MELニュース2020年 10月 第31号

2020年10月 31号

‏ 欧米で再びコロナへの感染者数が増え始めたことが報じられています。日本ではスッキリ減らない中、赤い羽根とともに東京がGoToキャンペーンに加わりました。長らくの辛抱で溜まったマグマが勢いとなって噴き出し始めた様で、心なしか東京の街も活気の戻りが実感されます。
一方、漁獲に関する情報は残念ながら元気の出る話が聞こえて来ませんが、皆様の必死な仕掛けがメディアに取上げられています。
人類の歴史を振り返ると、大きな試練を乗り越えた先に新しい時代が生れています。皆様の様々な努力が新しい時代を引っ張るキッカケとなることを願っています。

1.GSSI関連

10月8日に承認継続審査(MOCA)に関するGSSI事務局からのガイダンスを受けました。その概要は

  • 11月末までにMELによる自己チェックと審査報告書(養殖5件、漁業5件の指定あり)の英訳をGSSIに提出する
  • 12月1日からGSSIのIE(Independent Expert:審査員。アメリカ人3名は何れも昨年の承認申請時に担当した審査員)によるDesktop Review開始。IEは来日しない。すべて書類審査で行なう(6週間)
  • 1月からベンチマーク委員会によるIEの報告書のレビュー(2週間)
  • 2月 パブコメ実施(30日間)
  • 3月 パブコメのコメントへの対応(4週間)
  • 4月 GSSI理事会によるベンチマーク委員会の報告レビューからMELの承認継続の決定(2~3週間)

MEL事務局にとって長丁場にわたり負荷のかかるプロセスですが、最優先事項として取組みます。MEL事務局としては、提示された予定のうち昨年の承認申請時の経過から見て、パブコメへの対応はもっと時間を見る必要があると考えています。関係の皆様に資料等補強をお願いする場面があるかも知ませんが、その節はよろしくお願いします。いよいよ本年度の山場に差し掛かりました。

2.認証関連

今月の認証は流通加工7件でした。累計で合計72件となりました。
CoCでは豊洲の仲卸2社が新たに認証を取得されました。来月開催予定の「豊洲市場から水産資源を考えるシンポジウム」を前に、ご関係の皆様の努力に敬意を表します。
漁業認証、養殖認証は審査員からの審査報告書のピアレビュー段階で手間取っており、認証決定が遅れ気味です。現在100件を超える審査中、コンサル中の案件があり、より透明性の高い認証がスムーズに出来る様関係者で研鑽してまいりす。

3.東京インターナショナルシーフードショーに参加しました

9月30日~10月2日に開催されました大日本水産会主催の第22回東京インターナショナルシフードショーに参加出展しました。今年は、コロナ禍により縮小された開催でしたが、MEL協議会として自らのブースとともに、認証取得者ならびに関係者で、水産エコラベルコーナーを構成しました。単独出展に比べ迫力のある展示となり、多くの皆様との意見交換が出来ました。

初日の30日には、「水産エコラベル ミニワークショップ」が開催され、関係の皆様にポストコロナ社会における水産エコラベルの価値 と役割とは」をテーマに90分間にわたり熱い議論をいただきました。
生産者、流通加工事業者、消費者、研究機関、認証・認定機関、メディア、海外認証取得者(MSCおよびASC認証取得事業者)、海外認証スキームオーナー(アラスカRFM)から23名の皆様に議論の輪に入っていただくとともに、第2会場の聴講者も予定を上回る30名の方々に参加いただきました。
“ミニ”とはいえ、特に聴講者の皆様には会場の狭さと音声の不具合でご不自由をおかけしましたことが少々残念でした。参加いただいた皆様から、日本の水産業と社会が直面している現場から実に生々しい発言がありました。中でも、大人も子供も持続可能性について学ぶ場の少なさの指摘があり、今年の2月に経験した蔵前小学校での出張授業の際の子供達の持続可能な社会への関心の高さを思い出しながら、とても考えさせられました。聴講者の皆様からもアンケートのコメントとして鋭い指摘をいただいております。
座長をお務めいただいた松田裕之先生は、締めの言葉として「数々の新しい気づきがあった。例えばESG(環境、持続可能性、ガバナンスへの取り組み)は水産エコラベルにとっても大切なキーワードであるし、関係者の胸に響き機能する打ち手こそ日本の資源や水産業の持続可能性を守る。世界が認める水産エコラベルとして透明性をしっかり担保しながら日々進化して行こう」まとめられました。
事務局からは、議論の内容を議事録に作成すると共に、提起された話題を切り口として、今後皆様と議論を深め、水産エコラベルがポストコロナの社会のお役にたてる様頑張ることが表明されました。
予定した時間を超えても議論が尽きない盛り上がったワークショップとしていただいた関係者の皆様に感謝申上げます。事務局として様々な反省もありますが、今後に活かしたいと思います。

4.東京湾大感謝祭に参加しました

例年MELが消費者との接点強化のためブースを出展しています「東京湾大感謝祭」は、今年は10月1日から25日までオンライン開催となりました。MELのページでは、MELの取り組みのご紹介の他、認証を取得されている皆様の動画をYouTubeで流させていただきました。

▽MELページ
https://tokyobayfes.jp/online-exhibition/melj/

ソーシャルメディアの時代、よりインパクトがある訴えが出来たのではないかと感じます。認証取得者全員がこの様な動画を制作しておられる訳ではありませんが、MELが参加する様々なイベントを通して出来る限り多くの皆様の ご紹介がさせていただきたいと思っています。ご希望がありましたら、ご遠慮なく事務局に連絡ください。

5.認証取得者からのご報告

今月は、新MEL認証取得の第1陣であります東町漁業協同組合の組合長の長元信男様にお願いしました。東町漁協は、ご承知の通り日本最大のブリ養殖事業者であり、「鰤王」ブランドで世界に向け積極的に販売しておられま
す。また、長元組合長は全国海水養魚協会の会長を務めておられます。

「持続可能なマリン・エコラベル・ジャパン」

東町漁業協同組合
代表理事組合長 長元 信男

 日本の水産業界を取り巻く環境は、本来であれば一次産業の漁業を生業としている漁業者で成り立つものですが、水産大国である日本の現状は50年前と比較しても大きく変わろうとしています。国内消費量も海外とは反比例して減少傾向が続いており、漁業の後継者不足が深刻化した上に、漁獲不良で同じように減少しているのが現状です。近年のサンマ漁獲を例にとっても、益々天然資源の不安定さが浮き彫りになっています。世界的な資源保護制度TACなどで、数字を明確にする取り組みには賛同できるのですが、予測不能な自然界相手では、もっと柔軟な対応で打開策を考えていくことが求められます。

そのような中、世界的にも獲る漁業から育てる漁業への取り組みが盛んになってきています。大手水産企業の参入も旺盛であり、大規模で多種多様な魚種の育成に乗り出しています。 東町漁協も2019年2月に国内最初のMEL養殖認証を取得、国内外への販路拡大の糧になるように取り組んできました。当初は、様々なセミナーや海外展示会への参加を行い日本のマリン・エコラベルの認知度向上に期待をしました。既にASC・MSCが世界的な持続可能性を追求して水産資源の保護を前面に掲げ、CoC認証を基に流通すべてにおいてのルール作りを行ってきました。国内水産業界においてもASC・MSC認証取得された企業もありますが(東町漁協も2019年6月ASC認証取得)、日本固有の養殖形態との隔たりがハードルとなり、思うように進まなかったことを思い出します。
周囲を海に囲まれた水産大国日本のマリン・エコラベル・ジャパン認証の存在は、日本を代表する認証として広く世界へ知られることが大事です。日本が誇る世界トップクラスの「食の安心」・「品質の高さ」を持っている水産物供給の柱となってほしいと願います。試金石として東京オリンピックを一つの目標と定めて、認証の機運は全国的に広がりを見せました。
1年間延期されましたが、機運が再燃することが望まれます。また9月に開催された東京シーフードショーでの出展品目を見ても多種にわたる水産物陳列に関係者の努力が見て取れます。

今後の課題として、産地・流通・消費の現場から聞こえてくる「認知度」、それぞれの立場で他人任せではなく、自分たちが取得したマリン・エコラベル認証を、「認証ありき」で済ませないよう大いに利用して、持続可能な水産業を目指していくことが水産の未来です。最後に余談ですが、世界中で「人・社会・環境」の持続可能な発展を目した取り組みが進められ、2020年ノーベル平和賞にWFP=世界食糧計画が選ばれました。持続可能な人道支援が評価されたと聞いています。貧困に苦しむ途上国において食糧不足が深刻なうえに新型コロナウイルスがさらに状況を悪化させている中で、WFPピーズリー事務局長は、「ワクチンができるまで」最善のワクチンは食べ物だ」と訴えています。持続可能性について、あらためて考える気持ちになった一幕でした。

長元組合長、大局観のあるお話を有り難うございました。養殖事業者にとって苦しい場面であることは間違いありませんが、他方で農水省が7月に公表した「養殖業成長産業化総合戦略」では、生産、輸出とも極めて意欲的な目標が設定されています。皆様の前向きな取り組みに期待します。

6.関係者のコラム

今月は主婦連合会の副会長平野祐子様にお願いしました。平野様は主婦連の副会長と社会部部長の他数多くの公職をお努めで、先月30日に開催しましたMELミニ・ワークショップにも参加いただき消費者の立場からの貴重なご意見を頂きました。

「海を大切にすることは生活につながる」

主婦連合会
副会長 平野祐子

10年前には気候変動は遠い国の出来事のように受け止めていましたが、近年の災害が都市部にまで影響してきてぐーっと身近に意識せざるを得なくなりました。認知度がなかなか上がらないSDGsですが、某新聞社の今年3月のアンケートでは関心の高いベスト3は1位「3番目の目標:すべての人に健康と福祉を」2位「1番目の目標:貧困を無くそう」3位「13番目の目標:気候変動に具体的な対策を」でした。14番目の目標「海の豊さを守ろう」は男性23.2%、女性30.1%で5番目に高い関心でした。SDGsそのものへの関心は10代20代の若い世代が一番高く、若い世代の人たちは気候変動に対して大人たちより敏感に受け止めていると感じました。私は昨年9月「グローバル気候マーチ東京」に参加しました。集合場所の国連大学前にはベビーカーの赤ちゃん、小・中・高・大学生がグループや家族と、LGBTの方、車椅子の方、高齢者ご夫妻など、国境も超えて約2800人が集いました。世界では163ヶ国約400万人が参加したそうです。グレタ・トゥーンベリさんら若者からの呼びかけで実現したマーチで、学生たちはSNSでの呼びかけで参加したと話していました。一般的に消費者は情報に脆弱で、氾濫している情報の中からそれらがフェイクなのかの区別や判断は至難です。若者たちにはSNSなどを通して、情報を一気に共有する傾向が高いので、信頼の置ける情報発信をすると応えてくれそうです。今の魚の購買の傾向は、私の知人も含めて、店舗の鮮魚コーナーより、らでぃっしゅぼーや、生協などの宅配サービスを利用する人が増加しているようです。冷凍、真空パック、缶詰で半調理済みのものが好まれています。スーパーの魚売り場でも真空パックされたアクアパッツァ、アヒージョ、エスカベッシュなどが目につきます。これらは見た目にもカラフルでおしゃれ、さらにブロッコリー、いんげん、玉ねぎ、カラーピマンなどが入っていて一緒に野菜もとれます。食卓に上る魚料理の仕方の変化と消費者の意識に合わせて、半調理品の材料にMEL認証の魚、GAP取得の野菜を組み合わせた商品が並ぶと認知度も上がるかもしれません。待った無しの海洋資源の窮状をMEL認証の普及と共に人々に伝わることを切望します。

平野副会長有り難うございました。世界観と生活感がともに感じられるお話がとても大切に感じられました。先に開催されました、「水産エコラベルミニワークショップ」で議論となりました、消費者の「認証の価値」への評価につきましては、これからも議論と実践を重ねさせていただきたいと願っています。

 

長元組合長のお話にとり上げられました通り、今年のノーベル平和賞にWFP(国連世界食糧計画)が選ばれました。応援をしてきた一人として、関係の皆様にお祝いを申上げますとともに、各位の努力に心から敬意を表したいと思います。
消費者庁の調査では、エシカル消費(社会や環境に配慮した消費行動や、課題解決に取り組む事業者を商品の購買で応援すること)に関する興味は着実に増えていると報告されています。水産エコラベルはエシカル消費に応える仕組みとして、ポストコロナ社会にお役立ちする重要なカギであり、今後更なる盛り上がりに期待したいと思います。
昨日の東京の日の入りは午後4時53分。すっかり秋の深まりを感じます。
水産業にとって山場の暮れ商戦を前に、コロナとインフルエンザの重複流行が懸念されますが、皆様にはどうか十分な対応と準備をなさって下さい。

以上