSSIに関連する制度ルール改定が進むところ、森林認証などの製品認証制度のルールの改定も進んでいます。

まずは、人権への対応、そして、認証プロセス、認証審査での女性活用の機会も求められるようになってきました。適合性評価制度のなかで、UN SDGsの広がりととともに、人権、男女平等に対する対応が求められたのは、製品認証制度でした。
現在、気候変動に関する国際規格、企業の排出量の算定(ISO14064-1)、温室効果ガス削減・吸収プロジェクトの管理(ISO14064-2)、妥当性確認・検証(ISO14064-3)、その認定規格(ISO14065)がすべてパリ協定に準じての改定が終わり、新しく改定された規格を用いて、さらに、環境や気候変動の緩和活動が大きく変化させるタイミングにいます。
そして、どのような温室効果ガス削減・吸収にかかる活動が、クライメートファイナンスに資する活動なのか、認証活動も含めてどのような活動、クライメートアクションがグリーンファイナンスに資するのかといった国際標準化も進んできました。(ISO14030) その国際標準化の議論では、まさに、どのような製品認証制度(ISO14065)がグリーン投資に資するのかという議論の上、タクソノミー(ISO 14030-3)の一例として、日本からはMEL制度の有効性を提案し、合意されています。このような新たなグリーン投資の流れの中でも、製品認証制度の有用性が理解され、採用される流れになっています。
さらに、認証活動が、サステナブルファイナンスに資するのかというところは、これから国際標準化が進んでいくところですが、重要な要素としては、気候変動(温室効果ガスの削減・適応策)、水管理、廃棄物管理、人権、男女平等といったトピックの採用が必須となっています。そして、投資家の方々がそのようなトピックに関する認証を取得していることの情報を知ることができる環境になっているかということが、新たな重要性をもつようになってきました。それは、認定された認証機関による製品認証を取得したことの情報を開示することによって、その製品認証の価値が高まる、投資家からの企業価値評価の向上につながるというストーリーにつながっていきます。ぜひ、この機会に、公開された認証情報を見直してみてはいかがでしょうか。

 

牧野様有難うございました。社会の大きな動きの中で、水産だけに閉じこもらず広い視野を持たないと遅れてしまうことを感じました。今後ともご指導を賜ります様お願い申し上げます。

 

イトーヨーカ堂様がMELCoC認証を取得、認証商品の販売を開始されてから1年余が経過しました。販売される認証商品が増え、MELのロゴも売場お客様の認知を得つつあると嬉しく受け止めています。今月はマルシェ部シニアスーパーバイザーの湯山 一樹様に最近の状況のご紹介をお願いしたところ、とても元気の出るコメントをいただきました。

「マリン・エコラベル」の新たなるチャレンジ

(株)イトーヨーカ堂 マルシェ部
シニアスーパーバイザー 湯山 一樹

昨年4月以降、店頭にてMELロゴのついた商品の販売を開始しました。特に、弊社としてはプライベートブランド(PB)である「顔が見えるお魚」シリーズで生産者と中間事業者と一緒になってMELの持続可能な水産物の利用促進の取組みに参加し、今年は2年目として更なるチャレンジを行っております。各店舗がCoC認証を取得していますので、店内で加工しそのまま商品(素材)として販売は勿論ですが、今一歩お客様が手に取りやすい形での商品化を進めております。

【事例① PB顔見え。真鯛/かんぱち入握りおよび海鮮丼】

主に週末に向けた「顔見え」とMELロゴのダブルチョップ商品として、デリカ部と「店内にて原料を共有化」を進めております。今後、デリカ部の寿司でも主軸として使用していく予定です。

 

【事例② PB顔見え。真崎わかめ(塩蔵)】

リニューアルします「アウトパック」での塩蔵加工品にもMELロゴ付商品が登場します。ワカメでMEL養殖認証を取得された岩手県田老町漁協様がCoC認証を持つ加工場で写真のような小袋包装品を生産、イトーヨーカ堂の店舗に並ぶ仕組みです。
震災以前より弊社との取組みで人気のある商品で、全店に欠かすことのできない一品です。今後はこのようなアウトパック品にも力を入れて行く予定です。

鮮魚売場はもとより、デリカ部や協力工場に原料を共有し、一つでも多くの商品を拡大していく事も我々大手小売りの使命と感じております。今後もクロスMDでの商品開発に努めて参ります。

 

 

湯山様有難うございました。水産エコラベルが「生産と消費を結ぶ信頼の架け橋」として社会に拡がって行くには消費者接点を担われる小売業、外食業の皆様の活動が決め手になります。どうか今後ともよろしくお願いします。

 

 

今年の梅雨入りは異常に早く、5月の連休中に沖縄、奄美地方が、中旬までに東海地方までが梅雨入りしました。この所、西日本は梅雨入りが早まる傾向ですが、早い年は降雨量も多く観測されています。梅雨は夏への恵みの雨である一方で、近年各地に心が痛む集中豪雨の被害をもたらしており、気が休まらないところです。
オリンピック開会式まで後60日、開催について是非の議論が内外で激しさを増していますが、一国民としては一日も早くコロナ禍を収束させ普通の生活が取り戻せる施策を願うばかりです。
この様な厳しい状況の中でも、夫々の分野で前向きに頑張っておられる方々に心からエールを送りたいと思います。

以上