MELニュース2023年10月 第67号

2023年10月 第67号

観測開始以来の見出しが連日社会を賑わせた今年の暑さも、流石に息切れしてきた様です。秋の魚も夏バテか芳しいニュースはありませんが、月遅れで漁が活気づくことを願っています。かつては、業界言葉で「後獲れ」と呼ばれ価格を崩し、前半を走った人に怪我人を出した苦い記憶がよみがえります。量がないことには加工等産業が回りませんし、加えて漁獲量の問題もさることながら、餌となるプランクトンから始まる食物連鎖を支える生態系が狂ってしまい、小型で脂乗りが悪い魚になっていることが心配です。

1.国際標準化関連

9月21日(現地時間)に公表されたGSSIのベンチマークツールVer.2.0への MELの承認は、最終的に理事12人全員の賛成が得られたと事務局から連絡がありました。内外の各方面からも好意的な反応をいただいており、認証取得者はじめ関係の皆様の真摯な取組みに深謝申し上げます。この機会に一段と内外の認知が進むことを願っています。

2.認証発効関連

今月はCoC2件が発効しました。申請が低調な傾向が続いています。また、頑健かつ信頼性の高い認証を維持する原則の観点から、ピアレビューアーの指摘への対応に時間がかかるケースが増えています。この点は、国際標準のスキームとして真摯な取り組みを進めています。

3.認証取得者からのご報告

牡蠣の季節がやってきました。広島の地御前でも暑かった夏を乗り越え、良質なカキに育っているとのことです。今月はCoC認証にあたり担当として推進された広島県漁連 営業課の井上憲一郎様に認証取得の経緯を伺いました。

「地御前カキのMEL認証を活かすために」

広島県漁連 営業課 井上憲一郎

当初、広島県漁連として地御前産かきCoC認証取得するにあたり、1つの目標がありました。それは地御前産かき原料の入荷数量を増やすことです。地御前産かきの品質的優位性については以前より販売先から評価されていたことを弊会としても認識しておりましたが、残念なことに年々原料入荷量が減少していたことから、製品の販売数量については減少させざるを得ませんでした。販売先からも地御前産商品の出荷数量をもっと増やせないかとの問合わせも多くあり、苦慮しておりました。

MEL認証の件で地御前漁協へ問い合せをしたところ、MELの活用に積極的に取組む地御前の生産者から原料仕入数量を増やすためには、CoC認証を取得した方が良いのではとの話を聞いたこともあり、CoC認証の取得を目指すこととなりました。
CoC認証取得そのものは原料仕入数量を増やすという目標を達成するためのスタート地点に立ったにすぎず、これからは目標達成するための課題について考えていかなければなりません。まずは生産者の方々に対し、弊会の地御前産かき製品の品質や商品開発についての取組みについて賛同してもらえるようにすること。具体的に何をすべきかということについては非常に難しく、手探りで進めていくしかないと考えています。
次に消費者に対してMEL認証商品を認知してもらうための課題に取り組んでいきたいと考えています。こちらは既に地御前産かき製品としてはブランドが確立していますので、MELのトレーサビリティの仕組みが産地の保証となり、顧客の事業者様や消費者の信頼獲得につながることを期待しています。また、MEL認証があらわす環境に配慮した持続的な生産についても消費者への訴求につながると考えています。
最終的にMELが地御前産かき製品を通じて生産者と消費者の相互理解を深める機会となっていけば、CoC認証を取得して取組みを行う意義があったと感じられるのではないかと思います。

井上課長有り難うございました。全国的に水産エコラベル認証つきのカキは増えてきておりますが、地御前産カキのブランドに対する消費者の信頼と支持が一層高まる様ご一緒に頑張りましょう。

4.関係者のコラム

今月はCoC認証において相互承認をすることに合意し、現在詳細の詰めを行っているアラスカのRFM他のスキームオーナーであるCSC(Certificate Seafood Collaborative)のMark Fina会長にアメリカから見た日本への期待についてお話をいただきました。

「持続可能な水産業を確立するための日本への期待」 

 アメリカCSC会長 Mark Fina

私たち、責任ある漁業管理 (RFM) 認証プログラムは、マリン・エコラベル・ジャパン (MEL) と緊密に連携しており大変光栄に思います。長期的な視野に立ったこの関係を発展させたMELのリーダーシップとスタッフに感謝の意を表します。私たちの提携は、日本、米国、および他の国々において、漁業、水産加工業者、流通顧客、消費者に持続可能な認証水産物の選択肢を広げることを目指しています。

私たちは、流通加工認証(Chain of Custody)の相互承認を発展させ、認証プログラムの利用効率化に取り組んでいます。このシステムは、認証を取得した事業者が、取得済の認証制度の下でパートナーの認証製品を容易に取り扱える仕組みを提供するものです。私たちは、CoC認証の相互承認を実現するために、テクニカルな課題に取り組んでいます。これは事業者にとって有益であると確信しています。また、事業者の費用を軽減するために、両プログラムに同じ認証機関を起用するオプションを検討する考えもあります。
私たちは、水産物認証プログラムを評価する組織である世界水産物持続可能性イニシアティブ(Global Sustainable Seafood Initiative (GSSI) )と協力し、今後も共に取り組んでいきます。その前に、まずMELのGSSI新規準によるベンチマーク審査が完了し、承認を更新したことを祝福しなければなりません。RFMプログラムも最近更新されましたが、その更新がとても意義あることを理解しています。MELは、GSSIスキームオーナー委員会においてもRFMプログラムの大切なパートナーです。私たちは、GSSIが承認したプログラムとその認証水産物の普及を推進するためにGSSIを支援してきました。漁業管理と持続可能性はとてもテクニカルで複雑ですが、GSSIは、市場や消費者が力強く信頼性のあるプログラムに認証された水産物を識別し入手できるよう、その認証規格自体が確かなものであることを実証する上で重要な役割を果たしています。
RFMは、いくつかの新しい課題に取り組み、プログラムを発展させています。例えば、メキシコ湾のエビ漁業に対する認証審査が現在進行中であり、成功すれば、アラスカのスケトウダラやサケに次ぐ3番目の規模の漁業認証となります。また、資源管理データが不足している漁業向けに新しいモジュールを開発中です。これらの漁業は管理が十分で持続可能ですが、データ収集の難しさから認証取得が厳しいのです。彼らにも負担なく認証を取得できるよう支援したいと考えています。不要なデータ収集を行わず、準備に高額なコストをかけず、持続可能であることを実証するためにふさわしい承認を得るために不可欠であると考えています。
私たちは新たな市場にも進出しています。最近、欧州での商品向けにロゴマークの使用を承認しました。これは初めてのことです。他にも、中国でいくつかの事業者がCoC認証を取得し、ベトナムでも初の認証を発行しており、海外での認証件数が増加しています。これらの新しいラベル承認と認証発行は、持続可能性に重点を置く新しい市場や消費者にとって、私たちのプログラムを知るきっかけになるでしょう。
私たちは日本でさまざまな機会を模索しています。日本は高品質な魚介類とその持続可能性を大切にしてきた長い歴史を持つ文化があり、それは私たちの認証プログラムの目標とそれに参加している漁業者にぴったり合うものです。私たちのプログラムが日本市場で受け入れられている理由は、科学に基づく厳格な認証規格であることに加え、持続可能な漁業に焦点をあてていることだと思います。他の環境や社会的なテーマは対象範囲としていません。それらは他の専門の方の方が良い仕事をするのではないでしょうか。それにより、管理コストを最小限に抑えることができ、ロゴマーク使用料を徴収することなく、より良いお役立ちができるのです。
昨年は、展示会に参加し、マーケティング促進のための日本訪問、日本人シェフやバイヤーの米国視察をサポートし、日本との関係強化に努めました。RFM認証プログラムのベネフィットをより多くの方に知ってもらうために、今後も関係を発展させていきたいと思います。そして、MELとのパートナーシップは、私たちが日本というマーケットを理解し、受け入れられる手助けをしてくれています。MELとの末永い関係とその関係が相互のプログラムにもたらす価値となること、これからも期待しています。

Mark Fina会長有り難うございました。2月28日に東京で開催した記CSCとMELがCoC認証の相互承認に合意したことの記者発表以来、実装への期待が高まっています。ご承知の通りMEL協議会発足にあたってのミッションは「国際標準化」実現であり、今回のGSSIの新基準での承認で一歩前進しました。次は認証取得者と社会への貢献であります。ご一緒に期待にお応えしたいと願っています。

5.養魚飼料、魚粉・魚油MEL認証開発のための規格委員会を開催しました

10月11日に対面・オンラインのハイブリッド形式で合同規格委員会を開催しました。今回は、事務局から規格委員会へこれまでの規格開発の流れの説明とMEL配合飼料規格(Ver.1.0)とMEL魚粉魚油認証規格(Ver.1.0)および適合の判定基準(審査の手引き)の草案を提案し、今後詳細の審議に入ることとしました。事前に資料は配付してありましたので、委員の皆様からいただいた多くの指摘をこれからの審議に反映させます。
現時点で、当初に想定した時間軸のイメージから約1年遅れて居りますが、認定機関、認証機関等々の問題もあり、関係各方面とご相談しながら慎重に進めて参ります。

6.MEL審査員研修を行いました

10月25-27日MEL新規審査員養成研修を開催しました。今回は久々に盛況で、15名の方々に熱心に参加いただきました。
GSSIの基準でも審査機関の審査能力の維持向上は厳しく要求されており、そのために審査員研修は最も重要な事業として位置づけられています。
2023年10月現在、MEL認証の審査員は日水資86名、海生研9名、計95名で、内訳は指定指導員29名、審査員30名、審査員補66名で質量共に充実してきました(人数は重複取得しておられる方の関係で一致しません)。
現在取組んでいます、養魚飼料、魚粉魚油認証への準備も次の課題であると認識しています。

7.イベント関連

秋はイベントの季節です。水産関係でも各地で様々なイベントが開催されていますが、MELにも参加のお誘いが増えております。今月参加したイベントは

  1. 2023年10月17日に認定機関であるJAB(一般財団法人日本適合性認定協会)様の創立30年のプラットフォームが開催され、MELも「水産エコラベルが社会にお役立ちするために」をタイトルに活動状況を報告させていただきました。 JAB様は工業製品において長い認定の歴史を持って居られますが、水産物に関しては2018年1月30日に水産物の認定プログラムを開始され、国際標準化を目指すMELの認定機関として、認証機関である日水資様、海生研様の認定に関わっていただいております。水産に先行して農業、林業に関する認証制度の認定機関をつとめておられ、水産エコラベルの国際標準化において重要な役割を担っていただくお願いをしております。どうかよろしくお 願いします。
  2. 2023年10月17-19日に開催されましたTSSS(東京サスタナシーフード・サミット)に出展させていただきMELの活動状況を来場者に訴えました。他にMSC、ASC、GLOBALG.A.P、GSAが出展されましたが、何と言ってもMELのGSSIの新基準の承認は目玉で、多くのやり取りがありました。TSSSは「SDGsの折り返し年に描く水産の世界食糧安全保障戦略と日本の挑戦」をテーマに3日間に多くのプログラムが組まれましたが、人権問題と横の連係強化:プラットフォーム化に力点が置かれていました。
  3. 2023年10月22-23日に東京都と消費者団体協同で主婦連様が主催のメンバーに入っておられる「交流フェスタ」に出展するとともに、ステージでのミニセミナーとアンバサダーの方々の発信などMELのプロモーションをさせていただきました。会場がJR新宿駅西口広場で、通りがかりの不特定多数の方々を対象とするイベントですが、コロナ前の開催時に較べこの3年でエコラベルへの認知は進んだと感じました。地道な活動ですが、「エコラベルを我がコトと捉えていただける」ための接点として重要と考えております。

今年の7-9月の訪日外国人の数がほぼコロナ前の水準まで回復したことが発表されました。しかも、消費金額は過去最高とのこと、為替の影響もあるとは思いますが水産物の消費拡大に結びつくことを願っています。 MELニュースは今月号からヘッダーの飾画を、一巡した認証魚に代わり認証商品の紹介にさせていただきました。トップバッターには日本生協連様の売れ筋商品の「CO・OP サステナブル」ブランドのシラス干しに登場いただきました。毎月紹介をいたしますので、ご希望がありましたら遠慮なくMEL事務局までご連絡ください。
気温差が激しい季節です。またインフルエンザの流行も云々されており、皆様には呉々も体調管理に気を配ってください。

以上